追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第20話 戦争推奨ですわ

リディアはコンスタイン公爵の反乱を鎮圧し、コンスタイン家の人間を追放した後、騎士団の面々を集める。いつもの騎士団からの追放のためのトーナメント戦ではなく、爵位を配るためのトーナメント戦を開催するためだ。

 

公爵領を丸々直轄地としても問題は起きないが、封臣が多ければ多いほど派閥が出来やすく、反乱も起きやすいという認識から、リディアは公爵領を伯爵領に区分けして分配する。前話の日本で例えるならば、大阪だけ確保して残りの京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山、三重を騎士団の面々に授与した。

 

コンスタイン公爵領は公爵領の中でも発展度が高く、都市も多い。最終的にリディアの騎士団の腕利き6人は伯爵位がリディアから授与され、貴族の仲間入りを果たした。この騎士団員は全員が来週には追放される可能性を秘めているため、騎士団長のような騎士団を纏める人物はいない。そのために、純粋な武力による選出が可能だった。

 

武力が高くても、統治能力が高いとは限らない。そのことを認識した上で、領地を分配したリディアだったが、単純に領内が荒れて欲しかっただけである。しかしながら反乱を起こし、増税により治安が悪化し荒れているような領地には武力のある領主が適任であり、元から能力が高かった彼らはすぐに支配体制を確立した。

 

一連の流れで、リディアの王としての威厳は高まり、領内の封臣達の畏怖と敬重の念を一層深めた。一番評価が大きかったのはコンスタイン家との使者との面会の時の言葉であり、普通であれば『全領土、全財産の没収』という条件を突き付けられると砦に籠り徹底的な抗戦を選択する存在も多い。

 

しかしリディアはコンスタイン家自身に領外への脱出を選択させ、コンスタイン家の強固な砦を無血開城させた。農民兵が中心とはいえ、常備軍も少なくはなく、攻城戦に移行すればリディアの軍にも被害は出ていた。それを未然に防いだことは、リディアの評価を上げる要因にしかならない。

 

また、このタイミングでリディアは封臣達に戦争の自由を言い渡した。リディアの領内であれば、封臣同士での戦争を認めるというものであり、リディアはこれを領内を荒廃させるための最善の一手だと考えていた。

 

ナロローザ王国の属するロウレット帝国は、基本的に封臣同士の戦争を認めていない。これは外国との戦争でも同じで、皇帝の封臣が戦争を興すには必ず皇帝からの許可を貰わないといけない。

 

しかし封臣の封臣にまでそのルールが適用されるわけではない。そもそも封臣の封臣から直接皇帝に許可を貰う、という行動も出来ない。皇帝視点で封臣同士の戦争が起きてなければ良いだけであり、封臣の領内で封臣同士の戦争が起きても基本は見逃される。

 

そのため、野心のある皇帝の封臣の封臣という存在は、皇帝の封臣に対して戦争の自由を要求することが稀にある。特に王国規模だと好戦的で野心的な伯爵、公爵達が徒党を組んで王に戦争の自由を要求し、時には反乱を起こして認めさせる。

 

そして領内は戦争が活発となり、封臣達を纏め上げる封臣が誕生し、やがて王に成り代わる。そうなれば元々王だった存在の末路は悲惨なもので、処刑されたり、下手すれば一生牢屋で飼い殺しに遭うこともある。リディアが望むバッドエンドの1つだ。

 

なお、戦争の自由をリディアが告げた時点で既に封臣達は全員がリディアに臣従することを心から誓っており、封臣達は下手なことをすればリディアが己の手を下さずとも他の封臣にすり潰されると畏怖した。

 

「さて……私は学園に戻りますが、クレシアにはもう一つお仕事をお願いしますわ」

「何なりとお申し付けください」

「アーセルス王国にいるという魔剣を作る鍛冶屋を連れてきて欲しいですわ。本人を連れて来れなかった場合は、魔剣そのものを何本か買って来て欲しいですわ」

 

また、リディアは帰郷ついでにクレシアに魔剣とその製造元の捜索をするよう命じる。腕を剣に変化させて戦うエイブラハムが捜している人物であり、また性能は恐ろしく良いが、持ち主に不幸を呼ぶという魔剣を、リディアが欲しがらないはずはなかった。

 

「1本5億クレジットまでなら出しますわよ。持つだけで強くなれると噂になるほどの性能であれば、その程度は惜しくありませんわ」

「しかし魔剣には破滅を呼ぶとの噂も……いえ、かしこまりました。必ず入手いたしましょう。その魔剣の打ち手はアーセルス王国に保護されているため、連れて来るのは難しいでしょうが、可能な限りの交渉をいたします」

 

リディアが伝え聞くだけでも、魔剣の持ち主の大半は自殺したり、精神的におかしくなったり、不幸な事故に遭ったりとリディアからすれば垂涎の代物だ。また不幸な事故の中には親しき者に刺されるケースが多く、リディアが渇望しないわけがなかった。


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