追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第45話 女神産の魔物ですわ

もう片方の動き回る卵は魔族の王子であるメルトが空を飛んで、自身を弾丸にして中心部をぶち抜いていたので、魔族も魔族で割と脳筋ですわね。どうやらこのクラスの魔物がダンジョンの最下層で産まれては、魔族領に向かって進軍を開始しているとのことで現状かなり押されていますわね。

 

とりあえず一番ルートが分かっているという入り口からダンジョンの内部に入りますが、出て来る魔物は大体が人間の身体の一部をむき出しにしているのでメイのSAN値がガンガン削れていってますわよ。元暗殺者で、幼少期から感情を殺す訓練を受けているのに恐怖するのは相当ですわね。

 

そもそもの強さもおかしいですし、よくロウレット帝国側やアーセルス王国側の入り口から湧き出ませんわね。まあ産まれてはすぐ魔族領へ進軍しているとのことなので、未だに女神の標的は魔族ですわ。というか歴史書では魔族を殲滅するために現世に降臨していましたわ……。

 

とりあえず、魔族は女神の琴線に触れた転生者かその子孫みたいな認識で良いですわね。ダンジョンは上層、中層、下層、最下層の4層に分かれていますが、中層からはドラゴンが合体事故を起こしたような魔物まで出てきましたわ。頭が二つあるならまだ分かるのですが、尻尾の先に人間の脚が生えていたり、目から人間の腕が生えていたり、腕の部分に人間の目があるのはひたすらに不格好ですわ。

 

目から生えた腕の先にある手のひらの口から灼熱のブレスを吐くとか見た目詐欺も酷いですわよ。まあこのパーティーメンバー、ただの熱なら耐えますし、メイですらほとんどダメージはないですわ。

 

そして気持ち悪い箇所から剣で斬り落としていくメイは、扱いやすそうな魔剣を手に入れたら譲渡したいですわね。今のところ扱いやすい魔剣というのはないですけど。何で握っただけで、泣いたり怒ったり自信過剰になるのか、魔剣の仕組み部分は私でも全然わかりませんわ。

 

「……ここから下層だ。たまに現れる天使のような魔物は、攻撃が通らないから逃げろ」

「物理的な攻撃も、魔法的な攻撃も一切通らないということですわね?」

「ああ。その上で相手は当たったら存在ごと消える光線を撃って来る。……何人の戦友が消えたのか、俺は覚えてすらいない」

 

魔族の精鋭部隊でも最下層に到達することは極稀なようですが、女神が封印される前のダンジョンの記録が残っているので、マッピングは最下層まで出来ていますわね。どうやら地図によると、下層から最下層への入り口はちょうどアーセルス王国と魔族領の入り口の中間点ですわ。

 

アーセルス王国側の入り口から下層へ降りるルートと魔族領側の入り口から下層へ降りるルートは被さっていないので、今まで鉢合わせるようなことはあまりなかったと推測できますわ。半裸王子が毎回魔物の注意点とか言ってきますが、全属性の攻撃が通らないのは出会いたい相手ですわね。

 

その上で存在抹消ビームを撃って貰えるのかとワクワクして天使のような魔物を探し回りますが、残念ながら出会えず。最下層への入り口に到着したところで、アーセルス王国側の入り口から出るようにしますわ。このまま単騎で女神を世界から追放しに行きたいところですが、世界から追放する方法の目途はまだ立っていませんし、転生者軍団の目の前で殺さずに追放という選択肢を取りたいので後回しですわ。

 

ちなみにアーセルス王国側の入り口から魔族と一緒に出て大丈夫かとメイが不安になっていましたが、メルトは固有魔法の変身で人間になることが出来るようなので無問題ですわね。どちらかと言うとアーセルス王国で指名手配されている私の方が問題だと思いますが、ダンジョン内で会う冒険者はまさかこんなところにアーセルス王国最大の敵がいるなんて思ってもないですからスルーしてくれますわね。

 

「いえ、思いっきりその光る剣でバレていると思うのですが……」

「……まあ捕まえに来ないということは、ガルロン辺りが何らかの手を打ちましたわね。そろそろ光り終える頃なので、またガルロンの屋敷に行きますわよ」

「ガルロン……まさか、魔族攫いのガルロンか!?」

「あのマッドサイエンティストは、何をしでかしたの……ああ、大体察しが付きましたわ」

 

せっかくなのでガルロンの屋敷にまた立ち寄ろうとしたら、メルトがガルロンのことを知っている様子だったので聞いてみると魔族の子供を攫ったらしいですわ。恐らくですが、その魔族は魔剣の素体にされていますわね。

 

……ガルロンが女神の殺害計画に関して、戦力が足りないと言っていたのは、下層や最下層を突き進むための戦力でしょうね。アーセルス王国には沢山の冒険者が集まっていますが、最下層に行って帰って来た人はいないという噂ですし、Sランク冒険者は下層探索許可者みたいな風潮もあるので、そのSランク冒険者を増やすことで最下層を目指そうとしていますわね。

 

何だかんだ言ってエイブラハムとか魔剣持ちの戦闘技能は高いですし、魔剣の能力も凶悪なものは多いので人が増えれば女神に勝てる可能性もあると思いますわ。過去に一度、現世の人間に封印されているということは女神は人間に負けていますしね。

 


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