追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第28話 手抜きは追放ですわ

魔法学園にほとんど行ってないのにも関わらず、2年生となりましたがエイブラハムは地味に生き残ってますわ。しかし2年生となり、ダンジョンでの実習が始まったため、手抜きが許されない環境となったことで随分と責められるようになりましたわね。まあその責めている人間は私ではなくてユースケですが。

 

ユースケもエイブラハムの本気を知っていますし、ユースケとエイブラハムはダンジョンへ潜るための組み分けで一緒になったのですが、案の定パーティーメンバーが命の危機になったにも関わらず片腕しか腕を魔剣に変形させなかったようですわ。

 

……まあユースケも出し惜しみしてそうですけどね。とにもかくにも、追放すべき行動を取った以上は追放しますわ。エイブラハムが「リディアに何の権限があるんだ」とか言ってますが私はロウレット帝国の中で最大規模の経済圏を誇るナロローザ王国領の王様ですわよ。最近レイナール公爵が皇帝の封臣から私の封臣になったので国土も立派な王国級ですわよ。

 

で、追放されるのが嫌なら腕が変形する仕組みや魔剣について知ってることを話せと言うと断られたので尻を蹴って学園から追放しましたわ。もう少し冷静な男かと思いましたが、残念なことにとことん自身以外を信用しない男でしたわね。

 

まあ転生者がゴロゴロいる中で自分だけ手札を見せるのが嫌という気持ちは分かりますが、それでもパーティーメンバーが死の淵にいて全力を尽くさない理由を話せないなら追放するしかありませんわ。

 

個人的にエイブラハムは後で復讐して来そうな存在なので大満足の追放ですわね。あとでざまあを受ける覚悟は出来てますわよ。というかざまあ展開して来なさいですわ。

 

「リディア様、エイブラハムが在籍中に部屋で言っていた独り言をまとめた紙です」

「……非常に嫌な予感がするのですが、剣に向かって話しかけていました?」

「え、はい。腕を剣に変化させて語り掛けていました。変化の魔法の解析は出来なかったです……」

 

どうやらメイは私が戦争に行っている間、男性寮の天井裏に潜んで色んな情報を仕入れて来ているようですが、エイブラハムの独り言まできっちりメモをとっているのは流石元暗殺者ですわね。忍者ですか貴方。

 

何なら自慰回数すら記録を取られているのでこの学園で精力の強い者ランキングまで作れてしまいますわ。この学園の男子はご愁傷様ですわね。元男として、そこの情報を女子達に握られているのは嫌だと思いますわ。

 

『リア、魔剣って全部で何本あるんだ?』

『16本……結構多いな』

『あ、リアを除いて16本ってことか。ホルダーだしな』

『他の魔剣の固有能力は分かるか?』

 

エイブラハムの独り言によって、泣いたり笑ったりしか出来なくなるような感情に作用する魔剣がこの世に16本あることが分かりましたわ。というか魔剣が全部喋る可能性も出てきましたわね。エイブラハムの持ってる魔剣の内、1本の名前がリアということでしょうがもう片方の名前は出て来なかったのは気になりますわね。

 

……いえ、確かラフシュエートと叫んで魔剣を出していたこともあるので、それがもう片方の魔剣の名前ですわね。もしかしたら、3本以上持っている可能性も十分にありますわ。

 

あとエイブラハムが「ホルダー」という単語を出したので推測ですが魔剣を収納できる魔剣のようなものを持ってますわね。というかリアがそうなのでしょう。他の独り言からも推察をすると自然と行き着く結論ですわ。だからまあ、魔剣を集めているのでしょう。魔剣ごとに便利な必殺技とかありそうですし、全部集めたら本人が凡でも相当強くなりそうですわ。

 

そしてエイブラハムの剣の技量はかなりのものでしたから、もしも魔剣を全て集めると下手しなくても1人で軍を相手に出来る程度にはヤバイ存在になりそうですわ。私が2本持っている時点で成立しない話ではありますが。

 

16本あると分かったのは良いことなので、クレシアには引き続き捜索と買収を命じますわよ。可能であればメイが感情を喪失するために握らされていたという魔剣を買い戻したいですが、その魔剣がリアっぽいですわね……。エイブラハムの実家のサームタイン家は鉱山を保有していてお金があるので、買った可能性は十分にありますわ。

 

まあ無事にエイブラハムは学園から追放となったので、今はそれでよしですわ。次はユースケに標的を移そうかと思うのですが、彼はマリアの愛の奴隷なので革命軍の戦力を落とさないためにもノータッチで良いですわね。マリアへの献金は続けますわ。孤児院の規模も1000人を突破したそうですし、彼女の計画は順調ですわね。

 

というか信奉者が随分と増えたようなので聖女としての人気が止まりませんわ。来年にマリアは卒業するので、本格的な反乱はそこからでしょうね。ハイン王国は農地が広いため農作物の生産が非常に多く、豊かな国なのですが、実際のところは人口の大半を占める小作人という名の奴隷が必死に働いて日銭を稼ぐような生活を続けているので不満は溜まってますわよ。

 

ちょっとマリアが扇動するだけで簡単に蜂起するでしょうし、民間の不満と反乱への意欲を高めるために「リンリン教新聞」なるものを発行し始めたので時間の問題ですわ。……宗教の創始と新聞社の設立を行う聖女って文字面からしてヤバイですわね。これでマリアの地位は、恐らく揺るがないものとなりましたわ。


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