追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第29話 蝗害ですわ

2年生になってから実習の一環として4人パーティーを組むようになりましたが、まあ私のパーティーはメイ、マキア、マキナといつもの面子ですわね。

 

この世界のダンジョンは1つしかないというか、魔族領と繋がる大洞窟と言える地下空間がダンジョンと呼ばれていますわ。地下4層まであることが確認されていますが、4層にはこの世のものとは思えない魔物が沢山いるようなので楽しみですわよ。

 

ウキウキでダンジョン最下層にいるドラゴンの○○○のことについて考えていたら、ロウレット帝国軍の数少ないワイバーン兵がチラシのようなものを配布していましたわ。新聞の号外みたいなものだと思って内容を見ると、オーシェイ連邦が黒バッタと赤バッタにより壊滅的打撃を受けたと記載されていますわね。

 

……どこからどう見ても蝗害ですわね。この世界では蝗害が十数年に一度起きるようですが、基本的には元の世界と同じくバッタ類が大量発生して農作物を食い尽くしますわ。

 

恐らく黒バッタという名前と赤バッタという名前は過去の日本人が名付けたのでしょうが、黒バッタの方は地球で見かけるバッタよりも大きく体長約20センチと手のひらサイズの大きさですわね。こちらは農作物の他に、本や衣類等の何でも食べるバッタですが、動物や人は食べませんわ。基本的には、ですけども。

 

そして赤バッタの方ですが、大きさは黒バッタと一緒ですが黒バッタよりも性質が悪くて雑食ですわ。肉を食べるので家畜はもちろん、人への被害も出るのが特徴ですわね。生きたまま食べられるとか何それ素敵ですわ。気持ち悪い蟲に頭からガリガリ食べられるとか絶頂ものですわよ。

 

オーシェイ連邦からアーセルス王国へバッタ群は移動しているようなので、このまま行けばアーセルス王国と国境を接している私の領地にまで来ますわね。当然緊急事態なので一時領内へ戻りますわ。空を覆いつくすレベルの大きなバッタの大軍、是非見てみたいですしね。

 

「リディア様、どう対処なさいますか?」

「クレシアはコロシアムの内側と地下へ領民の避難を。あと要塞の方にも入るだけ入れなさい。すべての避難場所の入口付近には、騎士団の配置もしなさいですわ」

 

久しぶりに外で思いっきり自慰行為を出来そうなチャンスなので、目撃者になりそうな領民は全員コロシアムの中へ押し込みますわ。コロシアムは避難所として機能するように、建物は頑丈な作りですし、入り口や扉を騎士団で固めれば内側への侵入はないですわよ。

 

『ねえ!せっかく主と認めた人に数日間倉庫に押し込められた僕の気持ちが分かる!?』

「うるさいですわ。あと何か能力があるならさっさと話してくださいな」

『……自律行動が出来る。だから僕は柄を握らなくて大丈夫なんだ』

 

ついでに持つと楽しくなってくる剣は、自律行動をすることが出来るようで、勝手に浮いてヒュンヒュン自動で飛んでいきますわ。あの切れ味でファンネルのように扱えるのは強い武器ですわね。ちょっと黒バッタの方には用がないので、黒バッタだけを斬るよう魔剣に指示を出しておきますわ。

 

「あの黒い集団がそうですわね?」

「あのリディア様、服を……」

「メイしかいないのですから大丈夫ですわ。全員避難済みですわよ」

 

そして迎えた当日。単騎で蝗害を抑えに行ってきますわと避難場所の要塞から飛び出すとメイが追いかけて来ましたが他の追手はいないので無問題ですわね。どうせ服は食べられてしまうのでパンイチで特攻ですわ。蟲に全身を貪られるという奇特な体験を出来るチャンス、少々浮かれて変な行動をしている自覚はありますが逃しませんわよ。

 

「ひっ!?あんなに多いんですか!?」

「これは……あの黒壁、すべて黒バッタですわね」

 

バッタの大軍が迫り、一匹一匹が見えるようになった途端、背後から両手で私の胸を抑えていたメイが震えあがって泣き始めましたが女子にはキツイ光景ですから仕方ないですわね。視界に映る全ては黒バッタですので、ここは外れの地域ですわ。

 

赤バッタの発生原因はよくわかっていませんけど、一説には飢えた黒バッタの一部が肉を食べ始め赤くなると言われてますのでこの規模だと一定数はいると思いますわ。そうでなくても赤バッタの存在自体はオーシェイ連邦で既に確認されているので、討伐対象とはいえここまで辿り着いているはずですわ。

 

とりあえずこの集団は黒バッタしかいないので殲滅しておきますが、この規模のバッタ群があと数十はあることを索敵魔法で把握済みなので非常に楽しみですわよ。

 

火の球を風属性魔法で膨張させて、バッタ群の中央で破裂させると一発で結構な数の黒バッタが爆散しますわね。あとは自律を始めた魔剣が勝手に処理してくれますので、次へ向かいますわ。


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