東方修羅道   作:おんせんまんじう

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ゆっくりしていってね!


第二十一話 軍来祭 最後の激突

 ゆっくりと会場まで歩くシン達はただ昔を思い返していた。

 瞼の裏に敗北の日々が浮かぶ。

 

 最初の因縁、二度目の敗北、霊力の差、全力のぶつかり合い。

 彼女との試合では、ついぞ勝つことは無かった。

 

 依姫に勝てる要素があるとすれば、執念と根性。

 地獄の外周マラソンでもそれのお陰で勝利することが出来た。

 ならば今回をすることは変わらない。

 

 足掻いて、食らい付いて、抵抗して…依姫を超える。

 

 自然と口角が上がり、勝利への渇望とは別の期待も浮かび上がった。

 泥沼の戦闘を、血濡れた闘争を、限界を超えた勝負を、命までも賭けた究極の賭博を。

 

 心臓が待ちきれないとばかりに拍動し、体が期待をして汗ばんでいく。

 

 

 気付けば会場が目の前だった。

 シンの心持ちとは裏腹に、場は張り詰めた凪のように緊張し、石一つ投げ入れるだけで崩れるだろう。

 依姫はフィールドで背を向けて仁王立ちしており、シンにとって、それはまるで途方も無い程大きい壁に見えた。

 無論、乗り越える為の壁だが。

 

 恐らく既に休憩時間の三十分は経っているだろう、意を決してフィールドに踏み入る。

 誰かの息を飲む音が鮮明に聞こえ、整備された石の地面を踏む音だけが響く。

 

 依姫の背景となる満月は天の真ん中へ差し掛かっており、彩るように星が爛々と光っていた。

 

「……来ましたね」

「…おう…宿敵(依姫)、来たぞ」

 

 緩やかに振り返った依姫の顔は、凛としており、覚悟が決まった顔をしていた。

 振り向きながら、奇しくも同じ武器である刀を抜刀する姿は美しく、様になっていた。

 シンは程良い距離を保って、依姫を見据える。

 

 そこで痺れを切らした司会者が叫んだ。 

 

「遂に始まる決勝戦ッ!ライバル(最強)ライバル(最狂)の巡り合わせッ!何の因果なのだろうかッ!!シンは依姫を超えるのかッ!?果たして依姫が捩じ伏せるのかッ!?そしてぇッ!軍来祭最強が決まるこの試合ッ!!決して見逃すなッッ!!!それではぁッ!!開幕だぁぁあああああッッッ!!」

 

 場の凪は崩れ、嵐のような感性が爆発した。

 

 だが、歓声は直ぐに止んでしまう。

 二人とも構えたまま全く動かないのだ、試合のコングはなったと言うのに。

 

 次第に騒めく観客達。

 何故動かないんだ?始まっているよな?そんな声が場を満たした。

 二人は隙を探しているが、全く見つからない、故に二人は沈黙を貫いていた。

 

 数分にも及ぶ沈黙、得た物は無く、集中力が次第に欠けていく。

 痺れを切らしたシンが地面を踏み砕いて切り掛かった。

 

 何者も見切ることの出来ない刹那の一撃、脇腹から切り上げるように放たれたその技は命中すること無く、依姫がバックステップをすることで回避された。

 彼女は着地後、一瞬で地を蹴り、カウンターとしての一撃を首に振るった。

 それを刀を首と依姫の刀の間に差し込み、防御する。

 

 ここまでは日々の試合で幾度も繰り広げられた光景であり、いつもの勝負との変わりなさがどこか可笑しく、両者はニヤリと笑った。

 剣戟は激しさが高まり、刀が合わさる程に速度は増し、響かせる重低音もより大きくなっていく。

 音速へ近づく刀同士は、より疾くなり、最早観客や司会者には捉えられないものと化していく。

 

 しかし、ほんの一瞬の間に行われた剣戟は唐突に終わりを告げた。

 

「ハッッ!!!」

「…ッ!?」

 

 シンの短く発せられた声と共に依姫は吹き飛ばされ、剣戟は一時中断となった。

 

「もっとギアを上げるぞッ!!」

「…いいでしょう…ッ!!」

 

 方や咆哮を上げ、体をより黒く、より堅牢な肉体へ変化し、方やオーラのような覇気を噴き出して力を誇示するかのように刀を振るった。

 

いくぞぉぉオオオ"オ"ッッ!!依姫ぇぇええエエ"エ"ッッ!!

 

 目にも止まらぬ速度で地面を踏み砕くシン達。

 対して依姫は距離を保ちながら霊力弾を幾多も放ち、牽制を行う。

 

 だが…

 

効くかッ!!こんなものッ!!

 

 シン達は被弾しながらも、獣のような四足歩行でフィールドを駆け回り、確実に距離を詰める。

 流石の依姫も不味いと思ったのか、霊力弾の発射から真っ向戦闘にスタンスを変えた。

 

 互いに疾走して接近する両者、豪風を伴って放たれた一撃をシンはーーー

 

 マトモに受けることはせず、足で地面を思い切り踏み砕き、衝撃で捲れた石を壁を依姫の目の前に現させた。

 更にその壁を音速を超える程の力で放たれた拳で砕き、石弾…いや、岩雪崩を実現させた。

 

 これには依姫も攻撃を防御に転じ、一瞬で岩雪崩を粉々にした。

 しかし、一瞬でもシン達に時間を与えて仕舞えば、それは敗因となる。

 

 一瞬を利用して行ったのは腕の武器化、それもメイスやアックスなどでは無く、異常に長い鞭であった。

 しかし、それは本来の使い方で利用されず、手頃な大きなの岩に巻き付け、スイングする、まるでモーニングスターのような攻撃だった。

 

 しかし、紐部分である腕の長さがモーニングスターのそれと比較にならず、軽く音速を超えた一撃を岩雪崩を凌いだ依姫にお見舞いした。

 

 轟音と砂煙が舞い、観客の誰もが、やったか!?と言う感情を抱いた。

 

 しかし、砂煙を突き抜けるように依姫が現れ、その勢いでシン達の全身を撫でるように刀を走らせた。

 ボギボギと通常では起こり得ない異音が響く。

 

グォッッ!?

「ふぅッ、今のは、ふぅッ、効きましたよッ…」

 

 見れば依姫の頭が出血しており、先の岩石スイングが余程答えたようだ。

 しかし、その代償は大きく、シンは内臓の重いダメージと、手足の様々な場所が粉砕させた。

 後者は一瞬で治ったが。

 

 反撃の暇を与えない為に依姫の連撃も、シン達から見れば見慣れたもので、三十発程受けた時点で見切り、頭が狙われた一撃を掴んで止めて見せた。

 

 同時に刀をバラバラに握り潰し、依姫の腹にヤクザキック。

 依姫は身体をくの字に曲げて、水切りのようにバウンドしながら壁まで吹き飛ばされた。

 

 轟音を立てて壁に激突する依姫、体が壁にめりこみ、気絶したかのように頭を項垂れさせた。

 ここで司会者が我に返ったかのように言う。

 

「はっ!?余りの激闘に実況も忘れてしまった!依姫吹き飛ばされたッ!しかも反応が無いッ!?これは勝者が決ま…」

 

 言い終わる前に依姫を地点に爆炎が立ち上った。

 かなりの距離だと言うのに余りの熱量と熱気に思わず、怯む。

 

そうこなくてはな…ッ!!こっからが本当の戦いだッッ!!!

 

 爆炎が鎮まり、炭と化した壁を背に()()の依姫が現れた。

 髪を揺らめかせ、そんじょそこらの妖怪よりも強い覇気を伴った依姫は言った。

 

「その通りです…決着を着けましょう…ッ!」

 

 あの激闘から更に火力が上がり、激しさと荒々しさを増した依姫の能力。

 ヴェノムの中のシンは密かに冷や汗をかいた。

 




ご拝読、ありがとうございますなのぜ。
少ないのは許してくれなのぜ、一日空けて依姫戦全て書こうとしたけど毎日投稿できなくなるから嫌だ、と、奴隷は言ってたのぜ、酷い奴なのぜ!
そして、eruruさん、釜揚げしらすさん、からすそさん、アンパンの山崎さん、ギャラクシーさん、sari★L さん、りんごおぉんさん、☆10×2、☆9×5評価、そして、りんごおぉんさん、誤字報告ありがとうなのぜ!

登場人物紹介っている?

  • やってくれ 必要だろ(いる)
  • それは雑魚の思考だ(いらない)
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