IS~暁に浮かぶ白を忘れない~   作:不落閣下

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14――決意する。

 いやはや、昨日は突然飯の席で鈴が気絶してびっくりしたな。肩に寄り掛かって来たと思ってドキリとした矢先、白目向いてガクガクと震えていた鈴を見てしまったんだから。ガチでびっくりした。IS学園の食事に当たったって事は無いだろうし、浅草さんが言うには「疲れが溜まっていたんでしょう」って見解らしいしな。……まぁ、その後いつも通りに完食してぬいぐるみを持つかのような軽さで鈴を横抱きにして保健室に連れて行ったのは色々と慣れちゃった俺たちでも驚いたけども。浅草さんの奇想天外さはもう慣れたもんだしな、けど間近で見るのとは少し違って見える。不思議なもんだ、本当に。

 そう言えば、今朝の浅草さんは何処か上機嫌だったな。こう、何かを剥がす様な仕草をしてニヒリと少しだけ笑っているのはかなり恐ろしいナニカだったけども。尋ねてみれば「上手く剥がせたので少し嬉しくて」と言っていたからシールか何かでも張り替えてたのかな。まさか生爪だとか皮膚だとかじゃないだろうし、そんなヤクザを越えたナニカをしている訳が――、

 

 ――本来は秘密裏に貴方に手を出す輩を始末する予定でしたが――

 

 ――うん? あれ、浅草さんかなーり物騒な事言ってた気がする。手を出す輩の始末って……、……………………んん? 撃退じゃなくて、始末? ふと脳裏に思い出すのは浅草さんの横乳――、じゃなくて! 拳銃だった。日本政府からの護衛と言うのもあって、立場的にも持っていて不自然じゃないけれど……。いや、それに加味するとすればあのほっそりとした指――じゃない! あの手肉刺の硬さは相当に使っている証拠になるんじゃないだろうか。

 …………うん、深く考えない事にしよう。これはまだ俺には早い気がするし……。

 それに、仮にそうだったとしても、浅草さんは浅草さんだ。頭ごなしに否定するってのは筋違いって言うか、何と言うか……、嫌だ。俺にとって浅草さんはIS学園での救世主めいた人物でもあるし、それに……、なんか、放っておけないんだよな。雨に濡れてる狼みたいな感じで、こう、そっとこっちを窺っているような、そんな印象を思い浮かんでしまうくらいには、気に成っていた。

 取り敢えず、もう放課後だし予定だったISトレーニングのためにさっさと着替えなくちゃな。それにしても男子更衣室がアリーナにしか無いってのは不便だよな。千冬姉に今度相談してみようかな……。けど、千冬姉も千冬姉で何か疲れてるんだよな。家の部屋の惨状からしてずぼらだし、何よりも女を投げ捨てているって感じの具合だし、うーん、相談の時についでに部屋の片付けをした方が良いかもしれないな。そんな事を思いながらぴっちりとしたISスーツを身に付ける。……それにしても股間の所を硬い材質にしてくれてて本当に助かったぜ。スクール水着とあんま変わんねーんだよなー、女子のISスーツは。ほんと目に毒だぜ。浅草さんのなんてゴツイ印象はあるけどもスリムで尻のラインがくっきりしてるから本気で焦った。何とか硬い材質が頑張ってくれたから良いが、違ったら生き恥を晒していたに違いなかったからな……。発育が良い女子も居るけど、別に千冬姉で見慣れているからあんまりこう、興奮しないんだよなぁ。どっちかってーと、浅草さんみたいに美脚美腕美乳美尻美顔って方が……、うん? あれ、今思えば俺のタイプ総取りしてないか浅草さんって。性格も身体もかなり俺好みだし……、っと、やべぇ、時間使い過ぎちまった。

 一端思考を切って急いでアリーナの出口からフィールドへと足を進める。其処には仁王立ちして腕を組んで空を見ていた浅草さんと何やらでかい胸を張り合って口論している箒とセシリアの姿があった。

 

「だから言っているだろう! 一夏の武装は近接戦のみなのだ。ならば私と模擬戦をするべきだろう!」

「まだ分かりませんの? だから、ですわよ。一夏さんには射撃武装の扱い方を知って対処法を知るべきですわ。わたくしと射撃訓練をした方が宜しいでしょうに」

「……はぁ、お二人とも。織斑くん来たみたいですし、そろそろ良いですか?」

「む?」

「あら?」

「い、いやー、悪い悪い。ちょっと遅れちまったみたいだ」

 

 そう言えばいつもこの二人言い争ってるよな。結局浅草さんの訓練メニューを消化するってのに、毎度毎度飽きないな……。ん、でも流石に訓練ばっかりってのも飽きるよな。そろそろ模擬戦とかもした方が良いんじゃないのかな、とは思うけども。そんな俺の思考を読み取ったのか、浅草さんは一つ溜息を吐いてから、やれやれとジェスチャーを加えた。え、其処まで呆れられるの俺。と、思ったが、どうやらその矛先は二人に向けての様だった。

 

「お二人ともISバトルに関しては織斑君同様にど素人なんですからメニューに従ってくださいね。どちらの主張も今の織斑君には適していませんし、何より射撃兵装の説明はとっくの昔に教えてありますので必要無いですから」

「――ぐっ」

「聞き捨てなりませんわね、その言葉! わたくしが素人ですって?」

「……はぁ、良い機会ですし、少し揉んであげます。織斑くん、篠ノ之さんは見学していてください」

「…………分かった。行くぞ、一夏」

「お、おう」

 

 それにしても箒の落ち込み様が酷い。と、言うよりも躾けられた犬? 何となくだが箒は浅草さんの言葉に対して従順って言うか、素直に聞いている感じがするな。まぁ、箒も浅草さんの授業を受けて自分の駄目さを感じ取っているのだろう。何せ、俺も一度や二度叩き潰されたからな、言葉で。ぐぬぬ、何でIS用語は何でああも難解なんだ。ISペルソナ仮説だとかシステム的ロジックエラー理論だとか一目見て分かり易いのをチョイスしてくれりゃ良いのにさ。

 箒に左腕を掴まれながらアリーナのピットエリアへと戻って、待機関係者用閲覧機材を起動して……、エキシヴィジョンモードを展開して内部の様子を空中投影モニターに投影してっと。よし、使い方はばっちりだな。浅草さん曰く、他のIS操縦を見て学ぶのも勉強の内だって言ってたからな。邪魔にならないように密かに勃発した箒とセシリアの模擬戦をよくこうして見ていたもんだ。それにしても、箒強くなったよなぁ。まだ戦績はセシリアが勝ち越してるけど、三割くらいは勝ってるしな。流石に専用機と訓練機じゃ馬力と武器が乏しいからなぁ。BT兵器の二基以上の展開を縛ってるとは言え中々の勝率だろう。ああ、俺? 浅草さんから模擬戦を禁止されてますがナニカ? いや、燻ってはいるけども、浅草さんにしか分からない理論で俺のために禁止しているんだろうから文句は無いんだけども……、ちょっと良いなぁとは思っちゃうぜ。んー、でも最近漸くマニュアル操作も慣れてきたし、そろそろ次の展開を望んでも罰は当たらないとは思うけどもさ。

 っと、二人が位置に着いたみたいだ。それにしても、セシリアのブルー・ティアーズと違って浅草さんの玉鋼はスリムだよな。アンロック兵装が無いってのもだが、それ以前にパワードスーツのような機能美的なフォルムなんだよな。けど、以前説明された装甲はかなり厚いって話だけど、そんな感じには見えないんだけどなぁ……。

 

「では、公式戦に乗っ取り、エネルギーは500を想定、禁止武装は無し、撃墜ルールを適用します。勿論ながら私の玉鋼にはリミッターが掛かっておりますが、気にしなくて良いですよ」

「……確か、軍用ISと言うお触れでしたわね」

「ええ、第二世代IS総合支援軍用機体、それが玉鋼の名称区分ですよ。軍事的使用をアラスカ条約によって禁止されていますが、それは他国への侵略に用いる事を前提としたもの。我が日本の第九条に乗っ取り、専守防衛の要としての運用をされていますので問題は有りません。では、始めましょう。合図をお願いします」

 

 あれ、第二世代型? って事はセシリアのBT兵器みたいなのは積んで無いって事か。でも、浅草さん言ってたもんな。第四世代型が出ても第三世代には勝てないって。つまりは、そう言う事なんだろう。どんな戦いが始まるんだろうか。少し、男心が擽られてわくわくしてきたぜ。

 アリーナ管制用の端末を用いて箒が合図となるスイッチを押した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 開始のブザーが鳴るその瞬間、わたくしは瞬時に身構えました。脳裏に浮かぶのは先輩がくれたあの映像記録の悪夢。売り言葉買い言葉の勢いで模擬戦となってしまいましたが、良い機会だったのでしょう。こうしてあの日本の悪魔ことミス浅草と試合する機会を得れたのですから。ふぅと息を吐き、戦闘に備えてスターライトmkⅢの銃口をミス浅草へ向けました。

 さぁ、開戦の合図は鳴りました。見せてあげましょう、イギリスの代表候補生の実力を!

 

「先程の言葉、撤回させ――」

 

 瞬間、右眼に激痛が走り、失明するのでは無いかと言うぐらいの衝撃を受けましたわ。

 一体何が――そう考える暇無く無意識に身体を動かして避けた、筈なのに、次は利き腕の右肩を装甲の合間を縫った精確無比な一撃によってやられた。アラート音は一切鳴っていないと言うのに何故――、そうミス浅草を見れば何時の間にか(・・・・・・)構えていたアンチマテリアルライフルの銃口を此方へ向けている姿があり、その瞬間に悟りましたわ。ミス浅草は狙撃にISのロックオンシステムを用いていない、と。それ即ち、経験と実測による射撃と言う事。

 右眼に? 数センチの隙間しかない装甲の合間に? そんな芸当を同年代が?

 そして、三発目の弾丸はISスーツにしか護られていない腹部、それも位置的に肝臓の上を的確に撃ち抜かれ、あまりの衝撃に苦悶の表情を浮かべたわたくしに見えたのは、残り残量50と言う絶望的なエネルギーの消費具合でしたわ。規格外にも程がある、そんな事をぼんやりと思い浮かべていたわたくしの思考はすでに激痛によって横殴りされていて朦朧でした。そして、四発目を無様に晒しているお腹の上部、胸と胸の間に受け、弾け飛ばされる様にして意識が――。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 それは、たった五秒(・・)の出来事だった。開始のブザーが鳴ったと思った瞬間、セシリアは顔を突如として後ろに逸らし、今度は右肩を押し飛ばされたように仰け反って、「く」の字に折れたかと思えば、くるくると空から落ちる紙のように撃墜された。

 ちょ、ちょっと待て。まだ、ブザーの音が鳴ってたんだぞ? ブザーが鳴り終えたかと思えば試合終了のブザーが鳴っていた、いや、これ本当に何が起こったんだ。浅草さんが落ちて行くセシリアを途中で回収し、此方へと戻ってきた。隣で突っ立っている箒も何があったのかを未だに信じられない様子で口を開けて放心していたし、先に立ち直れた俺は浅草さんに尋ねてみることにした。

 

「え、ええと、今、何が起きたんだ?」

「はい、そうですね。あんまりにも隙が在り過ぎて困るくらいでした。なので、スコープを覗く右眼、支えとなる右肩、痛覚的アドバンテージを得れる肝臓付近、そして気絶させるためにハートブレイクショットとして心臓を撃ち抜きました。銃身を取り替える必要は無かったみたいですね。それにしても、よく分からないものです。何故あんなにも露出をしているのか。危険でしょうに。仮にこれがリミッターを掛けられていなければ容易く最初の一発で脳へ貫通し殺せていましたよ」

「せ、セシリアは大丈夫なのか!?」

「大丈夫ですよ。一応弾丸を全て実弾ではなくゴム弾へ替えていますので、失明の心配は無いでしょう。まぁ、仮に実弾だったらアンチマテリアルライフルの衝撃でしたら失明は確実でしょうけどね」

 

 そうあっさりと言う浅草さんは何処か苦笑いをしていたが、此方としては冷や汗だらだらものである。と言うか、ゴム弾四発でISって落ちるのかよ。最強神話は何処へ行ったんだ? 危険が危ないって感じで足を生やして逃げてしまったのだろうか。そんな疑問を見越したのか浅草さんは続けて説明してくれた。

 

「織斑くん、不思議に思っているようですが、ISは万能じゃないんですよ? 少し使い勝手が良い兵器ってだけで、ああも簡単に落せるのですから。と、言うのも、そもそもISって戦闘用に作らなければあの程度の出来なのですよ。オルコットさんのブルー・ティアーズは研究開発用の試作機タイプ。まぁ、そもそも装甲で確りと肌を覆っていない時点でナンセンスですし、専用のISスーツで無ければこの程度(・・・・・)の威力でも絶対防御を発動させますし、何より生身の部分に当たればその分絶対防御によりエネルギーはあっさりと枯渇できます。それが目の様な貫通すれば脳に至るような箇所なら尚更に。恐らく、最初の一発目で三百五十相当、その他五十を三発でジャストキルです。生身の部分だなんて作るからいけないんですよ、死にたいんですかね、……本当にくだらない」

 

 そう最後の一瞬だけ底冷えする様な顔で言い捨てた浅草さんは、心底呆れた様な表情で溜息を吐いてセシリアを見ていた。いや、セシリアじゃなく、その耳のイヤーカフスを模したブルー・ティアーズを見ているのだろう。既にエネルギーエンプティ状態となって武装解除されているセシリアをそっと休憩用に設置されているのであろうベンチへ寝かせた浅草さんはふっと玉鋼を解除した。そして、露になるのは曲線美と形容すべき浅草さんのしなやかなフォルムをぴっちりと包むISスーツ。セシリアや俺のISスーツの様な肌の露出と言ったものが一切無いもので、先程の説明を聞いているためか不思議と納得できた。詰襟よりも確りと首元がその顔側の根元まで覆っており、四肢の間接部分にはインナーとトップスの様な相互間性のある二重構造で肌の部分は絶対に見えなかった。

 そう言えば、浅草さんの玉鋼はそもそもがフルスキン、全面装甲と呼ばれるタイプのISで、弱点と成り得る箇所である顔もあの三角錐のフェイスガードで首裏まで確りと護られている。女子の間ではフルスキンタイプのISは格好悪いと言う印象ではあるが、安全面と言う立場で見ればそんな些細な事は如何でも良く感じる程に機能然としている。

 

「……なぁ、浅草さん」

「はい、なんですか?」

「俺の白式もなんだが、ISスーツも浅草さんみたくならないか?」

「……ふふっ、そうでしたら即急に打診しておきますね。織斑くん、漸く自分の立場を理解できたみたいで良かったです。護衛対象がこうも無防備だと此方も一苦労ですから」

「あ、浅草。その、私もお願いできないだろうか」

「ええ、構いませんよ。何ならお揃いにしておきますから、安全面ではご安心頂ける事でしょう。何せ、このISスーツは暑さと寒さの耐久性は抜群の上、防刃防弾面でも太鼓判の性能を誇ります。IS用チェーンソーでも十秒は耐える代物ですからかなり信頼できますよ」

「あ、IS用チェーンソーなんてあるのか。……因みに、これにやったら?」

「一瞬で切断されますね。たかが一般企業のISスーツだとナイフと拳銃程度の性能しか無いですよ?」

「「…………宜しく頼みます」」

「はい、承りました。費用の方は此方で負担しますので、お二人は払わなくて大丈夫ですよ。お二人とも私よりも命の価値が高いので、その程度であればあっさりと申請通るでしょうし」

「「……え?」」

「では、そろそろ訓練に戻りましょう。一分一秒は惜しまないと損ですからね」

 

 今、かなり聞き捨てならない事を口走らなかったか? 命の価値?

 そう訓練用のエトセトラの準備をし始めた浅草さんの背中を見ながら、俺たちは目をぱちくりして唖然としていた。見ている世界が違う、とは分かっていたが、こんなにも遠いだなんて思ってやしなかった。自分の立場。俺の立場ってのは、つまり、人類初の男性IS操縦者と言う肩書きの事の筈だ。ああ、そうか。人口四十六億もある中で、たった一人だけの操縦者って事だ。その希少価値は言うまでも無く高くて、浅草さんの様な立場にある人たちからすれば眉唾な類の重要価値と言う事なのだろう。

 今の俺は日本によって護られている立場にあり、その日本から派遣された護衛が浅草さんで、その浅草さんは平然と俺の価値が自分の命よりも高いと言った。つまり、万が一の場合、庇われて生き延びるのが俺で、死んでしまうかもしれないのが浅草さん、って、事なんだよな?

 つまり、俺は、まだ、護られてるまま、って事かよ。千冬姉に、今は浅草さんに。

 そんなの、嫌だ。俺だって、誰かを護ってやれるくらいに強くなりたい、何よりも――。

 ――そんな格好悪い男に成り下がりたくねぇッ!!

 今、ISの独壇場により女尊男卑の風潮になっているって事も、その片棒を千冬姉(しろきし)が担っているって事も、箒のお姉さんである束さんのしでかした事なんだって事も、分かってる。千冬姉が身を粉にして護ってくれて、のうのうと生きてきたってのは、痛いくらいに分かってるんだ。だから、俺は自分を自分で護れるくらいの力を得なくちゃならない。そのために、ISは必要不可欠にして、一番身近にある最適な武器(・・)なんだッ! ああ、そうさ。その武器を操って人を殺すのも人で、その人の一人に俺は立っているんだ。

 自分の立場を知るって事は、俺の行動によって起きた全ての責任を負う覚悟を決めなくちゃならないって事なんだろ。浅草さんは、遠回しに教えてくれてたんだ。俺がどれだけ護られてて、どんなにやばい立場で居るのかを。崖っぷちってレベルじゃない、更に其処に四面楚歌ってのも入れなくちゃならないんだろう。浅草さんは言っていた。俺が死んで得をする人たちが居るのだと。俺が生きる事で得をする人たちが居るのだと。俺は、実験に使われるようなモルモットの様に死にたくない。だから、ケージを食い破るようなハングリー精神と牙を持たなくちゃならない。そして、それを得れるであろう期間はIS学園に所属しているこの三年間しか無いって訳だ。

 なら、先ず浅草さんに言わなくちゃいけない事がある。

 

「……おや、良い顔をするようになりましたね。その顔はとても良いですよ」

「ああ、俺も腹を決めなきゃならないってのを実感できたんだと思う。だから、先に言っておくぜ浅草さん」

「何ですか?」

「俺は絶対に君を死なせない。絶対にだッ!!」

 

 その言葉を聞いた浅草さんは目を見開いて驚愕している様でかなりレアな顔を晒していた。幾度か瞬きをした後に、数秒瞑目してからふっと微笑を浮かべて、初めて見る表情(うれしそうなかお)で言った。

 

「期待、してますよ?」

「おう、任せとけ!」

 

 その時の俺は人生で一番の満足感を感じていたと思う。そして、少し冷静になった反面、ふと思う。あれ、これプロポーズと紙一重じゃね、と。人よりも聡いであろう浅草さんは確りと俺の言葉に込めた意味を理解してくれての言葉だろう。けれど、此処には俺と浅草さん以外にも、ぶっ倒れているセシリアを除いたとしても箒が居る。其方へちらりと見てみれば、どさりと床へ倒れて卒倒している箒の姿があった。俺と浅草さんはそんな箒を見てお互いの顔を見やり、肩を竦めて苦笑いで少し笑ってしまった。

 

「……しっかし、何で倒れてんだ? ……ああ、もしかして、いきなり大声を出したから、とかか?」

「……本当に報われませんね、まぁ、それはそれで私は楽なのかもしれませんが……」

「へ?」

「いえ、何でもありませんよ。それでは、何やら私に対して宣戦布告してくれちゃった織斑君には――」

 

 浅草さんは普段見れないような柔らかな笑みを浮かべてしれっと言った。

 

「――地獄の訓練編へと突入して貰いましょうか」

「……え゛」

「貴方には、私の全てを教えてあげます。……それは、とても、とても辛い道程です。それでも貴方は自分の信念を貫けますか?」

 

 その時の浅草さんは何処か、冷たくも儚い印象を受けた。触れてしまえばそのまま割れてしまうような、そんな薄い氷の様な雰囲気は何処か寂しさを感じる。けど、それがどうした。俺はこの子を死なせないと決めたんだ。俺を庇って死なせるくらいなら、全力で食い縛って耐えて二人とも生き延びれるくらいに力を付けてやるぜ。

 しっかし、俺の信念ってのは何だろうな。俺の中のこれは信念ってよりは、信条って感じだし、芯になるようなもんはまだ無いような気もする。数秒考えてもパッと出ないって事はまだ無いんだろう、きっと。こう言うのは何時の間にかあるってのがお約束ってもんだし、何より信念ってのは培って生じるもんだと思うんだ。俺はまだ始まったばっかりで、きっとまだまだ未熟な子供の立場でしか無いんだ。いつか、浅草さんに誇らしげに言える様な男になってやるぜ。

 

「うーん、正直分からん!」

「……は、はぁ」

「でも、もう決めた! なら、もうやるっきゃないだろ! 泣き言はいつだって言えるけど、決意ってのは腹括ったそん時こっきりなんだからさ。やると決めたらやり貫く、そういうもんだろ。こう言うのは」

「……ふふ、…………何だ、織斑君もやっぱり男の子なんですね。少し、安心しました。なら、ご期待に沿える様、私も少しは入れ込んであげますよ」

「へ?」

「ああ、そもそも私今の今まで日本政府のお抱え施設でお世話になっていましたから、学校での生活とか良く分からないんですよ。なので、貴方とは護衛の立場で接していただけで、友人だとかクラスメイトだとも思ってませんでしたね。訓練や指導も上からの命令に従っていただけですし」

「…………え」

「なので、初めて(・・・)私を護ると言ってくれた貴方に、少しだけ興味を持てました」

 

 誇っても良いですよ、と言外に言っている様な嬉しそうで楽しげな表情でにこやかに笑った浅草さんはとても、……綺麗だった。正直言って、見惚れていた。このまま見詰め続けて居たいと、心の奥底で想ってしまうくらいに、彼女の笑顔は俺の心に残った。何と言うか、浅草さんの新しい一面をまた見れた気がする。と、言うよりは先程の話の内容からして、距離が縮まった、のか? 護衛対象って事は仕事の相手としか見てなかった訳だから、他人当然だったって事だよな、きっと。だから、今は友人……、は少し自惚れか、知り合い程度にはなれたのかな?

 そう、思いたかった。




浅草さんが少しデレました。やったね、一夏。攻略ルートが進んだよ。

ISのロックオンシステムを用いた狙撃(原作の対セシリア戦)ではアラートが鳴るけれども、ロックオンシステムを用いないある意味原始的とも言える「操縦者がISの補助無しで撃つ」と言う方法では鳴らない、と言う事にしてます。
初期セシリアとの戦闘の際に白式がロックオンされていると察知できている等と言う点から、ISのロックオンシステムで相手をマーキングした場合のみアラートが鳴る、と言う事と解釈しました。
察知出来てるって事は何かしらの赤外線めいたナニカが照射されてるんじゃないでしょうかね。赤外線ポインタで赤い点浮かび上がってたら狙われてるの分かるよな、ってぐらいの認識でOKだと思いました。

まぁ、アラート鳴りっ放しってのもある意味怖いんですけどね。確実に精神的に追い詰められる気がします。兵器を運用しているISとの戦いなら尚更に。セシリアの先輩はそんな感じで恐怖を追い立てられた挙句に、手を抜かれて嬲り殺しにされた様な感じですので一生のトラウマモノでしょう。きっと語尾に「日本万歳」とつけてるに違いない(ンナワケナイ

ああ、因みに浅草さんが使用しているアンチマテリアルライフルは「IS用」です、基本運用がそもそも対ISを前提に改良されている様なタイプですので、生身で受ければ一瞬で「ミンチより酷ぇや……」状態になるでしょう。ゴム弾で良かったね(錯乱
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