追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第17話 悪女には支援しますわ

商店街をマリア、マキア、マキナの3人で見て回る最中、2人がかりでリヤカーのような台車を押している子供達の姿があった。服がボロボロであることと、孤児院の方向へ向かっていることから孤児院の子供達であることは容易に想像がつく。マリアはその子供達を偉いですよと褒め、子供達はそれを喜ぶ。

 

マキアは台車の方を見て、美味しそうな野菜がいっぱいだと思った。

マキナは台車の方を見て、綺麗な野菜は表面にしかなく、奥の方には黒ずんだ穴空きの野菜が多いことを確認した。

 

「……違うところでお昼ご飯買って来る。昼過ぎには孤児院に戻るから、それまでお姉ちゃんはマリア先輩と一緒にいて」

「分かったけど、一緒に買いに行かないの?」

「あまりここのパンは食べたくない」

 

3人は昼ご飯を買いにマリアが勧めたパン屋へと入るが、マキナは陳列されているパンが不揃いであることと、マリアがオススメしていることから孤児院の子供達が働かされて作られたパンだろうと予測を付け、1人で別の店へと行く。そして途中、1回立ち寄っていた肉屋で話を聞いた。

 

「……平日は、孤児院の子供が手伝いに来るの?」

「ん?ああ、マリア様のご学友か。孤児院の子達は毎日来てくれるし店番や陳列を頼んでいるよ。お金を貰った分は働いてくれるしな」

「1日いくら?」

「1日で3000クレジットだ。2人で来るから1日6000クレジットだな。

……なんだよその目。帝都だと11歳から大人扱いだが、ハイン王国は15歳未満の子供だと最低日給である6000クレジットの半額で良いんだよ。悪いことはしてねーよ」

 

マキナは肉屋の店主に話を聞き、孤児院の子供達が色んな店で手伝いをしていることを把握し、驚いた。驚いたのはその子供達が立派に給金を貰っていることについてであり、500人フルで働いているわけではないだろうが、相当な額を孤児院全体としては稼いでいることも把握する。

 

そしてマリアの毎月の支払いにはこの手伝いの給金も含まれていることを察した。マキナは店主にお礼を言い、唐揚げを大量に購入する。孤児院の子供達の分ではなく、マキナ自身の分である。

 

 

 

マキナがマキアと合流すると、マキアとマリアは今晩の宿について話し合っていた。マキアは孤児院に泊まることを希望するが、マリアは必死に高級宿の方を勧めてくる。これは何かあると感じたマキナは孤児院で泊まるつもりはないが、一緒に食事をしたいと告げ、建物の中へズカズカ入り込む。

 

マキナが建物の中に入ってしまったので、マキアも当然建物内に入る。500人以上の子供が過ごすため、長屋のような建物がいくつか孤児院の敷地内にはあるが、マキナが入り込んだのは一番奥の建物だ。すると出迎えに来た子供達よりかは痩せ細ってない、むしろ普通の体格の子供達が中には沢山居た。

 

マキアはそれを見て、痩せ細ってない子供達もいるのだと思った。

マキナはそれを見て、痩せ細らされた子供達がいるのだと思った。

 

「痩せている子達は、最近孤児院に来た子達なの?」

「……いえ、違います。入口付近にいる子供達は仕事をしません。逆に、この館にいる子供達は仕事を行う子供達です。清掃、洗濯、衣服の補修や料理、開墾。

この孤児院は大きいですから、役割分担をしているのですよ。そして仕事をする子供達には、お腹一杯になるまでの食事を与えています。逆に仕事をしない子供は、生きるために必要な分だけです」

 

マキアは純粋に質問を投げかけ、マリアは言い訳もせずに返答をする。仕事をする子供としない子供。それを聞いたマキアはただ納得しただけだったが、マキナは違う。

 

10歳にも満たない子供でも、洗濯や料理を出来る子供はいる。一方で、出来ない子供やしたくない子供もいる。そう言った子供達の最後の役割が、痩せ細って同情を引くことなのだと気付いた時、マキナは少々吐き気を催した。

 

「どうされましたか?」

「ちょっと唐揚げを食べ過ぎたから気持ち悪くなっただけ。大丈夫」

『……子供達を働かせて、幾ら徴収してるの?』

『徴収?そんなことはしませんよ。彼らは全員、自分のためにお金を使います』

『……そう。自発的に武器や防具を買わせてるんだ』

『軍に入りたいと思う子供達は多いですからね。訓練のためにも、自分で剣を買うのでしょう。

……今日見たこと、全部ありのままをリディアさんに伝えて下さいね』

 

マリアに対して、怒りの感情を込めつつ念波を送るマキナに対し、平然と受け答えをするマリアは孤児院の現状をリディアへ正確に伝えるようお願いもして、ニコリと微笑む。

 

2日間孤児院を見て回った結果、マキアは不自然な点は幾つかあるが、それらには理由があり、マリアが堂々と受け答えをしていたため、大規模であること以外に不審な点は特に思い浮かばなかった。

 

一方のマキナは、貴族達からの寄付や国からの補助金の内、7割は最終的にマリアの手に渡っていると頭の中で算出した。ワイバーンの番いを孤児院の子供達がお金を出し合って買ったことも聞き出し、それらすべてを包み隠さずリディアに伝える。

 

2人の報告を聞いたリディアは、高笑いした後に継続的な支援をすることをマリアに告げた。

 


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