追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第48話 善政ですわ

「止まれ!何者だ!」

「リディア=ナロローザですわ。今日はこの城で泊まりますわよ」

「何!?

……失礼いたしました。どうぞお通り下さい」

 

城門から普通に入ろうとして、リディアを名乗ると門番は平伏して丁寧な扱いを始めますが、もう少し疑うことをしなさいな。まあ金髪ツインドリルの巨乳美少女なんてここら辺では私しかいなさそうですけど。

 

城壁の中に入ると、それなりに広い田園と結構な数の小作人がいるので辺境の田舎のわりには人が多いですわね。しばらく城に向かって歩くとまた城壁と門が現れたので、恐らくここが本来の城門ですわ。

 

「たのもーですわ!」

 

その城門を飛び越えると、目の前にあるのはかなり大きなお城ですが、豪華さよりも機能性重視の城でつまらないですわね。何故か私がリディアだとバレている感じなので、ここの一番偉い人を呼んだら何処かで見たような顔の男が現れましたわ。

 

「お久しぶりです!リディア様!」

「あなたは……騎士団に在籍していたアクバルでしたか?

いつの間に城主になりましたの?」

「覚えていてくださいましたか!

私は騎士団を除名された後、黒服隊に入って警邏を務めていましたが、クレシア様に抜擢されて昨年ここの城主になりました」

「執事上がりの城主じゃないのは珍しいですわね。まあ良いですわ。今晩はここに泊まりますわよ」

 

確か、3年前ぐらいに騎士団に3ヵ月ぐらい居た男ですわね。あの頃の闘技大会はもう粗方強い人を取りつくしていたのでそこまでレベルも高くなかったのですが、それでも優勝していたので拾った男ですわ。ちょっと見ない間に青年から大人になっていますし、見た感じ嫁も2人いるので勝ち組人生歩んでいますわね。ついでに片方を孕ませてますわ。ちょっと羨ましいですわよ。

 

……私が快楽堕ちして寝取られる流れはうぇるかむですが、私が誰かから寝取ることはないので嫁達は心配しなくても良いですわよ。経営状況も見たので抜き打ちテストみたいな形になりましたが、善政を敷いているのが一番つまらないのでもっと不正しなさいですわ。不正して下さいですわ。不正をお願いしますわ……。

 

「検地の結果の詳細は?」

「こちらにあります」

「建設予定の堤防について費用対効果の計算と過去の災害の記録」

「こちらに」

「これ」

「ここに」

「治安に関しては……」

「黒服隊の警邏出身なのでバッチリです」

 

適当に監査の真似事をしますが、責める内容が皆無とか何でアクバルは一度剣の道を志したのか分かりませんわね。というか1年しか領主務めてないのに民からの信頼も厚いとか追放出来ませんわよ。

 

あと私の欲しい資料を予想して欲しいタイミングでサッと用意してくる辺り、有能ですわね。これが無能だと私が全部言葉に出してからようやく資料を探し始めて、結局見つからないとかもありますわ。そういった輩は全員追放ですわよ。

 

「……メイ、そちらの資料は?」

「少なくとも抜け漏れや計算ミスはないです。根拠もしっかりしていました」

 

城主として適当に判子を押しているだけの機械になってないかチェックもしましたが、非常に残念ながらアクバルは有能な内政屋のようですわね。地位としてはこのロズワルド公爵領の一男爵でしかないのですが、その内伯爵になりそうですわね。

 

というかこの能力なら伯爵にしないとうちの内政屋が足りないので後でクレシアに推薦しておきますわ。ナロローザ王国は急速な領地拡大を始めているので、県長クラスの伯爵は何人居ても困らないですわよ。

 

その後は城の一番豪華な客室に案内されますが、客室が並ぶ階層はホテルのような内装ですわね。唯一の減点箇所は食後のデザートに毒が出なかったことぐらいですわ。ここから南の地域は遊牧民や蛮族が住む未開のエリアなので、次に来る時までには珍しい毒物を用意して欲しいですわ。

 

「……あの力があるなら、そこらの盗賊には負けないと思います」

「一瞬ですが、メイの一太刀を受け止めましたからね。一瞬ですが」

 

一晩お世話になった後は、アクバルがメイに模擬戦を挑んで一瞬で負けるイベントもありましたが、特に何もなくナロローザ公爵領の邸宅に戻りますわよ。また何日も留守にしていたから、報告書が溜まりに溜まってますわ。

 

………少し戦闘報告を読みますが、何で連戦連勝してますの?うちの騎士団が何故か山を登ってますけど、時期的にまだ山頂には雪が残っていますわよね?

 

ヘルソン王国の王都を急襲して陥落とか、ペースが早すぎますわよ。統治出来る人材がいない内は敵国から人、物、金、物資の略奪だけに留めなさいと命令を出しますが、時すでに遅かったですわ。

 

どうやらヘルソン王は無事に追放され、代わりに私の封臣のレイナール公爵がヘルソン王国の大半を支配することになりましたわ。期待していたことの真逆のことが起きるのは、そろそろどうにかなりませんの?

 

 

 


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