IS~暁に浮かぶ白を忘れない~   作:不落閣下

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11――見惚れる。

 セシリアとの死闘を終えて三日程経った。

 何故かクラス代表に祭り上げられてしまった俺は右手首にあるガントレット状の《白式》に額を当てて、授業中に発生した知恵熱を冷やして貰っていた。専用機の先駆者たる浅草さん曰く、ISの保護機能は過保護なレベルであるので困ったら頼んでみるのも手、との事だったので何気無くやってみたらこれがかなりひんやりして心地良い。

 最近の事をふと思い出す。

 改めて謝罪を受けてセシリアと名前で呼び合う友人関係になったり、早朝トレーニングを終えて教室に来た浅草さんの気だるげな様子が日割増しだったり、何故か四組の更識簪さんだったか、その女子生徒が浅草さんに甘えていたり、そして、その光景をドア越しにハンカチを噛んで悔しがる先輩らしき人物が居たりと色々あったが、概ね楽しい毎日だった。

 ……まぁ、浅草さんが更識さんを構っていて話す機会がぐんと減ったのが友人として寂しい限りであるが。

 それは兎も角、今は昼休み。午後はフルに使ってIS実習であるためISスーツを着込む時間を考えて行動せねばならない。《白式》に礼を言って、俺は学食へ向かおうと立ち上がる。すると、お馴染みになったメンバーが集まってくる。

 

「午後は実習だぞ。きちんと食事を取っておくのだ」

「そうですわ。早く行かねば席が埋まってしまいますわよ?」

「ん、そうだな。今日は何にすっかなーっと」

 

 箒とセシリアである。何かとこの二人は日常を共にしているので、学食や放課後を過ごすのも当たり前になりつつあった。教室を見渡してみれば、珍しい事に浅草さんが更識さんに突貫されずに空を眺めていた。そう言えば、浅草さんの事で分かった事があった。浅草さんを偶に見てみるとああして空を眺めている事が多いようだった。千冬姉の授業の時も偶に虚ろな瞳で空を眺めているようで、ルーチンワークとして浅草さんの行動に組み込まれているようだった。

 それはまるで、何も考えない事で何かから逃げているようにも見えて、何処か儚いものを感じたが、声を掛けてみればそのような素振りは一切無く、むしろ何を言っているのですかと問われてしまう始末だった。

 

「浅草さんも一緒にどうだ?」

 

 何となく、そう何となく尋ねてみた。何処か不意を突かれた様子で此方を向いた浅草さんは何かを呟いた後、俺に小さく頷いて立ち上がった。その際に顔に掛かっていた髪を振り払い、後方へ舞った黒髪が太陽の光に輝いて幻想的な光景に見えた。

 まるで、有名な絵画が生きているような、そんな美しい光景に俺は思わず見惚れてしまった。

 すると、横から手が伸びて俺の両腕が拘束された、もとい、手を掴まれてしまった。二人を見やれば何処か憤慨するような、けれど何処か悔しそうな表情で俺を睨んでいた。

 ……つまり、如何言う事だろうか。俺、何か悪い事したか?

 

「ぐっ、悔しいが浅草に負けているのは事実……」

「くっ、ミス浅草の優美さが恐ろしい……」

「何ぶつぶつ言ってんだ?」

「何でもない!」「何でもありませんわ!」

「お、おう……」

「いつも賑やかですね、織斑くんの周りは。お待たせしました、それでは行きましょうか」

「ああ。でも、浅草さんも賑やかじゃないか」

「あの子は私に甘えてきているだけですから……」

 

 そう浅草さんは息を吐いて気だるげな様子で返事を返した。

 そういえば、あの講座から浅草さんと話す機会が無かった気がするな。良い機会だし、中学とかの話題を振ってみようか。そんな事を思いながら二人に引き擦られる形で食堂へ向かっていると、砲弾の如く横合いから飛び込んできた影があった。その影は引き寄せられるように後ろへと向かい、とんっと着弾の瞬間に後ろへ跳んだ事で衝撃を受け流した浅草さんが更識さんを受け止めていた。その一瞬の神業に俺たちは唖然とせざるを得なかった。

 けれど、時が止まっているのは俺たちだけらしく、飼い主にじゃれつく子犬のように更識さんは浅草さんに抱き付いて、大変嬉しそうな表情で頬を綻ばせている。

 

「染子お姉ちゃん、おはよ」

「おはようございます。そして、廊下は走ってはなりませんよ簪」

「えへへ、早く会いたくて……つい」

「……はぁ、まぁ構いませんが。すみません、織斑くん一人追加お願いします」

「お、おう」

 

 更識さんは浅草さんの柔らかい肢体を味わうが如くすりすりと頬擦りして、ふにゃっとした表情で蕩けていた。明らかに姉に溺愛する妹みたいな感じでかなり背徳感を感じてしまう。もしも、姉妹だったなら禁断の関係になっていそうな……。ベッドで抱き合っている浅草さんを考えて俺は鼻元を押さえた。如何せん、IS学園に入学してから色々と溜まっているので妄想をするだけでこれだ。可笑しいなぁ、弾と御手洗と鑑賞会した時にはこんな事無かったのに……。

 頭の中で思い浮かべた妄想を払い落とし、食堂へ着いた俺たちはそれぞれ思い思いの品の食券を買った。俺と箒は和食Aセット、セシリアはサンドウィッチ、更識さんはパンケーキ、そして浅草さん……特製カツ丼大盛りセットだった。女子で朝からここまでがっつりと食べる生徒は浅草さんしか居ないようで、調理のお姉さん方のやりきったという顔がとても印象的だった。何せ、そのカツ丼は浅草スペシャルと密かに呼ばれている特別メニューであり、ボリュームが山の如しなのだ。

 持ち上げたお盆の重さはいったいどれ程になるのか。それは食べる気概を持つ者しか知らないに違いない。何せ、一目見ただけで腹が膨れそうな光景なのだから。

 これを食す勇気を持つ人が他に居るのだろうか……。いや、居ないだろう。朝から陸上部も青褪めるトレーニングを行なっている浅草さんだからこそ食す事ができるのだろう。カロリーの消費量やばそうなトレーニング量だったしな。

 

「……相変わらずの大食だな」

「俺でもちょっときつい量だからなぁ……」

「お姉ちゃんだから食べれる量……」

「わたくしには到底無理な量ですわね……」

「そうですか?」

 

 五人居るので多人数用席へ着席した俺たちは、箸を構えてきょとんと小首を傾げる浅草さんに苦笑した。黙々と山を崩して行く浅草さんの食事は圧巻であり、尚且つ確りと咀嚼していてその食事は綺麗なものだった。鮭の切り身に手を出しつつ、俺はそろそろ話題を出してみる事にした。

 

「そう言えば浅草さんって何処出身なんだ?」

 

 俺としては軽いトークとして出したつもりだった。けれど、口に出した瞬間に浅草さんの箸が止まり、更識さんの瞳がすっと細まって、空気が凍ったような違和感を感じた。それはまるで、触れてはいけなかったものに手を出してしまったかのような、そんな沈黙だった。

 

「……静岡の田舎ですよ。空気は澄んでいて、川が綺麗で……、とても良い場所でした」

 

 そう答えてくれた浅草さんは腹部を左手で擦りながら、悲痛そうな表情で微笑を浮かべた。更識さんは小さく息を吐いて、視線をパンケーキに移して食べ始めた。尋ねた俺は浅草さんのその憂いを含んだ表情を見て胸が痛む気がした。ズキリと痛んだ胸の感覚は初めての感覚だった。もしかすると胸焼けでもしてしまったのだろうか。そんな身体の不調に俺は返事を返す事が出来なかった。

 

「ほう、景色が綺麗な場所なようだな。羨ましい限りだ。私の家は都会から少し離れた神社の出でな……。一夏は近所に住んでいたのだ。家で剣道の道場をやっていたりと繁盛していたが……」

 

 あー……、うん。束さんのIS騒動で家族と散り散りで転校続きって言ってたもんな。

 何処か遠い目でし始めた箒の発言によって雰囲気が若干薄れ、ふっと雰囲気が良くなった浅草さんは食事を続け始めた。どんよりとした雰囲気が一蹴され、何となく呼吸が楽になった気がする。ほっとするような内心で、止まってしまった箸を俺も動かす事にした。

 それからの会話は穏やかなものだった。殆どが授業の内容で耳と頭が痛い内容だったが……。何故か箒もとても頭が痛そうな表情だったので、もしかすると授業についていけていないのかもしれない。これは浅草さんにまた講座を開いて貰わないといけないな。

 

「では、用があるので先に失礼しますね」

 

 浅草さんは此度も見事登山踏破に成功し、空になった容器をお盆に載せて立ち去った。その後ろを俺たちに一礼した更識さんが雛鳥の如く着いて行く見慣れた光景を見送る。時間を見ればアリーナの個人ロッカーへ向かうにはタイミングの良い時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、此れからIS実習を開始する。此度の授業内容はISの機動性の把握及びにその運用方法とする。では、手本として……、浅草、織斑、オルコット、ISを展開しろ」

 

 IS実習はIS学園の授業で唯一ISスーツで学ばなくてはならない授業だ。

 前年までは女子しか居なかったために、ISとの親和性緩和の一環で体に張り付くような形状をしているISスーツを着るのに何も思わなかっただろうが、今年は男性――一夏が居る。そのため、女子たちは何処か浮ついた様子の他に、羞恥心の表れと思われる挙動をしている者も居る。

 ――だが、浅草だけは直立不動だった。

 彼女の着ているISスーツは専用のスーツであるようで、私たちが着るスクール水着のようなISスーツとは違い、耐久性に優れたライダースーツの形状をしている。そのため、ぴっちりと彼女の完璧なボディバランスがこれでもかと強調され、凛とした刃の如く雰囲気に相まって美しい。

 颯爽と進み出た浅草に続いてセシリアと一夏が前に出る。そういえばセシリアは専用機を持っている筈だが私たちと同じISスーツなのは何故だろうか。毎日継続しているトレーニング量と言い、その軸のぶれない歩みと言い、浅草は他の代表候補生とは一線を画しているように思われる。彼女の憂いを帯びた表情は同年代とは思えぬ重さが垣間見え、それで尚歩む速度は変わらずのままだった。

 

「《ブルー・ティアーズ》!」

 

 セシリアが銃を抱く聖女の如くポーズを決めて、青いカラーが特徴的なISを展開する。優秀なIS搭乗者はコンマ秒でISの展開をするらしい。目測であるがセシリアのそれは一秒に近いコンマであり、一般生徒の展開時間よりも速い。それは彼女が専用機を持つ代表候補生という事を明確に示す確かな実力の一端と言えよう。だが、それに対して一夏は展開のイメージが湧かないのか、少々もたついていた。それを冷めた瞳で見る浅草は小さな溜息を吐いてから、一夏へ口を開いた。

 

「織斑くん、展開というよりも変身と思えば装着がスムーズに行なえますよ。一度身に纏っているのですから、それを再び装着する事はイメージし易いと思います」

「おお! そっか、その手があったか。行くぜ、《白式》!」

 

 一夏は待機状態であると言っていた白式のガントレットを身に付けた右腕で、空を穿つように掲げてその名を呼んだ。瞬間、輝きに包まれた一夏はあの時と同じ、白いカラーが特徴的なISを身に纏っていた。その姿は白い翼と形容するに値する雄々しき姿だった。浅草の助言ですぐに展開できた事には少し物申したい気分になるが、二人の様子は特段特筆するような素振りの無い自然な物だったので目を瞑っておく。だが、この胸に募る苛立ちは然るべき瞬間まで隠しておこう。

 一夏の展開速度は一秒を越えるものであったが、素人であるのだから及第点以上に違いない。千冬さんが一瞬であるがふっと微笑を浮かべたので間違い無い筈だ。

 

「遅い、一秒以下で展開できるようにしておけ」

「……はい」

「よし、では最後に浅草……見せてやれ」

「分かりました」

 

 内容は中々辛辣だったが、元々厳しめな教育を施す千冬さんであるので予想範囲内だな。何せ、幼い頃に何度打ち倒されたものか……。あの地獄のような鍛錬、未だに忘れられない思い出の一つだ。……勿論、トラウマめいたものだが。

 千冬さんの一言により、全員の視線が浅草へと向いた。浅草はまるで指導員のようにそれを良しとして頷いてパッとその姿を変貌させた。セシリアや一夏が発していた展開光が無く、まるで元々着ていたかのようにその鋼色のISを展開させた。

 日本代表候補生浅草染子が所有する専用機《玉鋼》。それは鎧武者を模したデザイン性を持ち、浅草の身体に沿うように存在するパワードスーツめいた細いフォルムが特徴的だった。《白式》や《ブルー・ティアーズ》のようにゴツゴツとして巨大な装甲は存在せず、身を纏うパワードスーツの上に半円状をしているアンロック式装甲が四肢を覆うように存在していた。全体的に細いフォルムであり、そして何よりも頭部を覆う三角錐状のヘルメットが違和感を醸し出していた。

 一同皆其々に浅草のISの形状とその展開の速さに驚きを隠せないようだった。特に、同じ代表候補生という立場であるセシリアが顕著な驚きを表情へ露にしていた。

 

「嘘。零コンマに近いだなんて……。三コンマが限界値ですのに……ッ!?」

「ふん、私の全盛期は此れぐらいだったぞオルコット。精進が足りんな」

 

 その言葉にセシリアは頭を抱えた。恐らく心情としては「そんなの貴方たちぐらいですわ」に違いない。コンマ展開でも凄いと言うのに、それを更に詰めるなんて本当に凄い人たちだ。

 

「では、織斑とオルコットは上空に飛べ。そして、上空二百m付近を遊泳、指示の後急滑空し地上十cmで着地行動を行なえ」

「あれ、浅草さんは?」

「……浅草の機体は航空性能が他二つに劣る。故に飛ばす必要は無い。さっさと飛べ、時間の無駄だ」

 

 睨み付けられるような目線で促された二人は、声を揃えて返事をして上空へと飛び上がった。機体性能の差なのだろうか。一夏がセシリアよりも速い速度で上空へと上昇し、目視できる範囲内でその上昇を止めて空を舞い始めた。地上を見れば、後方に頂点のある三角錐のヘルメットを背中へと回して顔を出している浅草が憂鬱げに空を見上げて、何かを呟いていた。私は上空を飛ぶ二人に興奮して列を崩した者たちに紛れて浅草へと近付いた。

 

「ええ、そうです。戦闘機のようなイメージを持つとより良いかと。はい。速度を出すにはアフタバーナーを吹かすようなイメージで行なうと宜しいかと。そうですね、良い調子ですよ」

 

 どうやら個人通信機能により一夏に助言を与えているようだった。セシリアの一件から浅草は暇がある時に私たちの訓練に指導官として混ざり、完璧であろう私たちの説明をばっさりと斬り捨てて分かり易い講座を開いてくれたりと本当にIS関係では頭が上がらない存在になりつつある。セシリアとの戦闘により修理に出された《白式》が返って来たのが最近であるので、不慣れな操作に対して助言を得るのは当然な結露だろう。

 ……正直、今の私が姉さんに頼んで専用機を貰ったとしても使いこなせる気がしない。

 けれど、浅草の講座に出席する度に《打鉄》の操作が上達してきている。何せ、訓練機である《打鉄》でセシリアに一矢報いる事が出来たくらいだ。浅草曰く、一夏と同じく私はISに愛されているらしく、スムーズな運用が出来ているために経験値が入るのも早いとの事。このままであれば、夏には十分な技術を学び終えるだろうとやや苦い顔で太鼓判を押されたくらいだった。

 

「……急停止ですか? そうですね、地上にエアクッションがあると思って其処で踏ん張るイメージをすると宜しいでしょう。そうすると地面とキスをする事は無いでしょうから」

 

 どうやら内容からして千冬さんから滑空の指示があったらしい。セシリアが先に滑空し、十四cmという評価を貰い、その後に滑空してきた一夏は地面に足を埋めて-4cmという記録を出した。どうやら踏ん張り所をミスったようだった。浅草は掌を額に置いて溜息を吐き、千冬さんも肩を竦めて呆れているようだ。無理も無い。一夏は今愉快なオブジェと化しているのだから。

 

「……はぁ。織斑はそのままで見学しておけ。ハイパーセンサーでなら視認できるだろう。では、浅草には低空移動の実技を行なってもらう。内容はハイターン、アブソリュートターン、ループループだ。できるな」

「はい」

 

 浅草は三角錐を下ろすと後方腰部に存在するブースターを吹かせて、跳ぶように一瞬にしてアリーナの端へと移動していた。その加速の速さに千冬さん以外が絶句した。一瞬拍手のような音がしたのは恐らく音速を超えた音に違いない。まるでワープしたかのような加速度であったから恐らく合っているだろう。何て加速度だ、戦闘機並みと言っていたが怪物染みている。

 確か、ハイターンは三歩ステップを踏んで後ろを振り向く回避系、アブソリュートターンはブースト中に振り返る迎撃系、ループループは中心点を通るように円状に回避運動を行なう攻撃系に分類される技術だったか。その全てが非常に難しいと言われているものばかりだ。

 私たちはアブソリュートターンをした事があるらしいが、戦闘中に意識して使えるかどうかと考えると難しいものがある。機体運用に長けていないと自爆する技なのだから当たり前だ。

 アリーナの端へと移動した浅草は右左右のステップを空中で踏み、右へ左へと連続してハイターンを決めるその姿はまるで舞のように見えた。それだけ彼女のハイターンの修練度が高く尚且つ相当な実力を持ち合わせている事を理解させるものだった。

 続いて、態と出力を落としたのだろう速度で前進しながらくるりと旋回し、即座に進行方向の逆へISを振り向かせ、ブーストして元の位置へと戻り、再びアブソリュートターンを決めた。一糸乱れぬ完璧な動きに誰もが釘付けになり、次の御題への好奇心が期待へと変換されて行く。

 そして、浅草は中心で止まり、最後の実技を行なう。コンパスによって正確な円を描くが如く中心点である一点を交差して、氷上を滑るスケーターのように滑らかな動きで八枚花弁を模したループループを行ない続ける浅草に、誰もが魅了され見惚れ続けた。悔しいながら一夏もその華麗な動きに目線が行きっ放しのようだが、私もまたそんな一夏を一瞥するだけで浅草の美しいループループに目を奪われていた。

 数十秒、数分、いや、数時間は行なっていただろうか。其れほどまで錯覚する程に集中していた私たちは、浅草が跳んで戻って来て止まるその瞬間まで彼女の動作を見つめ続けていた。一瞬でISを格納した浅草は、汗一つかかずに涼しげな顔で千冬さんを初めとした私たちに一礼した。その動作はまるでショーに立ち会った客への振る舞いで、見物料金を取っても問題無いのではないかと思ってしまうくらいに優雅なものだった。

 突如、感動して立ち上がってしまった者の如く拍手の賞賛が一斉に行なわれた。中には浅草の高難易度ターン集に感動して泣いてしまっている者が居たり、思考を停止したように拍手をし続ける者が居たり、代表候補生という別次元の存在に尊敬と憧憬の念を送る者も居たりと、その反響は凄まじいものだった。

 

「ふっ、文句無しの見事な物だったな。これがお前たちの行き着く先だ。確りと覚えておくが良い。では、これより訓練機を実際に使用して上昇と下降の訓練を行う。一斑から順に番号順で格納庫からISを運び出せ。迅速にな」

『はいッ!!』

 

 誰もがISに乗りたいと願った瞬間だったからか、その返答は見事なまでに重なった。そして、全員が全速力で格納庫へと走って行く光景に千冬さんは苦笑していたのを一瞥して、私もその流れに乗って格納庫へと急ぐのだった。

 そう、まるで初めて剣道で勝利した時のような高揚感が胸を高鳴らせ、玩具を貰った子供の如く私の心は揺れていた。ISを作り出した姉さんのせいで味気無い青春を過ごしていたのもこの一時だけは忘れていたかった。

 今はただ、この心地良い感覚に足を進めていたいと、願ってしまう程に私たちは熱中していたのだった。




更新が遅れた理由は一重に友人に勧められたマインクラフトのせいです。
三千円の価値はありますね、アレは……。

尚、玉鋼の三角錐のイメージは△様のアレです。


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