追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第44話 ダンジョンですわ

魔王との会談という名の殴り合いが終わったので、魔族領のご馳走を振る舞われますが、白いご飯が凄まじく美味しいですわね。明らかに米の品種改良までやっているので過去の転生者グッジョブですわ。というかどこにでも米があるとか過去の転生者達がどれほど米を渇望していたかよく分かりますわね。

 

それと同時に、この世界には何百人何千人の転生者が来ているのか気になりますわね。ここまでの技術の発展は、1人の力では絶対に無理ですわ。少なくとも私は稲作について知識がありませんし。味噌や醤油を作る時に必要な菌がどういう菌かも知りませんわね。

 

食事の場で対面することになったのは過去の帝都襲撃の際、私にぶん殴られて帝都の外にはじき出された次期魔王候補の王子様ですわ。今日も今日とて半裸ですわね。鍛え上げられた筋肉が見えるのは良い事ですが、ボクサーパンツにマントが通常スタイルなのは流石に開放感があり過ぎますわよ。

 

今回この王子が呼び出されたのは、私をダンジョンに案内する役割だからですわね。私を見るなり身震いしているようでは戦力になるか怪しいですが、魔族の中でも期待のホープらしいですし最前線で戦っているようなので、一緒に最下層まで行きますわよ。

 

というか死んだ人から能力を回収出来る能力とか完全にチート染みた能力ですからね。元々の所有者が継承を認めていないと回収できないようですが、現魔王から巨大化を継承予定なら次期魔王候補筆頭ですわ。転移があれば最前線で戦っていても早々死なないでしょうし、戦友から更なる能力を継承出来る可能性もあるので将来的にはさいつよですわね。

 

「ところで今は幾つ能力を持ってますの?」

「……追加で得たのは再生と対爆だけだ」

 

能力について聞くと、良い感じにはぐらかされるので手の内は簡単に見せてくれませんわね。程よく仲良くなったら、ダンジョンに向けて出発しますわ。ダンジョン自体には魔法学園に在籍していた頃にちょろっと入ったことはありますが、基本的に上層には犬のような雑魚しかいないはずですわよ。

 

と思っていたのですが、ダンジョンの入り口から出て来ている魔物は見たことのない、この世のものとは思えない生物ですわね。人間の脚のような物体が数十本全周囲に生えている卵や、腐った人間の身体が集まって球状になっている魔物は見たことがありませんわね。

 

卵はすさまじい速度で駆け回っていますし、黒い人間の身体が幾十にも絡まっている魔物は表面の顔から毒ガスのような緑色の霧が撒かれていますわ。それに相対している魔族達も、奇天烈な恰好が多いですし、全裸も多いですわね。炎が飛び交う戦場ですから、燃える服は邪魔と言うことでしょう。文化の違いですわね。

 

「メイはあのような魔物を見たことあります?」

「……ないです。何ですかあの見ただけで背筋が凍るような生き物は」

「元々は、ダンジョンで死んだ人間の死体と言われているな。それを女神が取り込んで、対魔族のための殺戮兵器にしている、と言ったところか」

 

魔族の王子、メルトが魔物の解説をしてくれますが、元人間ですか。つまり女神は元人間の身体を取り込んであのような醜悪な魔物を量産しているということで……とても興奮してきましたわよ。私自身がそうなることも、美女美男がそうなっているのを眺めることも、私はどっちでもイケる口ですわ。

 

一先ず、毒ガスをまき散らしている魔物の方から取り掛かりましょうか。周囲の魔族達は黒く燃える焔の奔流や冷気漂う氷の弾丸を当て続けていますが、効き目が薄いところを見るに魔法での攻撃は通り辛いのでしょう。

 

「魔法での攻撃が効いていませんわね……」

「ああ、恐らく物理的な攻撃しか効かないのだろう。しかし周囲には毒ガスが撒かれているから迂闊に近づけん」

 

その上で緑色の毒ガスは吸えば一瞬で魔族が倒れるほどですから接近戦も難しいとなると遠距離での物理攻撃が一番効きそうですわね。魔族の方もアーチャーを集め始めたようですし、弓での攻撃や投石とかの攻撃が選択肢としてベストですわ。

 

「じゃあちょっと近づいて魔法を撃ち込んで来ますわね」

 

まあここまで分析しておいて、私はあの魔物に接近して至近距離で魔法を撃ち込みますが。メルトは私を止めようとして、見逃したので私の扱いを早くも理解して来ましたわね。

 

近づくと明らかに毒性のガスを吸い込むことになりますが、これヤバイですわね。全身が腐食されているような感覚というか、肌が腐るとかどういう現象が起きてますのこれ。全身が滅茶苦茶痛いですし辛いので素晴らしいですわね。

 

魔王戦ではイけなかったですが、今回は無事にイけたので下着が大変なことになってますわよ。とりあえず至近距離まで移動出来たので、襲い来る長い腕というか触手に捕まりながら開けっ放しの大きな口に風属性魔法で作った螺旋状の空気の塊をぶち込みますわ。

 

……直後、魔物は爆発四散して緑色の体液をばら撒きましたのでべっとりとそれが私にかかりますが、服が溶けていってますので相当凶悪な魔物ですわね。これがダンジョンの上層から出て来る弱い魔物とか、よく魔族は生きながらえていると思いますわ。


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