<…いいだろう、教えてやる… >
ヴェノムは俺の右手から姿を現し、話を始めた。
「まず俺の種族だ、お前らの言葉で言うとシンビオート…共生生物ってところだ…他には?ん?」
ヴェノムは嫌らしく聞いてくる。
割とあっさりと教えてくれたが、共生生物と言われても意味が分からない、だが共に生きると言う字面から、そういう種族なのだろうと無理矢理納得することにした。
まだまだ疑問はある、そのまま尋ねた。
「じゃあ俺が急に強くなったのはなんだ?アレもヴェノムのおかげか?あと何で俺に取り憑いた?」
「ああ、そうだ、俺達シンビオートが共生した有機生命体、つまり生物は超人的な腕力や敏捷性を得る、だから俺に感謝しろ。二つ目の質問だが、俺は地球では宿主無しでは生きられない、だからお前に取り憑いた、それにお前は俺によく適合する、お前が俺の運命の相手だと勘違いする程度にはな」
どうやら俺の運命の相手は、中々のファンタジー生物のようだ。
そうやって疑問を解消していく俺だったが、地球では、という単語に取っ掛かりを感じた。
「地球では?そう言えば俺のプリンセスは、空から隕石に乗って来たよな。宇宙から来たのか?目的はなんだ?」
「プリンセスは気持ち悪い!止めろ!…そうだな…一つずつ答えてやる…確かに俺は宇宙から地球にやって来た…!いや…追い出された.…」
ヴェノムは俺のジョークを一蹴し、怒りが抑えられないと言った様子で憤慨する。
しかし、すぐに鎮火し、落ち込んだように頭を項垂れさせる。
意外と感情豊かだな、と思考の片隅に思いながら、ぶっきらぼうになんでだ、と尋ねる。
ヴェノムは項垂れたまま答えた。
「…俺は母星では弱者、負け犬だった…だから追い出された…!俺を隕石にへばり付かせてな!!俺は絶望していた…!だがな!」
母星…ということは他にもヴェノムと同じよう奴が沢山いるのだろう。
ヴェノムは顔を上げて俺に言った。
「この地球でお前に会った!お前は他の人間とは違う何かを持ち、上手く俺に適応した!しかもだ!お前の体にいればいるほど住みやすくなる!まるで今も"適応“していくように!」
ヴェノムが捲し立てるように言う。
心なしか、いや、間違いなく喜んで見える。
そして、目的も大体わかった。
「お前はその星の奴らを見返したいんだな?」
「ああ!そうだ!今じゃあライオットのような武器変化も出来る!俺たちは正に無敵だ!」
ヴェノムの気持ちは良く分かる、誰だって馬鹿にされたら見返したい物だ。
話に出てきたライオットと言う者はヴェノムの同郷だろう。
俺はもう一つ聞く。
「じゃあお前は宇宙に行かなきゃだろう、どうやって行くんだ?」
「………お前がロケットを作れ!!」
「はぁ!?俺に出来ると思うか!?お前まさか何も考えてねぇのか!?」
「うるさい!」
ヴェノムは絞り出すように返答を返し、俺は困惑した。
俺にそんな知識あるわけがないだろう。
暗にそう答えたがヴェノムはそっぽを向いて吐き捨てるように言った。
「まぁ落ち着け、別に今直ぐ行かないと死ぬわけでもない、じっくり考えていけばいいだろう?」
少し不機嫌になったヴェノムを宥め、妥協案を出す。
ヴェノムは多少納得したのか、こちらを向いた。
そして、俺に向けて幾つか質問をした。
「俺からも聞くが…お前は何で記憶がない?」
「知らん、俺が聞きたい」
「何故名前が無い?」
「知らん」
それは俺が一番知りたい。
ヴェノムがこの質問の答えが想定内のことなのか、溜息を吐く。
そして鄒俊だけ唸り、衝撃の一言を放った。
「…名前が無いのは不便だ…!俺が名前を付けてやろう!」
「!?」
俺は確かに名前が無いのは不便…と言うより、若干の心残りを感じていたが、まさかこんな所で新しい名前が決まることに少し…いや、かなり不安を感じていた。
何故なら、名付け主はヴェノムである。
かなり失礼だが、この際失礼など考えていられない。
後先考えずに
今名前を決められることは吝かでは無い…しかし、最悪、エリザベスとかペロといったように、ペット感覚で名付けが行われてしまう。
そんな最悪の事態に悪寒を感じつつ、ヴェノムの返答を待つ。
「かなり失礼なことを考えていそうだな…俺はちゃんと考えているんだぞ…!…そうだな…うーむ」
うむむと唸るヴェノム。
俺はせめてマトモな名前になることを祈った。
「…よし…
「…その根拠は?」
まだ常識の範囲内である名前で安心し、理由を聞いてみる。
「
「…はは…」
ニヤリとヴェノムが笑う。
俺は自分の名前の危機を乗り越え、安堵の溜息を吐いた。
恐らくヴェノムが俺の心を読んでいることについても間違い無いだろうと確信し、シンという名前を心の中で反芻する。
簡単な名前ではあるが…俺は思いの外このシンという名前を気に入ったようだ。
「あー…いいんじゃないか?」
「ハハハ!嬉しいなら嬉しいと言えよ!」
礼を言うことが少し気恥ずかしく、そこそこな返事をする。
俺…いや、シンは話題を切り替え、様々な質問を続けた。
どうやって俺の心を読んでるか、お前の主食は、ライオットとはどのような人物(?)か。
ヴェノムはそれぞれの質問に、こう答えた。
「俺はお前の頭の中に住んでる、だから簡単な思考を読み取ることぐらい、朝飯前だ」
「俺はお前のアドレナリンと神経伝達物質を食ってる…戦闘中は上手かったぜ?それと人間の脳ミソ!あの化け物もかなりイケる!」
「ライオット?…アイツは俺たちのリーダーだが、暴力的なクソ野郎だ…ああムカつく!!」
一つ目の返事を聞いて、頭の中に寄生中が居るような気がして、背筋が凍った。
案の定、心の中だとしても寄生虫と言われたヴェノムは怒り、シンは頭突きされて鼻血がタラリと流れた。
鼻血を拭いながら殆どの質問を終え、最後に気になることを聞いた。
「ついさっき他の人間って言ってたよな、どっかに人間がいたのか?」
「人間?隕石として墜ちてるときに、大規模な人間の都市を見つけた、多分ここから北西の方角だ」
溜まっていた質問を全て消化し、今後の活動方針が決まった。
ひとまずはその人間の都市とやらに行ってみようと思う。
シンはヴェノムに感謝を伝え、体に戻らせる。
そして、シンは都市に向けて歩き出した。
< 人間を食うのか!良いぞ!もっと早く歩け!なんなら一緒に行くか!? >
「違う!そこらの化け物で我慢しろ!」
ヴェノムを連れて行って良いのか、多少不安だが…
◆◆
ある時、曇天の空の下、隕石の被害、そして石質調査という名目で都市から調査隊が派遣されていた。
簡単な調査だったので、新人も多く誰もが遠足気分だった。
途中で隊長が、新人や気の抜けた隊員に向けて注意を促した。
「ここの森からは妖怪が出現することをある…気を引き締めろ!」
効果は高く、新人や気の抜けていた隊員を含めた全員が神経を尖らせていた。
その調子で目的地にたどり着いた。
しかし、肝心の目的地は異様であった。
血痕が現場を濡らし、血生臭い臭いが充満している。
低濃度の妖力が検出されたことから弱小妖怪の縄張り争いが起こったのだと推測されたが、血痕の跡が多く、縄張り争いに勝った妖怪も見当たらないので、真相は恐らく違う物だろうと隊長は考えた。
新人の一人が青い顔で隊長に尋ねる。
「何故一欠片も…その…肉片…とかが無いんでしょうか…?」
「恐らく血の匂いに惹かれた妖怪共が死体を貪ったのだろう…しかし…ここで縄張り争いが起こったとは思えないし、そもそも縄張り争いの勝者がいない…不気味だな…」
雨が降り始め、嫌な空気が広がる。
隊長は新人の疑問に簡単に答えた後、この状況に対して深く考え、そしてある考えに至った。
それは
隕石が関与しているかは不明だが、何かしらの理由で妖怪達がこの場で争い、それを第三者が纏めて皆殺しにしたケース。
可能性は低いが過去にもそう言った事例は数件ほど起こっており、全てが大妖怪による仕業であった。
このことを含め、調査隊は隕石のサンプルを取ったのちに急いで雨の中撤退する。
その足取りは、何処か重々しく、不安に満ちていた。
この報告書はクリアランスレベル2以下の職員が表示してはなりません
万が一、機械の誤作動などの要因によって誤って開いた場合、直ちにこのファイルを閉じ、機動部隊の到着をその場でお待ち下さい
抵抗をした場合、その職員には終了処置が取られます
○時*分α秒都市へ急接近した小隕石、オブジェクト暫定名称『V-111-ex』の調査終了を明記
現場は半径10メートルにおいて赤熱化したクレーターの跡が見られ、その中心部には約2メートル程の黒色鉱物が見られた
サーマル測定、ガイガー=ミュラー計数管測定、カント計測器測定において異常性は検出されず、妖魔検知器は規定量の1.005倍の数値を検出した
しかし平均値に著しく近く、誤差、または弱小妖怪が付近を通りかかったモノだと考えられる。
四式コール検査により、石質はクロウンモ、およびにケイ酸塩化物を主体とした物質と宇宙浮遊物特有(水素及びにヘリウムを含む)の元素が2:5の割合で含有されていることが発覚、異常は見られない
しかし、反ミーム性、現実改変性、存在不確定性は考慮されていない
このことを踏まえ、偶然都市の近くに落下した物だと考えられるが、詳細情報は不明
外なる侵略者、別次元からの転移、新たなる妖怪の誕生の可能性を鑑み、研究の必要性を打診すべきと判断する
⚠️重要事項⚠️
隕石落下地点に大量の妖怪のものと思われる血痕を確認した
隕石との関係性は不明だが、大妖怪の発生の恐れ有り、至急大門の警備、及びに近隣調査の強化を進言する
ご拝読、うん、ありがとう。
次話でやっと東方要素出ます。
登場人物紹介っている?
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やってくれ 必要だろ(いる)
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それは雑魚の思考だ(いらない)