アースとの一戦以降、それなりの時間が流れた。
時間にして四時間、シン達は何事も無く試合を勝ち進めていた。
テレビに映ったカレンの試合は瞬殺とはいかなくても、能力だろう雷撃による圧勝が殆どだった。
同様に依姫も圧勝であり、こちらは能力では無く純粋な剣技で勝ち進めているようだった。
そうして第四ラウンド、つまり準々決勝が終わる頃には、日が沈み始めてしまい、シンは欠伸を掻きながら流石に
しかしテレビで司会者が放った言葉は違った。
『激闘が行われた軍来祭ッ!日は落ちてしまったが問題はないッ!!こんなこともあろうかとこのスタジアムにはある仕掛けが施されているんだ!!』
司会者はスポットライトに照らされ、演説のような放送をおこなったかと思うと、パチンと子気味のいい音を鳴らした。
音は夜空に溶け、開かれた空が鈍い音を立てる天蓋によって閉じられた。
暗闇と化す会場からはざわざわと困惑の声が広がり、テレビに映る画面は真っ暗となった.
不意に天蓋に光が灯り、会場は人工的な光に包まれる。
感嘆の声があちこちから聞こえるが、更にそれでは飽き足らぬと言わんばかりに天蓋が透けるように透明になり、夜空に燦然と輝く星と一等星もかくやという程輝く照明、一際存在感を放つ満月を映し出した。
これにはシン達も素直に感嘆の声も漏らし、会場も黄色い歓声を上げた。
司会者はニヤリと笑い言葉を続ける。
『どうだこの技術!八意様の発案した透過したかのような壁ッ!すばらしいだろう!?そして、準決勝は星空の明かりの下行われるッ!残った選手は四名!
数多の勝負を圧倒したミナクテット・カレンッ!
巷で噂の黒き化け物、シンッ!
見る者を魅了する剣術!未だ能力を見せない綿月依姫ッ!
男限定で圧勝していた男!溢れ出るホモッ!ビデオに映し出されたココロの陰部 これは夢なのか、現実なのか…暑い真夏の夜 加熱した欲望は、ついに危険な領域へと突入する!!ネットのオモチャ!!二十四歳!学生!最早彼に人権は無い!!田所浩二ッ!!
以上四名の誰かがこの大会の栄光を掴み、華やかな未来を迎え入れることが出来るッ!皆さんッ!刮目せよ!これから起こる激闘にッ!」
熱の篭った紹介に拍手が送られ、ついでとばかりに十分間の休憩を言い渡して去っていった。
この演説を聞いたシン達は田所という人物に何故か嫌悪感を抱きながら控室を出た。
理由は売店に向かい、ヴェノムに約束の美味い菓子を与えるためだ。
何度もこの施設で迷ったおかげで、親切な事務員に地図を貰っていたため、今度は迷うこと無く売店に到着した。
ここに来てから少しずつ、本当に少しずつ金を貯めていたため、一万程の金が全財産として懐に残っている。
七千五百円は手元に残しておきたいので、余りをどうするか一瞬考え、適当にチョコレートを買おうと結論を出した。
<簡単に決めるなよッ!もう少し迷えッ!!>
(大丈夫さ、チョコレートはこの世で一番美味いんだからな)
<…本当だな?>
勿論嘘だが、心に出さず、丁度二十個のチョコレートをカゴに詰め、がらんどうとした店内も見る。
恐らく殆ど会場にいるため、客も来ないもだろう。
どこか哀愁も漂わせる商品を他所に、店員に代金を渡し、足早に控室に向かった。
たった十分の休憩と言っていた通り、試合開始の時が迫っている。
地図を頼りに静かな通路を抜け、部屋でチョコをヴェノムに与える。
最初は舌をちょんちょん当てて警戒した様子だったが、食べられると判断したのか、一気に齧り付いた。
瞬間、ヴェノムの貼り付けたかのような濁った白の目が見開かれた。
<……ッ!!!>
ヴェノムは無言で、されど夢中でチョコを喰らい尽くし、あっという間に二十あったチョコの半分を平らげてしまった。
残ったチョコにも触手状の手を伸ばし、器用にラッピングを剥がして今度はゆっくりと味わうようにチョコのある成分を堪能した。
シンは知らないが、チョコには人の脳にも含まれるフェネチルアミンが含まれており、ヴェノムにとってそれは主食とも言っていいほど重要な成分なのだ。
ヴェノムがヴェノムらしからぬウットリとした表情でチョコを食べ進めている。
だからだろうか、ノックの音とドアが開く音が聞こえなかった。
「失礼しま…え"っ…」
「…あー、うん、そう言う能力だと思っていてくれ」
「…わ、分かりました、本題ですが時間がやって参りました」
少し気まずいが、試合で見せた
絶叫はしなくてもチョコを頬張るヴェノムにドン引きする程度で済んだ。
「おいヴェノム!行くぞ!」
「待て!チョコレートぐらい食わせろ!」
慌てて口にチョコを放り込み、最後の一個を丸呑みしたヴェノムの顔は、ハッキリ言ってリスみたいだった。
肩から伸びる凶悪な顔がチョコを頬張りリスみたいな顔になっている…このギャップに鉄仮面の案内人もクスクスと笑い、少し足早に会場まで歩いた。
「到着です、頑張ってくださいね、ふふ…」
「あぁ」
到着したシンに初めて案内人は激励、とまではいかないが応援を送り、シンは更に短く答えた。
「さぁ、ヴェノム、行くぞッ!」
「依姫前の準備運動だ、こんなもの」
会場は閑としていて、嵐の前を静かさを現していた。
その静寂を打ち破るように、司会者が叫んだ。
「…皆さん、お待たせしました、軍来祭…準決勝の始まりです!!」
ワアアアアアッ!!と今までとは比にならない歓声が響いた。
「まずはカレンッ!その力は我々がよく知るところだろう!!その膝は地に着くのかッ!!
そしてシンッ!力と技術を合わせ持つ、何より暴力的な姿!怪物は女帝に敵うのかッ!?」
怪物とは随分な言われようだ。
ゆっくり前へ歩き、カレンを見据える。
堂々とした姿で、微塵も自身の敗北も想像しないような顔で、少し期待の色も忍ばせていた。
その手には剣ではなくハルバードが握られており、軽々とその肩で背負っている。
その姿はある種死神のようであり、シンの視界には黒いオーラが映った。
最早観客の視線は気にはならない。
両者は挨拶も無しにゆっくりと構え、その時を待った。
「おっと!強者に挨拶はいらないってか!?なら早速始めよう!!両者見合って…」
場に警戒心…いや殺気が充満する。
場は徐々に静かになり、誰かがゴクリと喉を鳴らした。
「初めェェッッ!!!」
瞬間、砂塵を撒き散らしながら両者は飛び出した。
テレビでは捉えられなかったが、ギリギリ見える。
振り下ろされるハルバードの威力は、文字通り人を一刀両断するだろう、そうならないために刀を振るう。
振り下ろされた斧と刀は真っ向からぶつかり合い、大きな金属音と衝撃が観客を襲った。
鄒俊の間拮抗か続くが、軍配が上がったのはカレンの方だった。
勿論、斧と刀では力の出方が違う、だがそれよりももっと大きな問題があった。
ぶつかり合った瞬間にハルバードから刀、刀から掌へと流れた電気がシン達を襲ったのだ。
震える視界でカレンを見れば、彼女からビリビリと帯電する電流が迸っており、計画通りと言わんばかりににやりと口を裂かしていた。
焼けるような痛みを抑え込み、ハルバードを刀でいなす。
続け様に腹に一閃ーーー出来なかった。
紫電がカレンから爆発したかのように発射され、マトモに受けたシンの体は吹き飛ばされてしまったからだ。
更に、人体の許容量を超えた電気は体に重度の痺れを齎していた。
刀も持つ腕がビリビリと震え、目の前には無傷で、しかも紫電を纏わせているカレン。
瞬く間に劣勢。
シンは生身では無理と判断し、試合早々に躊躇いなくヴェノムを纏った。
「まだまだこっからだぞ…てめぇ…!」
「フン…やって見ろ」
まだ試合は始まったばかりだ。
スペシャルゲスト、野獣先輩。
こんなに短いのはネルギガンテみたいな名前をしたゲームや東方異形郷が面白すぎるから、だから私は悪くない。
み、皆さんすみませんなのぜ!奴隷には後でみっちりと調教も施しておくから許してくださいななぜ!
あ、あとPOOTOさん、何者かの人、☆10、☆8評価ありがとうなのぜ!
☆8の人については、なんか調べても名前が出て来ないから判明したら書いておくのぜ。
登場人物紹介っている?
-
やってくれ 必要だろ(いる)
-
それは雑魚の思考だ(いらない)