東方修羅道   作:おんせんまんじう

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ゆゆゆっくりしてね!


第十二話 決着

 依姫の右腕と木刀が炎に包まれ、轟々と音を立てている。

 依姫は脂汗をかいており、まだ能力の使用に慣れていないのだとシンは考察した。

 

 今すぐに攻撃を加えたいところだが、シン達、もといヴェノムは炎が弱点であり、攻勢に出ることを躊躇っていた。

 更に聞こえた言葉は愛宕様、つまり火之迦具土神(ヒノカグツチ)

 推測が正しければ、依姫の能力は神の力を行使すると言う物。

 いくら炎が弱点と言っても、火の化身とも呼ばれる神の炎では、マトモに受けられないことは確実だ。

 

 と、そこで依姫が徐に腰を落とし、炎に包まれた木刀を鞘に戻すように動作をとる。

 間違いなく居合だ。

 

 更に居合の動作をとる途中で右腕の炎が全身へ広がっていき、人間大の火球を作り出した。

 依姫の目が火球の中から爛々と輝き、勝利から一変、敗北の雰囲気が頭をチラつく。

 

 とりあえずヴェノムを纏ったままではヴェノムそのものが消滅する危険があるので、ヴェノムを体の中に収め、居合の一挙一動を観察し、迎え撃つ。

 以前に見た居合は音も立てない…暗殺のような一撃であり、シン達はそれに敗れた。

 しかし、十分に力を溜め、更に炎を纏った居合ならば…

 

 ゾクリ、依姫の圧が視覚化され、心臓がドクドクと鳴る。

 

「ハァッッ!!」

 

 短い掛け声と共に道場の床が捲り上がり、爆音が鳴る。

 シンは瞬きせずに音速に届くだろう速度の依姫を迎撃した。

 目の前の依姫がカメラのシャッターのように近づき、燃える木刀を振り下ろす。

 

 一撃目、脳天に炎の剣が迫り、それを勢いに押されながらこちらの木刀で防ぐ。

 熱気が顔を撫で、腕を火傷し、木刀の表面が焦げる。

 刃こぼれしていくように炎剣が木刀に食い込んでいくが、何とかいなす。

 しかし、カグツチの炎としてはあまり熱量は無い。

 むしろ普通の炎の温度、これならばーーー

 

 二撃目、いなされた炎剣が再び切っ先をシンに向け、脇腹を炎が襲う。

 服の先が焼き焦げ、間一髪のところで木刀を滑り込ませ、炎剣を弾く。

 しかし、炎による劣化に耐えられず、木刀が真っ二つになってしまった。

 

 三撃目、依姫は弾かれた炎剣に体制を崩すこと無く、回転することで次の攻撃に繋げた。

 首を狙った一撃、シンは、真っ二つになり二本に分断された木刀を空中で拾い、小太刀の二刀流といったように防御に出る。

 炎熱が顔を襲い、耳や首元が火傷になる。

 二本の木刀越しに衝撃が伝わり、一瞬視界が暗転する。

 目の鼻の先には炎の中、苦悶の表情を浮かべた依姫がいた。

 恐らくシンも同じ表情だろう。

 

 シンは体を逸らして衝撃を逃し、依姫は真っ直ぐ突き抜けていった。

 

 居合の特性上、一度放ったら隙が生まれる。

 依姫はそのセンスで、一度の居合に三度与える技術を持っているが、この連撃じみた居合を抜ければ勝利が確定する!

 

「ハハッ!!終わりだッ!!!」

<…ッ!!まだだッ!気をつけろッ!!>

 

 シンは勝利を確信するがヴェノムが注意を促す。

 

 背後でドンッ、と音が響き、シンは背後へ振り向くとーーー

 修羅…いや炎の化身と言っても差し支え無い依姫が目の前に迫っていた。

 

 慌てて防御するが、折れた木刀ではまるで防ぐこともできずに胸に一撃を貰い、依姫は止まらず壁へ突っ込んだ。

 胸が焼け付き、ヒリヒリと痛む。

 火傷に耐えながら依姫を目で追うと、壁に激突するーーー直前で壁に着地し、壁を踏み抜き、爆発的な速度で切り掛かってくる。

 

 つまり、弾んだボールが燃え盛りながらシンに向かって、バウンドし続けていると言うことだ。

 

 次第に木刀が炭と化し、ボロボロと崩れ、身体中が火傷に見舞われていく。

 

「グゥッ…!!」

 

 歯を食いしばり、依姫の居合に合わせて拳を振るう。

 しかし、速度と熱を持った一撃に拳がひしゃげ、焼き爛れていく。

 焼き爛れた拳をヴェノムで覆い、治癒しようと試みるが熱によってそれもままならない。

 

 絶体絶命、限界は近いが、依姫も限界は近いだろう。

 ならば限界が来たその隙に渾身の一撃を叩き込めばいい。

 

 その刻を待つシンだったが、十秒、三十秒、一分と過ぎるにつれ、ジリ貧になってきた。

 

(くっそッ!アイツに限界はないのかッ!?)

<いや…確実に消耗しているぞ…!>

 

 確かに依姫は既に限界を迎えている。

 証拠に脂汗がダラダラと流れ、今にも倒れそうな顔をしている。

 それでも攻撃の速度が落ちず、隙も見せないのは負けたくない、勝ちたい、この一心だった。

 

 その諦めない心は誰から教わったのだろうか。

 

「あアぁぁあああッ!!!!」

「うおぉォォォオオオオッ!!!!」

 

 互いに叫び声を上げ、旗から見れば大激闘でも、当人からすれば我慢比べに他ならなかった。

 しかし、その我慢比べも終わりを告げる。

 

 彼女の剣撃を迎撃せんと拳を振るったそのとき、依姫の木刀がダメージの蓄積に耐えられなくなったのか、ボキリと音を立てて粉砕された。

 

「あっ…」

終わり…だぁぁぁァァアああああア!!!!

 

 木刀が折れ、依姫は心ここに在らずといったように硬直し、纏っていた炎も霧散する。

 シンはこの決定的な隙を逃すまいと、全身をヴェノムで覆い、剛腕のフックを叩き込んだ。

 

 叩き込んだーーーはずだった。

 

天宇受売命(アマノウヅメ)!!」

 

 フックが炸裂する直前、依姫が能力を使った。

 踊るように間一髪で回避され、シンは目を見開く。

 何故だ、もう限界を超えているはずだ、ほら、鼻血が噴き出ているではないか。

 

 続け様に依姫は能力を使う。

 

天照大御神(アマテラスオオミカミ)ッ!!」

 

 瞬間、極光が依姫から溢れ出た。

 間近で閃光手榴弾の何百倍もの光を受け、シン達の目は焼かれてしまう。

 シンの心中は何故、という言葉に埋め尽くされた。

 何故諦めない、何故そうまでして勝ちたい、そんな価値がこの俺にあるのか。

 疑問は言葉となって溢れ出す。

 

何故だ…何故だッ!何故そうまでして勝ちたいッ!!

「貴方と、()()ですよッ!!憧れるからこそッ!負けたくないッ!私に()()()()()()を持っているからッ!貴方に近付きたいッ!!」

 

 光に塗り潰された瞳は依姫を映さない。

 今の依姫の叫びはシンに更なる疑問を齎した。

 俺に、憧れる?なかったモノ?お前は才能と能力を持っているではないか?俺に持っているモノにそんなモノーーー

 

「貴方が諦めないからッ!私はここまで追い詰められたッ!!だから私も諦めないッ!!絶対に…絶対にッッ!!!」

…ッ!!

 

 …そうか、確かに俺は諦めなかった、確かに同じだ。

 俺はお前に才能という羨望(嫉妬)を持っていた、だから俺はお前に追いつこうと努力してきた。

 お前は俺に諦めない心という憧れ(好意)を抱いた、だから俺に近付くため、今なお挫けんとする。

 

 依姫の決意は伝わった、だが、俺は…いや俺達は依姫に勝つ。

 俺達は音を頼りに依姫を討つため、その場でジッと留まった。

 攻撃が来れば気配を頼りに穿つ。

 

 そして、両者は感じていた、この一撃が最後になると、二人を勝者と敗者に分けることを。

 

 そこからは先と違って静かな勝負だった。

 走り回ることで気配を撹乱し、攻撃のフェイントを織り交ぜながら接近する。

 

 心臓の音がやけに煩い、手汗が吹き出し、口が妙に渇く。

 

 そして、最後の攻防が始まった。

 

 小さく風を切る音、シンはそれを依姫と断定し、大きく拳を振りかぶって殴りつけた。

 

オラァッッ!!

 

 しかし、拳に伝わる感覚は柔らかい肌や骨、と言ったものではなく、バキィィン、と響いた木材の破砕音だった。

 そう、それは依姫の両断された木刀であり、依姫がブラフのために投擲したのだろう、ならば依姫は?

 

 そう思った瞬間に背後から熱波が突き抜け、又も戦慄する。

 

「愛宕様の、火ッッ!!」

 

 また能力発動だ、限界を迎えてから三度目である。

 依姫は更に鼻血を噴き出し、耳からも血を流しながらも、シンを殴打しようと拳を振るっている。

 

(それが依姫の諦めない力か…ッ!)

 

 振り向き様に剛腕を繰り出す。

 ヴェノムを内に収容する時間は無い、悪いが耐えてくれ。

  

<オオオオォォォォォォオオオッッッッ!!!>

 

 黒腕が崩壊するように溶けていき、ヴェノムの叫びが脳に木霊する。

 依姫に繰り出す一撃、シンに迫る一撃、目の前の光景がスローモーションで再生される。

 依姫の炎の拳が避けることも叶わず。シンの顔に直撃し、シンの顔がひしゃげ、炎に包まれる。

 シンの拳は依姫の眼窩に迫るが、依姫は首を逸らして避け、頬に一筋の血線を作り出した。

 

 つまり…この勝負はーーー

 

 シンの体がゆっくりと膝を突き、倒れ込む。

 完全に気絶しており、傷を癒すためか、ヴェノムが纏わりつく。

 依姫も炎を霧散させ、倒れ込む。

 しかし、意識は保っており、マトモに動かせない腕を上げて、勝利の宣言をした。

 

「ハァッ、ハァッ、私の!勝ちですッ!!」

 

 荒い息遣いであるが、勝利宣言をした依姫の顔は晴れ晴れとしており、そのまま眠るように気絶した。

 

 そうして両者意識を失ったそのとき、入口からひょっこりと玄楽と豊姫が出てくる。

 観戦でもしていたのだろうか。

 

「派手にやったなぁ…」

「それにしても依姫とこうも互角の戦いを繰り広げるとはね…」

 

 玄楽はボロボロの道場を見て独りごち、豊姫は依姫を担ぎ、そのまま部屋を出ていった。

 

「シン君達はよろしくね、お父様」

「任せておけ」

 

 玄楽はシンと未だ怪我の治療を行うヴェノムに触り、パチンと指を鳴らした。

 次の瞬間にはシンのベットである。

 

お前はずっと見てたのか?

「あぁ」

 

 ヴェノムがシンを治す傍ら、玄楽に聞くが、玄楽は短く返答し、会話は一瞬で締め括られた。

 ふと、玄楽が独白のようにシンに言う。

 

「シン…今回も負けてしまったが…三ヶ月後、軍の正式入隊試験、俗に言う軍来祭がある…そこでリベンジだな」

 

 ヴェノムは黙って聞いている。

 そうして玄楽はまた指をパチンと鳴らし、跡形もなくなっていた。

 残されたのはシンと火傷の治療をするヴェノムである。

 

 夜が更けた頃、ようやく治療が終わったそうな。

 

 

 




ご拝読、ありがとうなのぜ。
すまんZEN逸、技パクらせてもらったのぜ。

登場人物紹介っている?

  • やってくれ 必要だろ(いる)
  • それは雑魚の思考だ(いらない)
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