追放系お嬢様   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第52話 3年後ですわ

ハイン王国で全土を巻き込んだ農民の反乱が起きてから月日が経過し、完全に戦国時代と化した隣国を眺めつつ、女神追放のための策を練っていましたが、先日ようやく魔法陣が完成しましたわ。

 

「俺のお蔭だけどな……」

「この魔法は、メルトがタイミングを合わせられるかにかかっていますわね。失敗したら恐らく女神に消し炭にされますわよ」

「……女神の攻撃方法は伝承によると、触手のような鞭で身体を貫いてくるそうだ」

「何それ素晴らしいですわ」

 

魔族の王子であるメルトは、ここ一年ほど私の邸宅に頻繁に出入りしていますが、女神追放のためには彼の協力が必要だったからですわね。具体的な女神追放の手段としては、メルトの固有魔法である転移を使って、転移先を別世界に設定し強制転移させますわ。

 

これで女神が転移やそれに準ずる魔法を使えないのであれば追放は完了しますが、この世界に戻って来る可能性も十分にあるので、女神が使える転移魔法についてはこの世界軸への転移を封じますわ。ここら辺は、魔族の魔法技術を滅茶苦茶転用していますわね。

 

何とか魔剣が光り出すタイミングに間に合わせたので、あとはひたすら追放の失敗を願い、追放出来たとしたら女神からの復讐を願い続けますわ。女神の怒りはどのようなものになるのか、想像しただけでワクワクしますわよ。

 

きっと女神と呼ばれる高位の存在ですから、いつかは自力で転移先の封印も解いてこの世界に戻って来るはずですわ。あのガルロン率いる転生者達は、女神の殺害という目標が不達成となるので恨んでくれそうですし、すべてが思惑通りになることを祈るだけですわね。

 

ガルロン側も魔剣持ちの冒険者が最終的には8人となったので、私を含めて9人、ガルロンとメルトとメイを足して12人での攻略となりますわね。……メルトは魔族の精鋭部隊を率いて来る手筈でしたが、どうやら女神産の魔物との戦闘で相次いで死んでいるようなので、魔族はわりと風前の灯火ですわ。

 

あの巨大化していた魔族の王様ですら最前線で矛を振るっているようなので、不味い状況なのは見て取れますわ。一方のナロローザ帝国は相変わらずアーセルス王国やハイン王国、旧ロウレット帝国軍と戦争中なのですが、一方的に略奪しては無能を追放して人口調整している謎の国になっていますわよ。

 

自国さえよければそれでいい。この考えで国際社会から孤立して制裁をされたいのですが、略奪で国の財政が潤いを増す一方、周辺諸国は飢饉や無能を押し付けられた経済的なダメージが大きく、ナロローザ帝国から世界が孤立しているような状態ですわね。

 

一応、餓死者が出るレベルの飢饉は脱した周辺諸国ですが、略奪のせいで豊かにはなっていませんわ。つまり周辺国が貧しいのは全て私のせい。そういう論調に持って行きたいのですが、既に世界の世論を操るリンリン教新聞の最大のスポンサーが私ですから歯向かって来ませんわ。つまらないですわね。

 

「地震、雷、火事、大雨、蝗害……どれでも良いので今年はどれか一つ発生して欲しいですわ」

「それらの災害は全て対策済みですから、対策にどれほどの効果があるのか確認したいのですか?」

「何らかの災害が起きた時、政治が悪いと言う人が現れるか見たいからですわね」

「そのようなことを言う人は現れないと思いますし、それならこの3年間、災害が起きなかったのはリディア様のお蔭だと思います」

 

この3年で、私の身長に並ぶぐらい大きくなったメイと災害待ちをしますが、そういえば思いつく限りの災害は何かしらの対策をしていましたわね。

 

個人的には災害が起きた時、首相や大統領が悪い的なノリで「災害が起きたのはリディアのせい」と民衆から言われたいのですが、今のところそういう輩は出て来ていませんし、むしろメイみたいに私のお蔭で災害が起きていないみたいなことすら言われているのは、非常に好ましい状況ではありませんわよ。

 

あとこの3年間、反乱は一切起きなかったのでマジで女神追放のための手段確保の研究と女神の持つ転移魔法の封印の研究に没頭していましたわね。相変わらずデプハスションは喋りませんが、拷問され続けた転生者の人格を保有しているのは確認出来ましたし、実りは多かったですわ。そしてこのデプハスションを、メイが持てるようになったのは大きな成長ですわ。

 

「メイ、全力で撃ちなさい」

「はい!」

 

私がエネルギーを溜めて、メイがピンク色の光線をぶっ放すことは可能となったので色々な戦術を取ることも出来ますわ。私が女神を押さえつけて「私ごと吹き飛ばしてくださいまし」ということも出来ますわよ。今もピンク色の極太光線が全身に降り注いでいますが、肌がピリピリして気持ち良いですわ。初回の時は全身大火傷だったことを考えると、もうちょっと重傷になって欲しいですけど。

 

……メイはピンク色の光線をぶっ放した後、膝を突いてガクッと体勢を崩し、慌ててデプハスションを放り投げたので、エネルギーが空の状態の時はまだデプハスションの鬱攻撃に耐えられなさそうですわね。ですが自傷を行わずに手放せるだけで大きな進歩ですわ。戦闘技能も向上していますし、これなら最前列で戦っても大丈夫ですわよ。


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