東方修羅道   作:おんせんまんじう

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ゆゆゆっくりしてね!


第二十八話 八方塞がり

「…!シンさんシンさん!何があったんですか!?シンさん!」

 

 意識の泥沼の底の底。

 そんな状態の男を抱き、呼び止めている女の姿があった。、

 勿論依姫だ。

 

 そして、男は肌に感じる早朝の細やかな冷気とコンクリートの冷感、騒がしく足音を立てる人々のハーモニーを何を考えるでもなく聞き入っていた。

 

 …否。

 ただ頭に靄がかかっていたように、騒音を受け止めているだけである。

 

 彼は様々な音をBGMにして、何があったのか想起しようとする。

 しかしながら、脳は微睡みから覚めず、痺れるような電気信号を体に送るばかりだった。

 

 だが。

 男はこの痺れには身に覚えがあった。

 少しずつ蘇ってきた記憶…その記憶は更に小さな少女を形作り、完全に身体を覚醒させた。

 

 突如として蘇る激闘。

 

「ッカレンはッ!?」

 

 彼、シンは頭を駆け巡る記憶をアラームにして飛び起きた。

 同時に忙しなく周りを見返し、大勢の人々がひび割れた道路を行ったり来たりしていることにようやく自身の置かれた状況を理解した。

 

「〜〜ックソッ!!」

<…気にするな、少なくもお前のせいじゃない>

 

 彼は顔を般若のように顰め、行き場のない怒りを言葉にして表した。

 それは敗北した自身に対してか、覚悟を決めたと誓った筈が、最後の最後に情を捨てきれなかった苛立ちからか。

 何にせよ気分は最低中の最低だった。

 

 更に反芻する疑問。

 何故ああなったのか、何が起きたのか、何故あの場に居たのか、大妖怪はどうしたのか、何故、何故、何故。

 

 だからだろうか。

 彼は自身を呼びかける声に何一つ気付かなかった。

 

聞いているんですかっ!?シンさんっっ!!

「っなんだ!?…依姫か?悪い、考え事をしているから後に…」

「だから何があったんですかっ!?」

 

 依姫の顔を見ず、俯きながら答えるシンだったがー恐らく何度も無視されて飽き飽きしていたのだろうーかなり怒気を強めて依姫が叫んた。

 シンが顔を上げると、そこにはわずかに涙を溜めた依姫の姿が。

 

 少しの風が吹き、依姫の髪を揺らすと同時に、シンは彼女にこの件を伝えなければならないのではないかと言う疑問が浮かび上がった。

 しかし、彼女にこのことを教えてもいいのかと言う疑問も湧き出てくる。

 

 何故なら依姫はカレンと友達だったからだ。

 果たして彼女は悲しむのだろうか、絶望感に苛まされるのだろうか、はたまた憤慨するか。

 

「………お前には事実を知る権利がある、だが…この話をお前がどう受け取るかが問題だ…それでも聞くか?」

「…お願いします…何にせよ私に出来ることはある筈です、最悪の場合には犯人を殺してしまうことだって…」

「それがカレン(お前の友達)でもか?」

 

 瞬間、空気が凍り付いた。

 現場の調査に来た人々の喧騒とまるで境界が引かれたかのように、二人の間には極寒の沈黙が訪れた。

 

 朝焼けに浮かぶ黒胡麻のようなカラスが嘲笑うように、耳障りに喚いている。

 

「じょ、冗談です、よね?だって彼女は…」

「…殺された筈だ、大妖怪に…だがアイツは生きていた」

「だったら…!」

<これ以上教えるのは気が引けるな…>

 

 希望を見出したように顔を煌かせたが、反面、カレンがそんなことする筈がないと一抹の不安を言葉に表した。

 しかし、現実は無情だ。

 

「…カレンは変わった、外見も内面も妖怪と言っても差し支えないぐらいにな…少なくとも俺たちのことなんて覚えちゃいねぇし、元に戻す方法も知らねぇ…文字通り八方塞がりだ」

「…なんで」

「俺が聞きてぇよ…」

 

 双方静かに俯いて溢れ落とした言葉には、複雑な感情が孕まれていた。

 

 カラスは相も変わらずけたたましく鳴いている。

 二人はそんな騒音に僅かながら、腹立たしいと感じた。

 

 しかし、俯いていても仕方がない。

 そう言い表すように顔を上げた依姫は、ある策を提案したのだ。

 

 心なしか彼女の瞳も色を取り戻し、更にその言葉には力強さと確信があった。

 

「師匠ならば…師匠ならなんとか出来るかも知れません…」

<師匠?>

「誰だソイツは?」

「八意永琳様のことです、あの方に一時期師事しておりまして…ってそうじゃなくてですね…」

 

 永琳は医者だった筈だ。

 しかしこの状況を打開出来るとなったら…精神科医でもやってるのだろうか。

 

 兎にも角にもその情報は願ったり叶ったりであり、シンは集中して依姫の話に耳を傾けた。

 

「あの方は医学だけでなくあらゆる分野に精通しています、だからこそまず師匠の元に行くのがいいでしょう…」

…待て依姫、だったら神サマにでも頼めばいいだろう?魂的な治療だったらそっちが適任だ

「月詠命のことか…」

 

 ここに来てヴェノムが初めて顔を出し、新たなる提案を挙げた。

 凶悪な顔を気難しそうに歪曲させている。

 しかし。

 

「いえ…それは、出来ないんです…」

「なんだと?」

「元々神とは人が願ってこそ現れる概念的な存在です…だから人類やその地域に壊滅の危機に迫り、人々が願うと自ずと姿を現し、神の御技を披露していきました…その名残で今も神が私達に関わることは滅多にありません、だから月詠命様が動くことは99%あり得ないんです…」

 

 依姫の説明は確かに納得のいくものだった。

 無制限に神の力を使えば人は堕落し、かと言って使わないというのも、脆弱な人類はいつか滅びてしまう。

 

 だが、一つ腑に落ちない点があった。

 

 カラスは漸く口を噤み、黒胡麻のように空へ浮かび、何処かへ飛び立とうと群れを成して動き出している。

 

じゃあ軍来祭はなんだ?アレは神サマの作った娯楽じゃなかったのか?

「…分かりません、ただ一つ言えることは…神とは時に傲慢になるということです」

「…クソッタレが」

 

 こうも簡単に誓約を破り、それを咎める者も居ない…実質独裁者とも言える月読命ーいや、この場合は全ての神と言うべきかーに腹が立ってしょうがなかった。

 だが、その所業は構わずルールを度外視している事と同義、そう考えれば…

 

 そこで空からカラスが一羽ー圧殺でもされたのか、寿命が来たのかーすぐ側にバサリと音を立てて墜落した。

 

 気味の悪い光景だが、今シンが考えている事に比べれば些細な事であった。

 何を考えているか?

 それはーーー

 

「…よし、月読命に()()()しに行く、依姫は永琳の所で指示を仰げ」

「え…?えぇ!?確かに急を要する時ではありますが…うーん…分かりました、取り敢えず聞くだけ聞いてみます」

「頼んだ」

いい情報を期待しているぞ!

 

 あの神は自身の欲求の為に神々の誓約を破るほどの傲慢、そして外面上はともかく、人間にも気さくに話しかけるフランクさを持ち合わせている。

 ならばこれくらい容易い御用のはずだ、いや、そうで無いと困る。

 

 なにしろこちとら八方塞がりだ。

 それに奴ならこんなことにあーだこーだ言わずに、二つ返事で了承してくれるだろう。

 

 依姫は唐突な要求に少し不服そうに眉を吊り上げたが、身を翻し、小走りで永琳の居るラボへ向かって行った。

 

 …さて、こちらも早々に動かねばならない。

 シン達の記憶が確かなら、月読命の居る宮は都の中心部分。

 ここからの距離はかなり遠いが、ヴェノムを纏えばそう長くはかからない。

 

 そう推断し、壊れた道路などの復興に勤しむ人々を横目に、シン達は飛び出した。

 

 

 

 …しかし、シン達にはこの都の土地勘なぞ生憎持ち合わせていない。

 少し経って道に迷うのは必然の事だった。

 

◆◆

 

 数時間後、近代的なこの都市と打って変わって、まるでそこだけ平安時代にタイムスリップかのような和風の建築物をシンは見上げていた。

 まさに宮、と言うべきか。

 宮は傷みを感じられない木製の壁に覆われており、厳格に聳え立つ門だけが宮への通り道であった。 

 

 そう、ここは月読命の住む家だ。

 

 厳かな雰囲気が漂っているが、周囲の喧騒はそれを打ち消すほどに騒がしかった。

 ついでに、いる筈の門番すら居らず、宮からも人の気配を感じられない。

 それは何故か?

 

 エレクトロ(カレン)だ。

 移動途中、道なりに進むことを諦め、仕方なく建物の上を疾走していた最中、蟻のように列を成す人々を発見し、立ち止まって観察してみるとその先にはシェルターのような大規模な施設があった。

 シン達とエレクトロとの戦いをどこからか見ていたのか、それとも被害の大きさを危険視した上層部が避難警報でも発令したのだろう。

 

 今現在も周囲はドタバタと人が人同士を押し退け合い、蹴飛ばしながらシェルターに向かって避難している。

 頑強な壁に囲まれたこの都のことだ、恐らくこんな事は初めてなのだろう。

 

 しかも、エレクトロは目立った行動を起こしていないが、彼女自身は依然発見もされていない。

 今もどこかをフラフラと彷徨い歩いていることだろう。

 その事実が人々に今にも殺されるのではないかという不安と恐怖を呼び寄せ、周囲を押し退けながら走る群衆を完成させたのだ。

 

<…人ってこんな醜かったか?>

「大体こんなモンだろ、人ってのは九割があんな感じだ、多分」

<じゃあお前は特筆すべき一割の人間か?>

「んなわけねぇだろ、凡夫な九割だ」

 

 ヴェノムは『いつもの人』と『窮地に陥ったの人』とのギャップに困惑している。

 ドラマや小説など、知識ではそう知っていても、依姫や永琳と言った心優しき人(?)と接して来たヴェノムからすれば悪い意味で新鮮だった。

 

 …シンはそこに自分自身が含まれているとは思っていないが。

 

「…っと、こんなことをしている場合じゃない、さっさと行くか」

<そうだ!カレンを救うんだ!>

 

 奮起したシン達は人々を背に宮へ突入した。

 

 その地を踏み締め、その光景を見回し、奥は奥へ進んでいく…まではいいが。

 やはり広すぎる。

 道場の何十倍近い面積を誇るだろう宮で迷子になるのもそう遠くない未来だろう。

 

 湖の如き池、金箔が塗られているわけでもないのに艶輝く寝殿、しっかりと平された土、近未来的でもないにも関わらず、他の建築物とは一線を画していた。

 

「どうする?奴のいる場所なんて知らないぞ?」

…体貸せ、探してやる

 

 突如体がヴェノムに覆われ、勝手に体が地面に耳を付けた。

 シンには何も感じられないが、異常にまで聴覚を発達させたヴェノムには何か感じるのだろう。

 

 物音、声、果ては衣擦れまで。

 

分かった、こっから十時方向の…犬小屋みたいな建物だ

「サンキューヴェノム!助かった!」

 

 犬小屋という表現はいかがなものかと思うが、やはりヴェノムは頼もしい。

 その知らせを聞いたシンは爆速で月読命の居る建物へ向かった。

 

◆◆

 

「クッソ…広すぎだろ…」

<月読命はどう生活してんだろうな…>

 

 km単位の距離を走った。

 もう一度言おう、k()m()()()である、1000mである、100000cmである。

 幾ら何でも豪邸とは言え、門の近くから住居まで数kmあるなど実用性皆無ではないか。

 

 数分を費やして辿り着いたその家は、先ほどの豪邸と変わって幾分か質素であり、簡単に形容するならば…(やしろ)であった。

 しかし一般的な社と違い、巨大なしめ縄や、光り輝く灯籠が鎮座している。

 シンは何処か畏れのような感情を抱いたものだが、何kmも歩かされた怒りが燃焼し、その怒りの前にはちっぽけな恐れなど取るに足らない要素であった。

 

 扉を勢いよく蹴り上げ…

 

 いや、冷静に考えて今から助けを乞う相手には流石に無礼では…?

 そう考え直し、素直にノックしようとしたところーーー

 

<どうでもいいだろ>

「ああ、やっぱどうでもいいわ」

 

 ヴェノムが善意を一刀両断し、シンも考えを止めた。

 

「オラぁッ!!」

「…むっ!」

 

 派手にヤクザキック。

 

 扉は壊れはしなかったものの、バシンと大きな音を立て、座禅を組んで座る月読命を現した。

 しかしその顔は健康的とは言えず、漆黒の髪は幾らかその艶を失っている。

 更に汗ばんだ着物から映し出される巨大な胸は妙にエロティックだった。

 

「…お前大丈夫か?」

「ハハ…それが神に掛かる言葉か、シンだったな、面白いが大丈夫ではない」

「何があった?」

「そうだな、色々だ…」

 

 …顔色から察するに『色々』あったのだろう。

 以前見たようなポーカーフェイスな性格から豹変し、少しハイになっている状態の月読命に頼むのも酷だが、他にどうすることも出来ないシンは恥を承知で頼んだ。

 

「月読命、頼みが…」

「よいよい、用件は分かっている…まぁまず我の話を聞け」

「…なんだと?」

 

 少し落ち着いた様子の月読命は脂汗をかきながらゆっくりと話し始めた。

 

「まず、発端はカレンが都に侵入して来た事だ…その時から既に彼女はおかしくなっていたことは分かっていたのだ…

我が都の民の命を奪い、シン達と対戦した…しかし、だな」

「…待て、お前分かってたのか?全部?」

 

 今の話はカレンが暴れるのを黙って見過ごしていたと自白していたようなものだ。

 

 そして、それを知りながら無視した月読命に対して、理解が出来ず、わなわなと両手が震え、頭に血が昇っていくのが分かる。

 

「分かっていたとも、これは神のルールと、そしてもう一つ…」

<…おいシン、抑えろよ>

「………ああ…ルールは知ってる………じゃあなんで闘技場なんて作った?答えろよ…!」

 

 ヴェノムに静止されなかったら掴み掛かっていたかもしれない。

 言葉を遮られ、一瞬硬直した月読命は何処か申し訳無さそうに目配せし、覚悟したかの様に目を閉じるとーーー

 

 額を地面に叩き付けた。

 一瞬理解が及ばなかったが、これは…土下座である。

 

「すまん、()()()()()()…そして、済まなかった…この出来事を甘く見積り、ここまでの事態を引き起こしたのは我の責任だ、ただ…今だけは話を聞いてくれ、頼む」

「…は?」

<>

 

 月読命が言葉を発して、暫く経ってからようやく間抜けな返事を返すことが出来た。

 甘く見積もった?お前の責任?

 

 つまり…カレンという存在を舐めていたと?

 本当に、ただ知りながら敢えて無視していたと?

 

 怒りは混乱へ姿を変え、多少の落ち着きも取り戻した。

 そしてもう一つ、ここで不毛な議論をする必要がないという事も。

 

「待てよ、説明…いや、そんな場合じゃない、つべこべ言わず協力しろ」

「…悪いが、我の力を全て貸すことは出来ない…」

いい加減にしろッ!!お前の責任なら力を貸せ!!

 

 もはや畏れも、恐怖も、尊さも、敬語さえいらない。

 神としての責務すら果たさず、責任すら取ろうとしない神にどうして敬う必要があるだろうか。

 

 心中に残ったのは殺意に似た感情であり、ヴェノムが怒鳴りつけなければ代わりにシンが飛び出していただろう。

 それ程までにフラストレーションが、ヘドロの様に溜まっていた。

 

 月読命は下げていた頭を上げ、目を伏せ、絶えず汗を掻きながらポツリポツリと話し出す。

 そろそろ月読命の汗の量が尋常で無くなり、室内は異様な湿気に包まれていた。

 

 なんとも嫌な空間だった。

 

「主の怒りは全て終わった後に受ける…だから、今だけはしかと聞いてくれ」

「…っはぁ〜〜……さっさと言え」

 

 出来ることなら無理矢理にでも協力させてやりたい、しかし、それが不可能な事はこの尋常では無い多汗と先の土下座が証明している。

 兎に角確実に、迅速に事を進めたいシン達は怒りを噛み殺し、大きなため息を吐いて話を聞いた。

 

 …相応の理由が無いならば、ここで喰い殺して力を奪うのも選択肢の一つだが。

 

「ありがとう…まず前提として()()がこの都市から溢れ出しているのが原因だ…穢れとは妖怪達に対する畏怖であり、生に対する執着だ…執着と言うものが人の寿命を…死の匂いを強くする…純粋に妖怪や妖精達から溢れ出るエネルギーもそうだが…」

「…意味わかんねぇ…」

<つまり月読命がカレンを見逃したから、穢れが増えた、と>

 

 いつぞやに聞いた穢れ。

 人々の畏れが穢れに直結する…恐らく神々への信仰から成る畏れ、と言うよりも、未知に対する恐れと言う方が適切なのだろうか。

 畏れが妖怪を産み、生への執着が寿命を生む。

 

 更に妖精という謎の存在。

 

 シンが疑心から自身の眉間に険しく皺を刻み、月読命を睨み付ける。

 彼女は相も変わらず玉のような脂汗を掻き、顔を伝ってポタリと胸先へ落ちていった。

 

 俄に信じがたい、が…生憎、嘘とも言い切れない。

 彼方がここで嘘を吐くメリットも無い、ひとまず理解出来ずとも強引に飲み込んで信じ込む事にした。

 

「だから我はずっとその穢れを抑える為に力をフル稼働し、我が象徴である月の浄なる力も借りながらなんとかこの均衡を維持しているのだ…これが我が全ての力を貸せない理由だ、本当に力不足で済まない…」

「…そうか……」

 

 スケールの大きい話ではあったが、()()()()()()()()()()、という事だけは確実となった。

 彼女の言葉通りなら、力を使えば穢れから寿命が発生し、都内に妖怪が出現する恐れもある。

 

 紛れも無い八方塞がり。

 考えれば考えるほど詰みの状況であり、理解すればするほど絶望的だった。

 

「クソが…」

 

 胸の内がやり切れなさと失意で染まり、何も言わず立ち上がってその場を去ろうとしたその時。

 月読命が衝撃的な一言を放った。

 

「だが…我の力の一部を使()()()()ことは出来る…」

<何ッ!?>

「ッ!?なんだと!?それはどう言う事だっ!?」

 

 扉の方を向いていた体を勢いよく月読命に向け、期待の表情を浮かばせる。

 シンはいつの間にか冷めていた心が、激しく燃え上がるのが感じた。

 

 彼女は脂汗はそのままに、力強い眼をこちらに向けて言った。

 

「綿月依姫の神降しだ、アレなら月を媒介に我も力を出せるし、もしカレンにナニかが憑いていても浄化の力で剥がせる」

「そうか…!その手があったか…!!さっきは悪かった、今は感謝するッ!」

<カレンを治すメドも立ったな!>

 

 降って沸いた名案。

 絶望から一転、希望の一筋が見えたシン達はこの事実を依姫に知らせる為、踵を返して扉を蹴り破り、一瞬でその場を後にした。

 

 ……

 …

 月読命の汗の滴る音だけが響く社に残されたのは、月読命ただ一人。

 彼女はふぅ、と一息つき、静かに独りごちた。

 

「シンを…あの、()()()()をこの都市に入れる事を黙認せず、即刻追い出していたならば…カレンを止める余力もあったのだろうか…?いや、たらればは止すか…」

 

 彼女はカレンを見過ごしていたわけでは無い、止めることが出来なかったのだ。

 この穢れを撒き散らすほど強力な彼の、()()()を抑えていた為に。

 

 常人には理解も、知ることすら出来ない…神だからこそ知ることのできる、正しく()()()()()()()()()()

 

 だからこそ彼女が今のカレンを止める力は無く、シンに任せる形で放置したのだ。

 …結果は事態の悪化を引き起こしたが。

 

「なまじ善人だからこそ…()()したのは神失格か…」

 

 彼女はシンに何を同情したのか?

 

 一体彼女は何を考えているのか…それは、誰にも、究極の頭脳を持つ永琳でさえ、何度も顔を合わせた玄楽にも、勿論、シンにも、ヴェノムにすら分からない。




ご拝読、ありがとうなのぜ!
シンは結局何者なのぜ…?奴隷に聞いても分からないし…

あっTwitter始めたのぜ!よろしくなのぜ!あと二十三,五話も見てくれなのぜ!
https://mobile.twitter.com/cDyMHGEPwTLy1kw

登場人物紹介っている?

  • やってくれ 必要だろ(いる)
  • それは雑魚の思考だ(いらない)
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