とある街の剣道の大会に出場していた1人の学生がいた。俺の名前は福山龍二、ただいまは剣道の大会の決勝戦であり、高校最後の剣道の大会だった。俺は大歓声の中、試合に臨んでいた。
「めぇーーーん!」
スパーン!
竹刀が激しく交わる中、福山龍二は竹刀を華麗な太刀筋で相手から1本を取っていた。
「1本!それまで!、勝者、福山!」
「やったぁぁぁ!龍二の優勝だぁぁぁ!」
「よっしゃぁぁぁぁ!」
チームメイトが大騒ぎする中、試合を終えた龍二はチームメイトに駆け寄るとチームメイトが胴上げを始めていた。大会を終えてチームメイトと共に歩いて帰宅する途中だった。
「龍二はやっぱりすげぇや!流石はこの街の大剣豪って言われてるだけあるな!」
「俺達も龍二のお陰で強くなれたからな!感謝してるぜ?」
「そんな事ねぇよ、お前らの努力が実を結んだんだよ」
「なっなぁ?アレ、ヤバくないか?」
「え?」
チームメイトが指を指した所には小さい男の子がボールを取るために道路に飛び出していた。そこに、大型トラックが迫っていた。
「俺、助けてくるわ!」
「龍二!?何言ってんだよ!待てって!」
「大丈夫大丈夫!竹刀持っててくれ!」
「おいっ!龍二!!」
俺は飛び出して行き、小さい男の子を助けようと抱き抱えた。大型トラックはクラクションを激しく鳴らした。
「龍二ーーーーー!」
「キミだけでも逃げろ!」
ドンッ!と小さい男の子を歩道にほおり投げてると、俺は大型トラックに撥ねられた。
「龍二ーー!おいっ!しっかりしろ!」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
「救急車呼べよ!龍二が死んじまうだろうが!」
ああ……俺はもうダメだな、頭がガンガンするし…。意識がとお……く……なっ……て
俺は意識を手放して目を瞑った。
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俺は目を開けて、体を起こしてみると体中の痛みや血が消えていた。体を触り異変がないか確かめた。
「あれ?あれ?俺は…トラックで撥ねられた筈じゃ……」
「目が覚めましたか?」
「え?あなたは……?」
俺は声を掛けられ、後ろを振り向くと、そこにはキッチリ七三の髪をしてる中年のサラリーマンの様な姿をしおじさんがいた。
「私は神です。福山龍二さん、貴方は小さい男の子の命と引き換えに大型トラックに撥ねられ死亡しました」
「やっぱり俺は死んだんですね、小さい男の子は無事ですか?」
「はい、生きていますとも……。貴方は勇敢な方の様ですね」
神と名乗ったおっさんは巨大な本のような物を開いてペラペラ捲り始めた。本の名前を読むとマニュアルと書いてあった。
「あの、それはなんのマニュアルなんですか?」
「これは勇敢な人を『転生召喚』させる時のマニュアル本です」
転生召喚……よくライトノベルとかの小説であるよな?最近では『盾の勇者の成り上がり』がアニメ化されてたな……。Web版も読んだし、漫画も集めてたっけな俺…ラフタリアちゃん可愛いかったなぁ……。
「それで…、俺は今からその転生召喚をされる事になるんですか?」
「はい、マニュアル通りですと異世界に転生召喚させるという事になってますね」
「異世界!?ほんとに異世界ってあるんですか!?」
「ええ、ありますよ?色んな世界に通じてますので、いやはや私事ではありますが、福山龍二さんを転生召喚すれば定年退職する事になってるんですよ」
定年退職!?神様にも定年ってあるんだな……。
「そうなんですか、神様なんですから気の遠くなるほどの長い年月でしたよね?長い間お疲れ様でした!」
俺は神様のおっさんに優しい目をしながら頭を下げた。するとおっさんはプルプルと震えだし、涙を流し始めた。
「うっ……うっ……」
「あっあの……どうしました?」
「いっいえ……貴方は優しい方ですね……、私にも家族は居ますが、妻にも相手にされず、娘とも口を聞いて貰えません……恥ずかしい事ですが優しくされたのは何年ぶりでしょうか……うっうっ〜」
神様のおっさんは切実な事を言い出した。
高校生になんと声をかけさせるつもりなのだろうか?
「泣かないで下さい、俺で最後なんですよね?なら最後の仕事を全うしましょうよ!ね?」
その言葉を聞いた神様はマニュアルを急に破り捨てた。
「そうですね、こんなものもう要りません!最後の仕事を派手にさせましょう!特別大サービスです!幾つかチートを授けましょう!」
チート!?チートって良くある俺TUEEEE的な能力だよな!?
「良いんですか!?」
「ええ勿論ですよ!”私は神ですよ?何だって出来ます”どうです?この際好きな異世界に行ってみませんか?」
いきなりはっちゃけ始めたな、けど……チートかぁ、憧れてたからなぁしかも好きな異世界に行けるのか……。
「どうです?この中に好きな異世界はありますか?」
神様のおっさんは幾つかのモニターを呼び出した。そこには様々な異世界が映っていた。
「うわ〜、異世界がこんなにあったなんて……」
「そうですよ?どうです?いい所ありますか?」
「そうですね……」
俺はモニターを一つ一つ見ていくと様々な世界が見えていた。例えば、青い髪の女の子が椅子に座ってうたた寝をしている所や、白い服を着ている金髪の女性が書類をぶちまけている所が目に映った。
「うーん、どこの世界の子も可愛いなぁ……」
「龍二くんが選んでる時間が勿体ないので待ってる間に龍二君の頭の中を少し覗かせて貰いますね?痛みはありませんので」
龍二が選んでる時に神様は後ろから頭に手を載せて龍二の頭の中を覗いていた。少しでもチート能力を強くさせようとしているらしい。
(うーん……どこも良さそうな異世界だけど……俺はやっぱりラフタリアちゃんに会いたい!!)
「神様のおっさん、お願いがあります!」
「ん?決まりましたか?」
「はい、『盾の勇者の成り上がり』の世界に行きたいです!」
「なっなんですって!?」
神様のおっさんはびっくりした様な顔をしていた。
何か問題なのだろうか?
「どうしたんですか?」
「構いませんが……あの世界は厳しいですよ?良いんですね?」
「はい!構いません!好きな子を…尚文を救いたいんです!」
俺は真剣な眼差しをして神様に祈願した。
「やはり君は素晴らしい人だ……分かりました!龍二君の頭の中を覗いたら様々なアニメ知識が豊富だったのが分かりました、なのであなたを”5人目”の勇者として転生召喚させましょう!」
「ホントですか!?」
「ええ!ホントです!武器は何が良いですか?生前は剣術に長けていたようですが?」
そうだ……俺は剣道をやっていたんだった、なら決まりだな!
「太刀…太刀の勇者として転生召喚して下さい!」
「太刀ですか?なるほど、経験のある武器なら更に強くなりそうですね、では、龍二君の頭の中から”太刀”のまつわるアニメを探って見ましょう……どれどれ……ふむ……『犬夜叉』の鉄砕牙と言うのがピッタリの様ですね、ならこの鉄砕牙をチートアイテムにしますか?」
鉄砕牙か、妖怪もモンスターも似たような物だし、鉄砕牙なら楽出来るぞ!
「はい、『完全体の鉄砕牙』をチートアイテムにして下さい!」
「なるほど、分かりました!」
神様のおっさんは指パッチンをすると空間に光が集まり出し、その中から鉄砕牙が現れた。
「これが龍二君の武器となり、君を守ってくれる鉄砕牙だよ」
「すごい……これがチート能力か……」
俺は鉄砕牙を握り、神様のおっさんに目を向けた。
「この太刀の力で尚文とラフタリアちゃんを助けてみせます!」
「でわ『太刀の勇者』の福山龍二君、貴方の成功を祈ってます!この扉をくぐれば『盾の勇者の成り上がり』の世界に入りますので」
「はい!行ってきます!」
神様のおっさんは真っ白い空間に真っ白い大きな扉を呼び出した。そして俺を見送った。
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見送った神様のおっさんは急に真顔になり、その場から姿を消した。