IS~暁に浮かぶ白を忘れない~   作:不落閣下

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15――自覚する。

 甘酸っぱい雰囲気も束の間、その後めちゃくちゃトレーニングした。

 自分でも何を言っているのかが纏まらない程に疲労困憊であり、今日日朝の浅草さんとのトレーニングに付き合っていなかったら其処で口から魂抜け出し掛けてる箒みたいになるところだったぜ……。さて、ぶっちゃけ身体中が痛いが、夕飯を食べ終えた後は風呂入ってから浅草さんの座学があるだけだから肉体的には問題無い。……そう、問題はあるのは俺の知数、身体を動かすのは得意だが勉強は苦手だ……。ともあれ、浅草さんの講義はとても分かり易いため辛くは無いし、むしろ楽しいくらいだ。そのためか、最近は苦手がやや苦手くらいになった気がする。具体的には山田先生の補習が必要にならないくらいには進展できたと思う。……山田先生に聞くよりも浅草さんに聞いた方が分かり易いし速いだなんて言えない。千冬姉は千冬姉で忙しそうだし、それに弟だからと甘やかしする様なタイプの性格じゃないからなぁ。

 講義は大体盗聴機などの機類が浅草さんによって駆逐されている俺の部屋兼箒との相部屋で行なわれる。前は隣の浅草さんの部屋でやっていたが、勉強終わりに箒が撃沈するので動かす手間を省くために此方へ移った。と、言うのが昨日までの俺の見解であったが、先の出来事を省みるにセシリアが参加し始めた頃からだと気付ける。そう、セシリアはクラスメイトであるが立場で言えばイギリスの代表候補生。政治的なエトセトラなどの観点から恐らく俺には分からないレベルでの危機管理があるのだろう。そのため、ド素人であると判明している俺と箒ならまだしも、他の代表候補生までをも懐に入れるつもりは無いのだろう。

 

 ――貴方とは護衛の立場で接していただけで、友人だとかクラスメイトだとも思ってませんでしたね。訓練や指導も上からの命令に従っていただけですし。

 

 なーんて、そもそもの足場が崩れてしまいそうな事まで言われたしな……。ま、まぁ、悪く思えば思う程切りが無いし、逆に考えよう、これからは本当の関係なのだと。それにしても、施設育ちで学校にすら行っていないと言う事は……、え、もしかして俺が始めての異性のクラスメイトって事か? もしかすると異性の友人も俺が初めてだったり? あ、あはは……、流石に自惚れが過ぎるってもんだよなそれは。けど、そうだったら良いな、とは思う。こう、何と言うか、……嬉しい、な。

 って、何を考えてるんだ俺は。

 ……けど、あの時の浅草さんの笑顔、可愛かったなぁ……。白式が確りと保存してくれていたので、網膜可視フィルターでいつでも見れるのが地味に嬉しい。と言うか、近年稀に見る癒しだった。こう、疲れた時にみると癒されるんだ、これが。きっと可愛い愛娘を見る父親が仕事を頑張ろうと思うアレと同じなのだろう、そう、瞑目した状態でぐったりしている俺は浅草さんの写真を見ながら思ったのだった。まる。なんて事を考えていたらノックの音が聞こえた。

 

「大丈夫だぞー……」

「そういう箒さんが大丈夫じゃなさそうですが……、お邪魔致しますわ」

 

 入ってきたのはセシリア。目元に医療用のアイパッチをしているのが痛々しく感じられるが、その雰囲気はいつも通りだった。え、いつも通りなのか。普通に受け止めてしまったが、こう、落ち込んでいるのかと思っていたのでかなり意外だった。それが顔に出ていたのか、後ろに居た浅草さんに押し込まれる様な形で入室したセシリアは苦笑気味に言った。

 

「正直心に来てますわよ? けど、その、何と言うか別次元過ぎた、と言うのでしょうか……。あそこまで完敗するといっその事清々しい気分ですわね」

「ああ……、成る程。俺も格上の試合相手とやって綺麗に一本取られた時は清々しく負けた気分だったし、そういうもんか」

「ええ、悔しいすらも思えぬ程に完敗でしたので……。まぁ、それが功を制したと言うべきか、こうして勉強会に同席を許されたのは行幸ですわね。……そう考えると複雑ですが」

「偶にしか許可されてなかったもんな。特に俺の白式に関連する時のは特に」

「当たり前でしょう。いつでも処理できるとは言え、最重要機密扱いですから。……まぁ、代表候補生としての在り方もなぁなぁであると分かったので、機密扱いの情報は遮断させて貰いますが、普段の勉強会には参加を正式に許可する事にしました。……まぁ、イギリス政府から同盟の打診があれば良かったんですけどね」

「うぁ、そんなストレートに言うのか……」

「勿論ですよ。今日はその点に関しても論点に組もうと思っていますのでお楽しみに」

 

 そう浅草さんはほんのりと微笑みを浮かべてからホワイトボードや水性ペンなどの準備をし始めた。……微笑んだ、だと? 浅草さんの隣に居たセシリアは此方へとすたすた歩いて来たので恐らく見ていないのだろう、すると先程の微笑みを見れたのは俺だけだ、と言う事になる。……何だろう、この形容し難い胸の奥から込み上がってくる物は。嬉しさと言うか喜びと言うか、ああ、思い出した。これ、優越感か。そう、か。友人と言うカテゴリに入るだけでこれだけ変わるものなのか……。やばい、凄い嬉しい。何と言うか、俺だけに向けられているのだと思うと頬がにやけるのも仕方が無いと思うんだ。浅草さんのデレ、破壊力やべぇ……。そんな事を右手で口元を押さえながら思っていると既に準備を終えた格好の浅草さんの姿が視界に入った。

 

「では、勉強会を始めましょうか。今回のテーマは、代表候補生とは、です。IS学園に所属している代表候補生はそう多くはありません。世間一般的な見解は、では織斑くん」

「え、ええと、各国の代表の候補で、エリート?」

「まぁ、そんな感じで曖昧です。これは態とその様に情報規制されている類のものですので、一般人であった織斑君にはそう捉えていて問題ありません。では、次にオルコットさん」

「そうですわね。代表候補生は各国の代表の候補である、と言うのは当然の事ですが、軍部機関への所属が義務付けられており、正確には軍人である事が多いですわね。また、専用機が配属されるのは候補生の中から選ばれますわ。全員が確保する程の量はありませんし、また代表候補生にも各々の部門がありますわ。わたくしはテストパイロットとしての役目を負って居りますし、ミス浅草は恐らく戦闘部門の方なのでしょう?」

「概ね正解、と言う所でしょうね。流石に詳細は語れませんが、確かに戦闘系の部門である事は間違いありません。代表候補生とは言うなればISに関するエトセトラを政府から委任される立ち位置にあります。ISに用いられるパーツの開発部門や整備に特化した工学部門、各国のイメージマスコットの様な立場の広報部門、ISバトルに重点を置いた戦闘部門など、様々な部門に大別できますが、他の部門の仕事も兼ねる事も少なくありません」

 

 浅草さんは丁寧に説明を交えながらホワイトボードに組織図を書いて行く。各国の政府と言う枠組みに軍部と民間と言う円を二つ加え、その二つが重なる地点に候補生と足した。成る程、部門と言うのは派閥みたいなもので、戦闘に偏るなら軍属に、開発や広報へ偏るなら民間企業と言った具合だろうか。恐らく、テストパイロットと言うセシリアの立ち位置は軍寄りの開発部門と言ったところか。ブルー・ティアーズが開発用試作機と銘打っているあたり、正解に近いのではと思う。流石に詳細は浅草さん同様に機密だろうから深く聞くのは少し拙いか。隣で「ほぉ」と感心した様子でメモを取っている箒を見る限り、一生徒としてはそれが正しいのだろう。しかし、よく考えれば見えてくるものもある。どうして浅草さんが機密などを重要視するのかが。

 軍属と言う事はその在り方は戦闘行動が主だろう。そして、軍隊規模、集団戦を見据えているならば最大の物として戦争が挙げられる。第二次世界大戦以降、冷戦と言う形で小康状態を保っていた軍にISと言う万能兵器が参入したらどうなるか。浅草さんを見ていれば分かる。

 

 戦争が起きる可能性の火種となる。それも、松明程度では無い、花火に匹敵する大火種だ。

 

 その際、軍属のエリートとしてISに触れる機会の多い代表候補生は筆頭に立つ人物たちであるのは間違い無い。つまり、代表候補生と言う肩書きの本質は――。

 

「ですが、そんなものは国の流した表向きのプロパガンダに過ぎません。言うなれば、ISと言う兵器のセミプロフェッショナルなのですよ、候補生と言う立ち位置は。代表候補生として命じられる訓練には必ずISによる戦闘行為が存在します。つまり、対IS、対各国の所有するISとの戦闘を仮定されているのですよ。言うなれば、兵士、戦争の筆頭となるように調整されるのです」

 

 ああ、やっぱり、と俺は苦々しい表情を浮かべるのを我慢して噛み締める。理解はしていた、いや、していたつもりだったんだ。ISは、刃物と同じで人によって殺しの道具にもなるし、万能な宇宙服の代わりにもなる代物だ。しかし、ISは女性しか使えないと言う最たる欠点とその数の稀少さがこれを戦闘寄りに助長した。言うなれば、ISとは配られた核に等しいんじゃないだろうか。

 

「篠ノ之束博士によって配られたISの数は467機、とされていますが本当にそうなのかは定かではありません。千に満たず、五百にすら満たないその希少性は正しく各国のパワーバランスの崩壊を助長しました。アラスカ条約と言う核抑止論めいた内容の条約により、表立ってISの軍事転用は禁止されましたが、ISバトルのための調整や開発と言った口実により推し進められているのは当然の理と言えましょう。人は、誰しも己で無い者を排する嫌いを持つ、とされています。それ故に戦争は必ず引き起こされる事でしょう。何故なら、各国の持つISの所有数は明らかに偏っているためです。資本となるマネーパワーの差とも言えますね。では、何故日本にはIS学園と言う無独立施設があり、多くのISが配備されているのか。分かりますか篠ノ之さん」

「む?! …………平和、だからか?」

「遠からず、と言った所ですが概ね正解です。正確には第九条を挙げて欲しかったですが、根本的な間違いではありませんので問題ありません」

「……ほっ」

「日本が第二次世界大戦以降大きな争いに巻き込まれた事はありませんでした。……ですが白騎士事件が起きてしまいました。開発者の生まれの地としての権威を得ると同時に、この世界情勢を作り出した戦犯となってしまった訳ですね」

 

 浅草さんの表情がやや仄暗くなり、明らかに憤りを瞳に灯していた。苛立ちと言うべきか、浅草さんにとって白騎士事件は何らかの地雷である事は間違い無い様だ、と見て取れた。端整な顔に顰めた眉の寄りが出来てしまうのは宜しくない。雰囲気を変えるために質問をしてみた。

 

「その責任を取るためにIS学園が出来たって事か?」

「……ええ、そうなりますね。日本は篠ノ之束博士の作り出したISの責任を負うために、率先として何とかしようとした結果、アメリカに背を突かれる形でIS学園の設立となりました。これは、日本が掲げる第九条、『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない』と言う非戦争を推奨する条例があった事が決め手だったのでしょう。これにより、各国はISと言う万能兵器を表立って所有しつつも、日本と言う非戦闘区域的な場所にISパイロットの育成場所を建設する事で戦争を主動する事は無い、と言う意思表示をしている、と言うポーズが取れる様になった訳です。そのため、今でも日本国内におけるISでの戦闘行為は今の所露見または表立っていません。これにより、日本は各国の緩衝地帯となった訳ですね。そのため、ISの情報が集まる最先端と言っても過言では無い場所となりました。それ故に日本政府へスパイを送る国も多かったのも事実です。まぁ、そこらへんは割愛しましょう」

 

 質問を受け取って少し落ち着いたのか、浅草さんは多弁に説明を続けながらホワイトボードに第九条の二文を書き記す。スパイ云々を割愛したのってつまり、始末したから、って事で良いんだろうか。今までの浅草さんの言動を省みるに概ね正解と言うか、見たくない一面を見てしまった様な気分だ。けど、よくよく考えてみれば浅草さんを責めるのはお門違いも甚だしいんだよな。逆に、スパイが跋扈して日本の立ち位置がやばくなったりしたら困るのは俺たち日本人だし、それにIS学園には各国の代表候補生が居るんだ。その娘たちがお国事情で暗殺されたりだなんてしたら色々とヤバイとも考えられる。……その暗殺対象の筆頭であろう俺が言うのも何だろうって感じだがさ。俺を守るために浅草さんが手を汚しているのだとすれば、俺は、感謝しなくちゃならないんだ。嫌な事を、人道にそぐわぬ事をさせてしまっている事を、恥じるとまでは言わないが、俺だけは確りと理解していなくちゃならないんだ。

 ――そして、それをさせないために私が居ます。

 ああ、俺は、浅草さんに守られているんだ。

 だから、浅草さんを守る俺でありたい。守られるだけじゃ、今までのままじゃ、嫌だから。

 だから――ISを武器として持つ事にしたんだ。万能な宇宙服じゃ無くて、便利なパワードスーツでも無くて。誰かを傷付けられる武器として、誰かを護るための武器として。俺は、刀を握るんだ。なぁに、それこそ大和魂ってもんだろ。護りたい人を護れるだけの力を、俺は、欲しいと求めたんだ。

 

「さて、次題としてはISバトルについて、でしょうね。ISバトルの筆頭となるのは専用機を持つパイロットが主になるでしょう。それは、意識ある無機物たるISを占有している物の特権にして、免れぬ宿命と言えましょう。私が言うのも何ですが、本当にISを主軸として生きるのであれば、誰かを殺す覚悟を持たねばありません。私たちが握る此れは、ISバトルと称してお茶を濁す言い方をしていますが、ほんの一握りの決意と知識があれば、あっと言う間に相手を殺す道具(・・)と化すのがISです。可笑しいと思わないのでしょうか、ISバトルは国際的スポーツと謳われた認識と言うのに参加者が握るのは人を殺すための銃や剣、挙句の果てには爆発物もまた兵装の一つだと認知される始末。言わせて貰えば、ISバトルとは来るべき日に備えた殺しの練習なのですよ」

 

 その最後の一言で部屋の空気が死んだ。いや、殺されたのだろう、誰にでも無い浅草さんに。凄惨な凄みを感じる笑みをひっそりと浮かべ、右掌に彼女だけが見えるのだろう何かを真下へ溢す仕草をしながら、片手で黒い水性ペンを圧し折った姿は誰もが凍り付いた様に見入ってしまった。

 そうか、これが、浅草さんの……。

 考えを纏める前に、理解が先に出来てしまった。これこそが、浅草さんの隠していた真実の一端なのだと。誰かを殺す道具(・・)となってしまったかの様に、生者に憧れを溢すかの様に、その一つ一つの言葉は確かな重みがあった。そう、それはきっと浅草さんの此れまで感じていた悲劇、なのだろうか。俺は、浅草さんの事を知らない。いや、知らな過ぎるんだ。求めていたつもりになって、追う事を、知る事の歩みを止めてしまっていたんじゃないかと思う。

 

「代表候補生と言う体の良い鉄砲玉は正しく鋼に包まれた弾丸であり、敵国の兵士、断言するならば軍人を殺す事こそが本分となる時代が来る事でしょう。何故、アラスカ条約と言う軍用禁止の条約がありながら、各国が挙って違反し軍益を貪るのかがわかるでしょう? 何故なら、彼らもまた焦っているからです。来るべき死神の戦列の成す軍靴の音が、彼らの耳に聞こえてくるのでしょう。ありもしない幻想に苛まれる様に、ひたりひたりと這い寄って来る戦禍の足音の幻聴が聞こえてしまう様に、彼らもまた明日の平和が一握りの現実であると理解しているからこそ、暴力(ちから)を求めた。ISバトルとは、彼らによるパワーゲームの前哨戦。如何にして敵国の兵器を潰し得る武装を作り出すか、如何にして敵国の兵士を殺し得る兵士を生み出すか、これに終息するのですよ。まぁ、その様に考えている国は何時だって余剰国、金を、軍を、力を持つが故の特権なのですから。そのため、敢えてガードを、そんなに意識していませんよとアピールするためにISの装甲を薄くしていたり、ファッション性をアピールするために華美で美麗なデザインを取ったり、パイロットの美貌をもアピールに用いて素肌を晒す様な格好をさせたりと色々としているようですね。因みに、オルコットさんの敗因の八割がこれに当たりますね。ISスーツを露にしていたり素肌の部分を晒していたりするとあの様に一瞬で決着が付きます。ISバトルの範疇であれば、私側がガチ勢と言った形容をされる立場にあるのでしょうね。…………まぁ、それでこそ私の意義に加味するのですがね」

 

 まるで戦前の演説をする指揮官の様に熱く灼く篤く、戦慄を言葉にして謳い上げる浅草さんの姿は恐ろしく見えた。けれど、それは闇に堕ちた堕天使の様な華やかさと怖れを纏う魅入られる様な妖艶さがあった。隣を見やればがくがくと膝どころか肩までも震えているセシリアと箒の姿があり、恐らく浅草さんの言葉が心臓まで達してしまったのだろう。こうして客観的に見ると酷く自分が冷静である様に思えてくる。心構えと言うか、もしかしたら、と考えが及んでいるだけでここまでダメージが違うものなのか。そう、俺は浅草さんが死ぬ可能性を考えて、理解してしまっているのだ。だからこそ、在り得る眼前の悲劇ある未来を思い描くのも難しくない。浅草さんはそもそも戦争が起きると言う前提で言動を行なっているのだろう。だからこそ、各国の思想と合わぬフルスキンを、万全な耐性を織り込んだISスーツを着ているのだから。ああ、違う。そうじゃない。浅草さんは、日本代表候補生。つまり、日本はそうなると考えていると各国へのアピールをしているのだろう。だから、この場にイギリスの代表候補生たるセシリアが居ても問題無い、それどころかむしろ織り込んでいるのだろう。

 日本を舐めるなよ、そう浅草さんを媒体に日本政府は宣戦布告しているようなものなのだろう。

 いや、待てよ? 何故日本政府は其処まで戦争を重要視しているんだ? 此処までお膳立てしているとなると、まるで――戦争の火種を知っていると言っている様なものじゃないか。確実に近い未来戦争が起きると予言する(くだん)の様な妖しさが露になる。けれど、浅草さんを通して日本政府はそれでも良いと言っているのだ。何故だ? ……くそ、自分の無知具合が愚かしく思う。多分、後何かがあれば気付けると言うのに、それが分からない。もどかしさが顔を顰めさせる。

 そんな俺の心情を理解している様に、浅草さんはふっと笑った。そう、俺を見て(・・・・)笑っていた。ああ、そうか、火種は、此処(おれ)に、あったじゃないか。自分の事だからこそ見逃してしまっていた。そうだ。四十六億分の一の存在が、男性(・・)IS操縦者と言う特大な爆弾があったじゃないか。

 

『そう、貴方こそが戦争が起きる理由にして発端。けれど、真っ直ぐに進むのでしょう? そう、啖呵を切ったじゃないですか。私を、死なせないと』

 

 片目だけを瞑り、仕方ないですねと言わんばかりに正解を個人チャネルを通じて囁いた浅草さん。その声を聞いて、期待してますよ、と言う副音声が聞こえた気がした。いや、確かに浅草さんは言っていたじゃないか。俺の言葉(けつい)に対して、確りと言葉を返してくれていたじゃないか。

 ――期待、してますよ?

 とくん、と胸が高鳴った気がした。脳裏に浮かんだのは浅草さんの溢した儚い笑顔だった。

 俺は、それを――。

 

「っと、話が逸れてしまいましたね。ISバトルでの戦闘スタイルは多種に渡りますが大別すると計三種に――」

 

 差し込まれるかの様に聞こえた浅草さんの声で、はっと現実に返り思考が途切れてしまった。俺は、何を思ったんだろう。その後に続く言葉が、霞に巻かれた足元の道の様に見えなくなってしまった。取り溢した、そう形容するべきだろう。ただ、これだけは言える。

 俺は、浅草さんが気になっているんだ、と。初めて異性に興味関心を覚えた。そう感じたんだ。




久々の更新にございます。
初めてかもしれんね、全部一夏視点なのは。

感想を頂けると矢張りモチベーションが上がるもんですねぇ。
なので、一気にストップ高まで行きましたよ、久方に。
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