東方修羅道   作:おんせんまんじう

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何気ない一日、そして再戦だぜ、ゆっくりしていってね!


第八話 二度目 

「よし…組手しろ、依姫…ッ!」

< やっちまえシンッ!!>

「受けて立ちます!」

 

 依姫は立ち上がり、シンを見据えてシンの挑戦を受けた。

 

 闘志充分、疲労もまるで気にならない。

 リベンジとなるこの勝負、負ける訳にはいかない。

 

 シンは何回も素振りをしたからか、自然に構えを取った。

 依姫はバックステップで距離を取り、同じくゆっくりと構えを取る。

 

 刀身の残像が残ると錯覚する程、惚れ惚れとした構えだ。

 弧を描く様に掲げられた竹刀。

 その名は、正眼の構え。

 

 鄒俊ほど睨み合いが続き、周りの門下生が竹刀で風を切る音をBGMとした静寂が展開される。

 

「…」

 

 呼吸すら憚れる空間。

 

 ーーー不意に、依姫が動いた。

 

 蛇を思わせる動きでジグザグに蛇行しながら接近したのだ。

 何処を狙って来るか分からない軌道。

 下手に対処すれば、それだけで決定打になり得てしまう一撃だった。

 

 しかし、シンはジッと依姫の竹刀を凝視し、その場から動かない。

 あっという間に袈裟斬りが決まーーーらない。

 

 ギリギリとところで竹刀を滑り込ませることに成功し、不器用だが、しゃがみながら受け流がすことに成功した。

 

(出来た…ッ!)

 

 そしてガラ空きとなった依姫の腹に竹刀を叩き込もうとした。

 しかし、依姫は前方に飛び込むようにしてこれを回避した。

 依姫の華奢な身体に竹刀が掠れる。

 

 依姫は体を捻り、シンの方を向いて着地する。

 依姫は飛び込んだ位置的に10m程離れている筈だが、シンは嫌な予感を感じ、振り抜いた腕ごと回転するように体の向きを反転し、()()()()依姫に向き合った。

 

「ーーーッ!?」

 

 依姫が行ったのは、居合。

 しかし、飛び出した音すら響かせずに目前に迫ったその技術は正に極地。

 シンはその事実に驚嘆し、繰り出された刺突を無理やり体を逸らし、なんとか紙一重で避けることができた。

 刺突は恐るべき疾さであったが、先日の決闘でその疾さには慣れており、動体視力がなんとか追いついた形で避けることが出来た。

 

 依姫もまさかこの一撃を避けられるとは思わなかったようで、無防備な体を晒している。

 絶好のチャンスだが、無理矢理体を逸らしたためか、追撃を送ることは出来ず、お互いに距離を取って剣戟は一時中断された。

 

 シンは互角とは言えずとも、依姫と渡り合えていることに高揚を隠せず、同時に剣戟自体に楽しさを覚えていた。

 

 今度は鄒俊も待たず、弾き出すようにシンは飛び出した。

 直線的な移動で、必ず読まれ、カウンターを喰らうだろうが、シンはこれ以外に攻め方を知らなかった。

 依姫と同じように袈裟斬りを放つ。

 しかし彼女はシンがやったようにしゃがんで受け流した、彼と違って洗練された動きだった。

 

 シンは丸々運動エネルギーの方向を変更され、体勢を崩し、その隙を依姫に突かれるーーー筈だったが。

 シンはなんと体勢を崩した状態から片足を軸にして回転し、しゃがんでいる依姫に強烈な脚撃を竹刀越しに喰らわせた。

 完璧すぎる受け流しが災いし、充分な速度を兼ね備えた脚撃は、依姫を意表を突き、依姫との戦闘で初めてマトモな攻撃を加えることが出来た一瞬だった。

 

 実践ならば恐らく脚をスパッと斬られて終わりだろう。

 しかし、これは試合、一撃は一撃だ。

 

 依姫はこの一撃には応えたようで体勢を変えずに吹き飛ばされ、苦い顔をしている。

 そして、彼女は竹刀を鞘に収めるような動作をして、小さく息を吸い、顔を上げた。

 

 まさかと思った瞬間には依姫の姿は掻き消え、力強い響きが耳をつんざくと共に脇腹と鳩尾、胸に衝撃が走った。

 

「カハッ…ッ!!」

 

 息を強制的に吐き出されるようにしてえづき、膝をつく。

 依姫のあの構えは間違いなく居合の類いだった。 

 しかし、実際に攻撃を受けたのは三箇所、あり得る筈が無い。

 つまりそれは…数コンマにも満たない時間の中で三撃を加えるということで。

 卓越した…いや、希代の天才にこそ出来る剣技であった。

 

 依姫とシンの間に壁を実感し、才能に嫉妬し、弱い自分に反吐が出る。

 そんなことを思っていると、当の本人から手が差し伸べられた。

 

「大丈夫ですか…?」

「…ああ…」

<お前はよくやった、ドンマイ>

 

 依姫の紫がかった緋色の眼が膝をついたシンを映す。

 心の中でヴェノムが励ましてくれる。

 

 少しナーバスになってしまったが今勝てないのなら次勝てばいい、次勝てないのならばその次に勝てばいい。

 そう心に決め、依姫の手を取り、再戦の意を示した。

 

◆◆

 

 そうして一日の稽古が過ぎた。

 

 稽古と言っても依姫との戦闘だけ。

 玄楽から教えてもらう様な事は何一つしていない、それは今日に限った話では無いが。

 

 依姫と戦った方が経験値が高いからだ。

 

 取り敢えずの戦績は百二十五戦、百二十五敗、惨敗である。

 しかし、勝てる場面も少ない訳ではなかった。 

 依姫の剣技も多少見切れるようになり、絶望感を感じることは無かった。

 

 日々成長する自分に満足感を感じ、解散した後、食堂へ向かいタダ飯を食らう。

 そう言えば、何故ここまで設備が充実しているのだろうか、食堂は無料、宿泊も無料、大浴場も付き、天国のような有様である。

 しかし、食事中、山盛りの団子を持った依姫が当たり前のように横に着席した。

 文句を返したが。

 

「ここがいいんです!」

 

 とのこと。

 他の席に座るよう命令したが、テコでも動かない、強情女の再来である。

 

 仕方なくその席に座ることを許諾し、何故ここまで設備が充実しているか質問する。

 すると、依姫は団子を頬張りながら答えた、さながらウサギである。

 

「本来、綿月の家系は軍の重鎮という立場です。ムグ、しかし、お父様が、新人の育成に努めたいという要望を上層部に提出し、お父様の実績から許可されました、その後は第一戦を退き、ムグ、多額の資金を貰いながらこの道場で稽古をしています。この設備の多さは、その資金を利用しているからなのでしょう、ゴクンッ。」

 

 お前は食べるか喋るかどちらかにしたらどうだ、その旨を依姫に伝えたが、彼女はどこ吹く風である。

 しかし、成程、この無料尽くしも納得した。

 シンは早々に飯を平らげ、食堂を去った。

 依姫があっ…と悲しそうな声を上げたが、無視した、面倒臭いし。

 

 シンは自分の部屋で時間を潰した後、大浴場へと向かった。

 この一日でかなり汗をかいたものだから風呂に入れるのはありがたい。

 大浴場は湯煙が多く、露天風呂も付いていた。

 運の良いことに人はおらず、湯船に浸かり、ヴェノムと話す。

 

「なぁヴェノム…お前は満足しているか…?俺はしてないがな…」

 

 勿論、依姫のことだ。

 奴を倒すことがとりあえずの目標だ。

 

そうだな…俺も満足していない…俺の星の奴を見返すことも出来ていないし、外に出て、暴れもしたい…!!

 

 そうか、一言返し、今度また壁外で暴れようかと考え、数十分か浸かったのち、風呂を出る。

 ふと、自分の胸の三本線や右腕の傷の痕に目をやった。

 狼妖怪に襲われたのも、今となっては懐かしいことだ。

 

 そう思いながら自分の部屋へ向かい、ベットに埋もれる。

 依姫との剣戟を思い出しながら眠りに入った。




なるほど、一日中その子(依姫)のことを考えている?
それは…恋(ry

ご拝読、ありがとうございますなのぜ。
奴隷が出しゃばって有る事無い事喋ってますが気にしないでくれだぜ。

登場人物紹介っている?

  • やってくれ 必要だろ(いる)
  • それは雑魚の思考だ(いらない)
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