東方異形郷面白いよ!ゾンビパニ…先がわからない展開でドキドキするよ!
だから皆も、見ようなのぜ!
ヴェノムを纏うのはアース戦以来だが、早々にここまで追い詰められてしまっては仕方が無い。
体に宿る万能感と高揚が胸から溢れ、声高らかに叫んだ。
「オオオオォォォォォォオオオ!!!!」
「…いいぞッ、そう来なくてはッ!」
カレンは一息でシン達との距離を詰め、紫電迸るハルバードを振るった。
彼女の体躯と不釣り合いな斧が空気を裂く、その行き先は首。
避けることはせず、衝撃もろともハルバードの刃を両腕で受け止め、驚いた表情をした彼女の顔を殴り付けてやった。
嫌な音が響き渡り、すぐさまハルバードを地面に突き立てて衝撃を逃す幼女を横目に、シン達は拳を握り締める。
全く問題ない、多少痺れているが紫電程度では気にはならない。
「おぉっとッ!?膂力はシンが完全に上かッ!?」
司会者が叫ぶ。
勝利の糸口が見え、シン達の顔が凶悪に綻ぶ。
「馬鹿にしやがって…私の
シンの顔の歪みを嘲笑と勘違いしたのか、カレンは瞳孔を開けながらハルバードを地に下ろし、掌をシン達に向けた。
まるで何かを発射するかのように。
シンは嫌な予感という名の身震いがし、咄嗟に真横に飛び出した。
「ロウ・レビニングッ!!」
「ごッ!?」
言霊に込められた力は小さな雷。
蒼き雷電は観客からは捉えられないほど小さく、されど雷電のスピードでシン達の胸を穿った。
先の紫電とは比べ物にならない電力が体を駆け巡り、体がビクンと硬直した。
その隙を見逃す彼女では無い、ハルバードにバチバチと音が聞こえる程電気を流し込み、あわや周りに放電しようと言うところでハルバードを思い切り振るい、刃と化した雷を打ち出した。
バチバチと音を立てながら放出された雷の刃は観客の目に捉えられる程の速度だったが、硬直したシンには避けられず、胴体を通り抜けるようにして貫かれた。
ハタから見てば胴を一刀両断されたように見えただろう、あちこちから悲鳴が上がる。
シンは内臓と肉をシェイクされたかのような激痛に身を引き攣らせ、膝を突かぬように踏ん張りながらカレンを睨んだ。
隙を与えないため、痛みが引かない内に突撃し、拳を振るう。
的確に急所を狙った連撃が繰り広げられるが、カレンはその身の小ささを生かし、ひょいひょいと避けていった。
殴打、脚撃、刺突、薙ぎ払い、その全てが悉く外れる。
瞬間、観客には聞こえない声で、カレンがシン達を見据え———
「…っふん」
見下して、ニヤリと笑って、鼻息一つ。
シン達ヴェノムを、鼻で笑ったのだ。
ブチリ、堪忍袋の緒が頭の中で音を立てて切れ、強引に踵落としを彼女の脳天向けて放つ、が、それすらも紙一重で避けられ、慣性のままヴェノムの一撃がフィールドを蜘蛛の巣状に叩き割った。
「ハァッッ!!」
「ごはぁッ!」
高々と打ち上げられたカレンは放物線を描いて墜落ーーーしない。
打ち上げられた体勢のまま彼女は静止し、体から雷電を溢れ出させた。
ゆっくりと体制を直し、見せびらかすように手を広げた。
「ごほっ…どうだ…!この力ッ!羨ましいだろうッ!そうだろうッ!?」
「ケッ…浮遊か、厄介な」
「跳んで当てればいいさ 」
「カレンの体が宙に浮いているッ!?これは電磁力という物だろうかッ!?」
司会者の言う通り電磁力の類いだろうか、絶えず体から紫電を放つカレンは更にハルバードを手放した。
手放されたハルバードはまるで意志を持つかのようにフヨフヨと浮かんでいる。
カレンとハルバードとの間にパスのように紫電が繋がっている、恐らくあれも電磁力なのだろう、便利な物だ、電気とは。
会場はカレンに釘付けであり、本人は視線が心地よいと言ったばかりに口をにやけさせる。
「どうだ?誰もお前に注目しない!皆が私を見てくれているッ!見てくれているか母上ッ!私はこんなに視線を集めれているぞッ!!」
「…そうか、お前、頭大丈夫か?」
「なんだと…ッ!?貴様…ッ!?」
虚空に視線をやっていたカレンはギロリと目を向けた。
その顔には多くの苛立ちが表されており、まるでスイーツの時間を邪魔された子供のようだった。
「今は俺との勝負の時間だ、他人の視線より俺に集中しろ」
「…貴様ァッ…!!」
少女は母親を夢想した。
頭を撫でてくれたお母さん。
一緒に寝てくれたお母さん。
妹を大量の汗と苦悶に塗れた表情の中産んだ母さん。
妹に構う母さん。
私を興味なさげに見る母さん。
呼び込めても答えなかった母上。
私に愛を注いでくれない母上。
母上、母上、母上ーーー私を、見て。
「母上はッ!私の母上は!きっと見てくれるッ!貴様ら雑魚なんか要らないんだよッ!!」
「マザコンかよ…いいぜ、そんなに視線に飢えてるなら、今だけは俺が、お前だけを見て…やる、よォッ!!」
シンはヒビ割れた地面を踏み砕き、一瞬でカレンの目の前まで跳ぶ。
あまりにも唐突な攻撃だったからか、カレンの目は見開かれ、瞳には拳を振るったシンの姿が丸々と映った。
「…ッ!!」
「あがぁッ!?!」
ハッと正気を取り戻したカレンの雷撃でシンは再び地面に強制送還されたが、彼女はひどく動揺したように叫んだ。
「貴様が母上の代わりにでもなると思ったかッ!?薄汚い化け物がッ!そんなに私を見たいならば、その目を焼き切ってやるよッ!!」
「やれるモンなら…やって見ろ…ッ!!」
カレンは焦った顔で両手をシン達に向け、更に目標補足といったようにハルバードの切っ先を向けた。
ハルバードが恐ろしい速度で打ち出され、カレンが叫ぶ。
「
何十のも雷の柱が絶えず打ち出され、ハルバードが回転しながら風を切って牙を剥く。
それはまさに雷の雨であり、逃げ場も少なく感じる。
シン達は走り回ることで雷の柱を避け、ハルバードをはたき落とすように迎撃した。
打ち出された雷の柱は地面に突き刺さると共に霧散し、大地に溶け込んでいく。
耐えず追ってきたハルバードは、次第に動きが雑になり、遂にはブンブンと振り回されるだけの鈍器となった。
ハイ・トルメンタとやらの制御で一杯一杯なのだろう。
焦りが冷や汗となってカレンの顔から零れ落ちる。
これを好機と見たシンは、振り回されるハルバードと柄を掴み、砲弾投の要領でカレンに投げ返してやった.
質量を持ったハルバードを電磁力で受け止めるには無理があるらしく、雷の柱を全力で打つことで相殺していた。
シン達は空へ跳び出し、腕をハンマーに変化させ、振りかぶる。
ハルバードと処理で手一杯のカレンは絶望したかの様な表情でこちらを見て、せめてもと言わんばかりに細い片腕を防御に出した。
勿論受け止めることなど出来ず、骨の粉砕音と共に地面に叩き落とされた。
ハルバードが回転しながらこちらに向かって来るが、勢いも落ちたその武器を手に取ることは簡単で、着地時の衝撃で斧部分を粉砕して無惨に投げ捨てた。
「さぁ、どうする?降参か?戦うか?」
「まだ…私は…やれる…人々が、母上が私を…ッ」
「まだそんなモンに縋ってんのか?少なくとも俺達がお前に釘付けだってのに… 」
ぐにゃぐにゃな右腕を押さえ、フラフラと立ち上がっていったカレンに、シンはそう答えた。
すると、彼女は俯いた顔のままシンに尋ねた。
「貴様は…私を見ているのか…?」
「じゃなきゃ負けてるな」
「〜〜〜ッ!!」
真っ直ぐにカレンを見て言う。
よく見れば彼女はガタガタと震えているようだ。
奇しくもそれは感動に打ち震えているのでは無く、怒りに身を悶えさせているようだ。
「ふざけるなァッ!!私を真っ直ぐ見てくれる奴なんていないッ!!居なかったんだッ!!」
涙を流してカレンは腕を振るい、雷撃を行った。
しかし、その雷撃は紫電でも、蒼くも、黄色くも無い…漆黒だった。
「霊力全開ッ!!フォールンサンダーッ!!!」
轟音を立てながら蛇行して迫る黒雷は、まさに疾風迅雷であり、反応する前に胸を穿たれた。
観客は何が起こったのかすら分からず、いきなり胸に傷を負ったシンにポカンとしている。
「ごぶっ!?」
普通の電気と違って、穿たれた部分は焼け爛れ、断続的な痛みに襲われていた。
更に電熱…熱である。
胸が再生されず、黒き鎧が剥がれて皮膚が露わになっている。
「なんだ今のはッ!?一瞬過ぎて捉えられなかったぞッ!?」
(治せるか!?)
< 無理だっ!熱がある内は触ることすら出来ねぇ! >
思案している間にも黒雷は放たれ、なんとか勘で避けることが出来た。
肩で息をしながら、カレンは言う。
「霊力を纏った黒雷…当たれば三十分は激痛だ…!」
「ああそうかいッ!」
簡単に情報を教えてくれる、それ程この技に自信を持っているのだろう。
更に攻撃の間隔を狭め、まるで黒い雨のようにシン達に降り注いだ。
シンは円を描くように走って避け、避けれない黒雷は地面の瓦礫を投げ付けるようにして防御した。
それでも威力が凄まじく、瓦礫から漏れ出た黒雷によってヴェノムに覆われた体の隅々が露わになっていった。
近づかば近づく程黒雷の威力は増し、回避も防御も難しくなる。
(近づけない…どうするヴェノムッ!?)
<……飛び道具だ!地面の瓦礫を使えッ!! >
(成程なッ!)
苛烈さを増す弾幕を抜け、隙を見て体一つ分のぐらいの、岩とも呼べる瓦礫を投げ付ける。
何十キロもあるだろうと言うのに、豪速球のような速度で飛来する弾丸は黒雷を受けて粉々に破砕された。
それだけでは飽き足らず、口を開けた竜の竜のような黒雷に大きく濁った白目を穿たれ、脳へ直接ダメージを与えられたと同時に顔半分がヴェノムから引き剥がされる。
「ぐぁあッッ!?!」
<ぐぅぅうッ!? >
シンは顔半分を抑えて絶叫し、ヴェノムは体を猫の毛が逆立つかのように体を震わせている。
更に立ち止まってしまったことで、無数の黒雷に貫かれ、手足にそれぞれ一発、胴体に二発、計六発喰らってしまった。
体が熱く、視界がチカチカと点滅する。
体は思ったように動かず、絶えずビクビクと震え、膝を着いた。
ヴェノムは既に体から剥がれ、内に入ってしまった。
顔を無理矢理上げると、粉砕された腕をダランと下ろし、脂汗を垂らしたカレンの姿があった。
「ぜぇ…ぜぇ…どうだ?動けねぇだろ…最後にありったけをくれてやる…ッ!!」
カレンはおもむろに
不味い、不味すぎる、ヴェノムも無い、マトモに避けれない、死ぬ。
本当に死ぬ。
思案している間にもカレンの掌には黒い光が光が溢れ、バチバチと放電し始め、カレンのあどけない顔を黒く照らした。
(不味いッ!不味い不味い不味いぃッ!!)
< シンッ!来るぞッ!! >
露わとなった半分の顔を焦りで歪ませ、痺れて動かない膝に鞭を打つ。
それで動くはずも無く、遂にカレンの
「
瞬間、爆音と共に会場は黒き光で満たされた。
誰もが黒い光に飲み込まれ、辺りを視認出来なくなる。
しかし、雷のバチバチとした轟音と衝撃が、その攻撃の苛烈さを物語っていた。
カレンによって放たれたのは雷のエネルギー砲。
しかし、霊力という不純物が混ざり、より強く、更に色が黒へと逆転したものだが。
シンはその破壊のエネルギーに包まれ、形容し難い痛みに襲われていた。
「お" お お"おぉ お"お"ッ!!!!」
くぐもった絶叫を黒い光の中で上げるシンは、ただその足を前に進めていた。
適応の力で痺れに適応し、焼ける様な痛みと全身を駆け巡る痛みの両方に耐えながら、一歩、また一歩と足を進める。
「くっ はっ は ははぁ あ"あ" あ"ああ"ッッ!」
暴力的なエネルギーの中でシンはただひたすらに笑う。
大口を開けて、面白くて堪らないと言うように。
「これ" こそ がぁ"ッ!!俺" の 求"め る" ッ!!命を" 賭 けた" 勝"負" だぁッ!!」
笑い声は雷の怒号に掻き消され、内臓が焼き切れているのか口からゴポリと血が噴き出る。
次第に火傷と雷の苦しみも気にならなくなり、遂にカレンの目の前まで漕ぎ着けた。
恐らく姿は見えていないだろうが。
雷のエネルギー砲を突き破るかの様に腕を突き出し、カレンの細い腕を掴む。
向こうから見れば、必殺の一撃の中から敵の腕が這い出て、自身の腕を掴まれる、恐らく驚きと絶望が溢れ出るだろう。
次第に黒き光の束は細くなり、やがて消えて無くなった。
どうやら電池切れ、といったところか。
「畜生…ッ!畜生ぉぉおお…ッ!」
力も抜けたのか、ヘタリと座り込み、殺意を持った視線でこちらを睨みつけてきた。
電気によって震えることも無くなった指をカレンの額に近付けて、シンは言う。
「…ハァ…やっと俺を見たか?この承認欲求野郎」
そう吐き捨てて思い切りデコピンした。
人外の力から繰り出されたデコピンは容易にカレンの意識を奪い、カレンはドサリと仰向けに倒れた。
「決まったぁぁッ!苛烈に続いたこの試合ッ!遂に決着ッ!!勝者ッ!!シン〜〜〜〜ッッ!!!!」
歓声が爆発し、疲れ果てたシンの体に次は爆音波が耳を襲う。
シンはテレビからこの試合を見ている依姫に地獄の業火の如き闘志を燃やし、歓声を背に会場を去った。
ご拝読、ありがとうなのぜ!
神無月真治さん、隼型一等水雷艇 隼さん、☆9×2評価ありがとうなのぜ!
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やってくれ 必要だろ(いる)
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それは雑魚の思考だ(いらない)