東方修羅道   作:おんせんまんじう

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今宵、決着。
ゆっくりしてね!


第二十二話 軍来祭 最強と最狂

 空気が震え、小石が怯えるように揺れる。

 圧倒的なまでの暴力的なエネルギーに満ちた依姫。

 

 その一挙一動を見逃さんとシンは依姫を睨み付ける、が。

 

 瞬間、依姫の姿は残像を残して消え果てた。

 突如に身を襲う体の芯まで轟く衝撃。

 

 後頭部、顎、人中、喉仏、胸、鳩尾、金的、両腕、両足。

 体の急所と言う急所を全て穿たれ、視界が真っ白に、真っ黒にと、意識の境界を反復横跳びし、気付けば地面が目の前にあった。

 

 倒れている…ッ!?そう気付き、即座に飛び上がる。

 

 何分眠っていた?何秒意識を失っていた?

 

 鉛のように重くなった体の隅々から冷や汗が飛び出し、久しく忘れていた危機感が顔を覗かせる。

 はっと、勝負が始まってから依姫の能力を過小評価していたことを今になって気付き、今までに無い程の注意が思考を占拠した。

 

「今の攻撃でも、一瞬で立ち上がりますか…」

全く効いてねぇよッ!!

 

 勿論ハッタリである。

 今でも体の芯が震え、視界がチカチカと光っている。

 

 今の言葉を聞いた依姫は、今日二度目の神降ろしを実行した。

 

「祇園様の力ッ!」

 

 刀を地面に突き刺して能力を発動した依姫。

 シンの足元から歯の潰された刀の檻が飛び出し、牢獄のようにシンを閉じ込めた。

 

 ひと昔に全力で戦った時には木刀の檻を粉砕し、代償として木刀の津波がシンに押し寄せていた。

 つまりここで取るべき行動はジッと固まることである。

 依姫は刀を地面に突き刺している為動けず、シン達も動かない。

 

 場は膠着状態となった。

 

 しかしその均衡も儚く崩れ落ちる。

 

 依姫がおもむろに刀から手を離し、掌をシン達に向ける。

 

 観客のほぼ全て、そしてシンはその行動に疑問を抱くが、その疑問もすぐに解消されることになる。

 

「祇園様の…暴風ッ!!」

 

 竜巻のような乱気流を前方…つまりシン達に向けて放たれた。

 轟々と音を立てて迫る風の渦を喰らったら、 その衝撃で吹き飛ぶか体をズタズタにされるだろう。

 

 大方、刀の檻を破壊させて罠を作動させる気だ。

 しかし、その対抗策も存在せず、仕方なくシン達は檻を破砕し、真上に跳び出した。

 

 風の渦はシン達がいた場所を通り抜け、刀の檻をついでにバラバラに砕いてフィールドの壁に衝突する。

 壁を引き裂く音が響く、しかしシン達にそれを確認する余裕は無く、この後の処理について焦りながら考えていた。

 

 無常にもゴポゴポと泡のように地面から姿を現す刀の群れ。

 シン達が地面に着地する頃には、膨大な魚群となってシン達を飲み込んだ。

 

 刀の群れははシン達を飲み込みながら、鱗へ、牙へ、腕へと姿を変えていき、刀の放出が終わった頃には東洋の巨大な龍と化していく。

 満月をバックに刀で造られた龍が廻り、地上へゆっくりと、荘厳に降りて行った。

 

 用済みと言わんばかりにペッと刀龍の口から吐き出されるシン達。

 ピクピク震えるその体はあちこちが曲がっており、いかにも痛々しい。

 それでも一瞬で治るのはヴェノムがいる賜物だろう。

 

 シンは幽鬼のように立ち上がるが、白い瞳の奥で闘志を燃やしている。

 刀龍の大きさは目測で二十メートル程。

 

 眼球の無い顔からは厳格さが滲み出ており、いつの間にか依姫が刀龍の頭の上に立っていた。

 

「どうですかッ!?私の能力はッ!?あれから特訓したんですよ!」

 

 吠える依姫に呼応するかのように刀龍が口腔を開けて咆哮し、シン達に向けて突進した。

 

 突進と言っても、何千もの刀の質量を伴った隕石のようなもの。

 刀同士をガシャガシャと響かせ合いながらシン達は刀龍に轢かれた。

 

 ズドン、まるでダンプカーが衝突したかのような轟音と共にシン達は吹き飛ばされるが、それしきの攻撃だけで倒れる程シンもヤワでは無い。

 

 衝撃を逃してシン達は跳び、過ぎ去っていく刀龍の末尾に掌底を叩き込んだ。

 案外防御力はそこまでなようで、バキバキと崩れる尻尾は空中分解し、刀となって消滅していく。

 

 更にシン達は腕を鞭のようにしならせ、頑強な刀の鱗に引っ掛ける。

 高速で動く刀龍にグンッと体を引っ張られ、腕が千切れそうになるが我慢し、難無く刀龍の背中へ着地した。

 

 尻尾からジワジワと破壊していこうと考えるシンだったが、それも無駄に終わってしまう。

 

 自身を覆う影、背筋をゾクリとしたモノが走り、振り返ればーーー

 

 大口を開ける刀龍と、してやったり顔の依姫が、そこにいた。

 シンは円を描くように刀龍が飛行したのだろうと考えたが、次の瞬間には刀龍に奴の尻尾ごと食われてしまった。

 

 飲み込まれた先は胃などでは無く、刀が蠢く狭い空間。

 まるで食物を運ぶ柔毛のようにシン達の体を叩き、突き、斬る。

 

 激痛を感じながらも周りの刀を粉砕し、弱点を考える。

 

 しかし、今のシンの力量ではマトモな作戦が思い付かない、あるとするならば、衝撃を全体に行き渡らせて破壊する方法。

 それも余りに非現実的な方法で、出来る訳がーーー

 

…いや、出来る

「…ッ!?本当かッ!?」

 

 狭い空間で迫る刀を凌ぎながら、シンはヴェノムに問う。

 

「簡単だ、コイツの突進と合わせて思い切りハンマーを振るう、簡単だろう?」

「無理だッ!そんな都合のいい状況作れない…何より、今の俺達じゃコイツを破砕することは出来ないッ!」

 

 何十、何百と言う刀を砕いたからか、迫り来る刀は徐々に少なくなっているように感じた。

 

だから今こうして内側から攻めているんだろう?中から砕いていけば外からの粉砕も容易になる筈だ…!

「確かにそうだが…」

奴の攻撃は見たところ突進と今喰らってる飲み込みだけだ!それにお前が迷っていてもこれしか選択肢は無い!さっさと行くぞッ!

「…それもそうだ…なぁッ!!!」

 

 触手のように迫る刀を殴り折って粉砕し、更に刀の蠢く深部へ身を投じた。

 

 一方その頃、依姫からは、一分立っても出てこないシン達にざわめきが起こっていた。

 それは依姫も例外では無く、刀龍の頭の上で考え込んでいる。

 

「この子に飲まれたら適度に痛めつけられて吐き出される筈…なのになんで出てこな…」

 

 誰にも聞き取れない呟きは背後からの轟音によって掻き消される。

 何事かと後ろを見れば刀龍の末端からシン達が飛び出していた。

 刀龍の尻尾を突き破って出てきたシン達はあいも変わらず真っ黒で、少し疲労しているように見えた。

 

 しかし、飛行能力を持たないシン達がそれ以上攻撃を加えることは出来ず、迫り来る鋼鉄の尻尾を避けることは出来ず、ハエ叩きで叩かれた虫のように地面に爆音と共に墜落した。

 

 砂煙が舞い、トドメを刺すためにフィールドごと喰い千切らんと刀龍を飛び出させる依姫。

 依姫の髪は風に揺られ、そして、その顔は勝利を確信していた。

 

 刀龍と共に地面へ突っ込む依姫だが、砂塵から大砲のように飛び出したシン達と目が合った。

 

「もう遅いッ!!」

こっちのセリフだぁぁあああッ!!

 

 それなりに距離があると言うのに頭に響く大音量、その声の主であるシン達の腕はシンの背丈程の大きさのハンマーを携え、二度回転しながら振るった。

 馬鹿め、それだけでは止められない。

 

 口角が自然に上がるが、それも次の瞬間には元に戻ってしまった。

 

 ハンマーと刀龍の鼻先が衝突した瞬間、聞いたこともないような金属音がその場の全ての人物に反芻し、火花を散らしながら刀龍の顔面を破砕した。

 それだけでは収まらず、衝撃が刀龍の体の隅々に行き渡り、ヒビが全身に広がり、音を立てて崩れてしまった。

 

 刀龍を失った依姫は驚愕した顔で落下し、崩れる刀の群れを足場にしたシンにハンマーで全身を叩き付けられ、凄まじい速度で落下していった。

 

 してやったり顔のシンとは裏腹に、依姫は無防備に地面へ激突した。

 遅れて破砕した刀龍の破片が降り注ぎ、水に落ちるように地面へ消えていった。

 

 依姫はグラリと立ち上がり、ふらつきながらも距離を取ってまた神降ろしを行った。

 

火雷神(ほのいかづちのかみ)ッ!!」

 

 途端に室内だと言うのにも関わらず雨が降り、一つの雷鳴が轟いた。

 依姫の真後ろに落ちた雷はその場に残り、次第に一頭の炎の龍を形作った。

 

「さぁ、行きますよッ!!」

 

 一瞬でシンの目の前まで接近した依姫、だがその背の炎の龍は依姫の刀に宿り、有り余る焔を刀身から噴き出させた。

 瞬時にヴェノムを解除して刀で応戦するシン。

 

 圧倒的な熱気で競り合ってもいないのに皮膚が火傷する程の熱さ。

 轟々と燃える刀身はシンの刀とぶつかり合い、ほんの一瞬は渡り合ったものの、熱で服の裾が燃え尽き、一瞬で赤熱化した刀は焼き切れてシンの体を袈裟斬りに焼き切ってしまった。

 

 苦悶の声を漏らすシンに追い討ちをかけるが如く、依姫の逆袈裟が炸裂し、刀身の炎が爆発して上半身が焔に包まれた。

 服は簡単に燃え尽き、体の上半身が赤黒く火傷していく。

 

「がぁあああ"あ"あ"ッッ!?!?」

 

 目が焼かれるのを防ぐ為に目を閉じ、ただただ絶叫を上げる。

 そんなシンに依姫は容赦せず、刀を振るった回転エネルギーを利用した上段蹴りをシンの首に炸裂させた。

 

 シンは吹き飛びーーーいや。

 

 上段蹴りを首で受け止め、衝撃が首を伝って空気中に逃げていった。

 ギラリと開眼された眼は焔越しに依姫の目を射止める。

 

「捕 ま"え" た ぞ ぉオッ!!!」

 

 くぐもった声をあげて依姫の足を掴み、力任せに持ち上げ、地面に叩きつける。

 日々の修行で培った怪力は易々と依姫の体を石に沈ませ、破壊音と苦悶の声と共に何度も叩き付け、壁に投げつけた。

 

 爆音と砂塵が舞う。 

 

 焔は気が付けば鎮火しており、体にミミズが這ったような黒い痕を残していた。

 加えて体の至る所が炭化し、黒く変色している。

 

 依姫は砂塵から飛び出し、雄叫びを上げて、焔を灯した刀を上段に振り下ろした。

 刀から爆炎を噴き出し、シン達を襲う。 

 

「ハァアアアアアアアッッ!!!」

 

 が、しかし。

 シンは避けることもせずに、かと言ってそのまま炎に身を包むことも無かった。

 

 受け止めたのだ、掌で。

 

「もう慣れてんだよォおオオッッッ!!!」

 

 "適応"によって怯むことなくシンは神の業火を内包した刀を握り潰した。

 続け様に覇気が霧散した依姫に強烈なアッパーカットを繰り出す。

 痛快な音を響かせて宙を舞う依姫、追撃とばかりに依姫と同じ高さまで跳び、回転しながら踵落としを炸裂された。

 

 地面をバウンドしながら体勢を立て直す依姫は、更なる神を降ろした。

 

金山彦命(かなやまひこのかみ)ッ!!」

 

 突如に地面から砂鉄のような実体が姿を現し、依姫の手に集まったかと思うと、それは一本の刀を形作った。

 何処までも応用の効く能力、僅かに戦慄したシンは火傷のしていない下半身にヴェノムを纏わせて依姫へ走り出す。

 

 人外の膂力は一瞬で依姫とシン達との差を埋め、飛び蹴りを繰り出した。

 その脚撃が依姫の目の前に迫ったところでーーー

 

 豪炎が依姫から噴き出した。

 

愛宕(あたご)様の火ッ!!」

「ぐぉオオオオオオッッ!?!?」

 

 先の火雷神よりも強大な熱気。

 シンは避けられずに炎の渦に身を投じてしまう。

 

 神の炎と同等の温度、これでも体が灰と化さないのは火雷神によって体が慣れていたからだろうか。

 それでも熱いものは熱い。

 

 意地でフックを突き出すが、神を降ろしている依姫には全く効かなかった。

 それどころか、刀で両膝を破壊され、崩れ落ちたところに腹にめり込むほどの打撃を喰らい、炎の渦を飛び出して吹き飛ばされる。

 

「おグッ、ゲホッ!〜〜〜〜ッッ!!」

 

 内臓が数カ所潰され、血混じりの吐瀉物が胃から逆流した。

 喉から血が溢れ出し、膝を破壊された為立つことも出来ない。

 

「…くくッ、関係、無いなッ!!」

<お前のことだから深くは言えないが…死ぬなよ…!>

 

 立てないからなんだ?無理矢理立てばいい。

 内臓が潰れたからなんだ?全力はまだまだ出せる。

 

 依姫は向けた眼光はより一切強くなり、体の内に更なる力が湧き出るのを感じる。

 激痛を無視して立ち上がり、ブルブル子鹿のように足が震えるが、次第にそれも無くなった。

 

 目の前の炎の渦は収束し、依姫の刀を握る腕に押し込められている。

 刀は赤熱化を超え、白く輝いており、かなり遠くにいると言うのに熱波が体を突き抜けた。

 

 面白い。

 ヴェノムは使えない、使えるのはこの身だけ。

 

 ならばッ!

 

「お前を超えてやるよおぉおおおッ!!依姫ぇぇぇええええッ!!」

「上等ッッ!!!」

 

 飛び出したシンの拳は白く輝く刀とぶつかり合いーーー拳が粉砕された。

 まるで気にならないと言ったシンは粉砕した拳を無理矢理開いて依姫の刀を握り込んだ。

 

 シンの拳がけたたましく叫びを上げ、あっという間に骨まで焼き尽くされる。

 一つ目の拳を犠牲して得た収穫は、二秒。

 

 充分だ。

 全身に火傷を負いながら振り上げられるもう一つの拳は依姫の防御を掻い潜り、鳩尾に重い一撃を与えた。

 

「ぐぶッッ!?」

「まだだぁああアアッッッ!!!」

 

 依姫に反撃を隙を与えずにもう一撃、更に一撃、もっと、もっと、もっとッ!!

 

 片腕だけの連撃はいつしか依姫に受け止められ、炎と共に拳を握り潰された。

 

 まだだッ!!

 腕が無くても足があるッ!!

 

「オォォォオオオオオオオッッッッッ!!!」

 

 間違い無く渾身の一撃の脚撃を依姫の鳩尾に一発入れるが、お返しとばかりに刀が膝に突き刺さる。

 瞬時に片足が中から炭となるが、構わずにもう片方で脚撃を顔に入れた。

 

 しかし、穴の空いた足では軸になり得ず、蹴りを放った瞬間に崩れ落ちてしまった。

 依姫は仰け反った状態で顔が見えないが恐らく勝ちを確信しているだろう。

 

 両腕は使えない、片足に穴が空いてまるで立てない。

 敗北…また敗北するのか?

 

 否ッ!!今度こそ勝つ!勝つッ!!

 生涯の宿敵を今ッ!ここでッ!討つッ!!

 

 執念を通り越した想いで立ち上がり、最早拳とも言えない腕で依姫と渡り合った。

 熱によって炭化した肉の破片がボトボトと落ち、蒸発していく。

 

 まだ戦える、闘えるッ!!

 

 骨まで見える足を振るい、半ば炭と言っていい腕を振るうシン。

 その姿は決して無駄ではなく、確実に依姫の体力を削っていく。

 

「まだッ!!いけるッ!!」

「オォォォオオオオオオオッッッッ!!!」

 

 彼女もまた限界は超えていた。

 それでも諦めないのはまさに意地。

 

 一分、二分、と時が流れるが、両者はずっと打ち合っており、これ以上は命も危ない領域に達していた。

 

「これ以上はどちらかが死ぬッ!!救急班!彼らを止めてく…」

「よせ」

 

 慌てる司会者に月読命が一瞥すらせずに言った。

 その顔は昂揚しており、狂気すらも感じた。

 

「月読命様ッ!?ですがッ!!」

「彼らは命すらも賭けているッ!それを止めるのは無粋だッ!!…それにもうすぐこの均衡も崩れる」

 

 死闘を愉しむ月読命は子供のように、無邪気に笑う。

 月読命の言葉通り、勝負は佳境が終わろうとしていた。

 

「…ッ!?」

「貰ったぁああアアああッッッ!!」

 

 遂に拳すらも無くなった腕は依姫の刀を弾き、天に光の刃が舞った。

 仰反る依姫を穿たんと、最大最高を振り絞って正拳突きを繰り出した。

 

 当たれば必ず意識を奪い取るッ!

 

「終わりだぁあアアアアああッッッッ!!!!」

 

 依姫の瞳孔が小さくなりーーー覚悟を決めたように瞳が光った。

 

天宇受売命(アマノウヅメ)ッ!!」

 

 この瞬間、依姫は一瞬とは言え、二柱の神をその身に降ろすことに成功した。

 仰反った体勢から踊るように拳を回避し、跳び上がる。

 

 しかし、この瞬間には既に軻遇突智(カグヅチ)も天宇受売命も解除され、生身での振り下ろしだったが、止めの一撃としては上出来だ。

 

 シンは無防備な背中を依姫に晒している。

 

 負ける…負けるッ!負けるッッッ!!!

 何か手は無いかッ!?何かッ!?

 

<俺が居るのを忘れていたろ?>

 

 背後で金属音が響いた。

 振り返ると、ヴェノムがこちらに顔を向けて笑い、依姫の攻撃を受け止めていた。

 

「お前って奴は!!」

お互い様だッ!行くぞッ!

 

 依姫はヴェノムに弾かれるが、すぐに体勢を立て直し、全力の一撃を放った。

 ヴェノムは奇跡的に熱の無い右腕に纏わりつき、治療そっちのけで依姫に応戦する。

 

 轟音。

 依姫の想いを乗せた刀は神に届き得る威力であり。

 シンとヴェノムの執念のこもった拳は大地すらを粉砕する一撃だった。

 

 両者はの想い(一撃)は拮抗し、体力的に余力のある依姫が優勢に見えた。

 

 だが…だがッ!

 振るう拳が無くても、踏ん張る足が使えなくても、今日この日の為に俺達はッッ!!!!

 

「オォォォオおおオオオおおおオッッッ!!!!!!」

「ハァァァアアアああああアあああアッッッ!!!!!!」

 

 バキン。

 依姫の、刀が、折れた。

 

「ッッッッ!!!」

「終わりだぁぁぁあああああッッッ!!!!」

 

 放たれた俺達の拳は依姫を穿った。

 会場から音が消え、バキリと肉肉しい音だけが反響する。

 

 依姫は一瞬立ち止まって見せ、闘気の籠った瞳でこちらを見据えーーーグルリと目を反転させて倒れ伏した。

 

 つまり…つまりッッッ!!

 

「…勝っったぁあああああッッッ!!!」

<いよっしゃあぁァァア!!!!>

 

 ヴェノムを纏った右腕を掲げて咆哮する。

 その姿を見た観客は、今まで黙っていたのが嘘のように熱狂し、今日一番の大盛り上がりを示した。

 

 司会者も涙を流しながらシン達を褒め称えた。

 

「…遂にッ!死闘の末にッ!!シンが勝利ぃいいいッッッ!!二人の因縁に決着ッ!多いことは言わないッ!皆ッ!コイツらに拍手をッッ!!」

 

 嵐のように耳をつんざく拍手。

 

 シンはそれを聞き、膝から崩れ落ちた。

 当たり前の話である。

 上半身が重度の火傷、両手首破損、片足に穴、全身骨折。

 

 今まで闘えたのが奇跡だった。

 

 シンは満足感と共に静かに意識を落とした。




ご拝読ありがとうなのぜ。
依姫はシンの全力に応える為、彼女もまた全力で挑んだのぜ。
彼の命が尽きようと、力を抜くことは彼への最大の侮辱。
だからこそ彼女は残酷にシンと戦ったのぜ、深いのぜ。
そして天道詩音さん、☆6評価、ありがとうなのぜ!

登場人物紹介っている?

  • やってくれ 必要だろ(いる)
  • それは雑魚の思考だ(いらない)
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