そのうち連載にしますが現在は導入部の短編のみです
本編よりも辺境の地でもっと西部劇っぽくがコンセプトです(西部劇っぽくなるかは別です)
空の駅、カヤシ、ムロガシからマジコヤマまでの航路に存在する、中継所の一つであり、古くは陸路のころに栄えた宿場町である。かつての栄光は絶えて久しく、近隣の空の駅の中では唯一の飛行船発着場とロコウ油田からのガソリンだけが売りのさびれた酒場兼宿屋があるのみである。
「やーらーれーたー!」
そんなうらぶれた酒場の中でうら若き乙女の叫ぶ声が一つ。
「こまち、うるさい」
こまちと呼ばれた女性がカードを放り捨て茶色のツインテールに顔をうずめながら答える。
「仕方ないじゃない、エーデル!これで4連敗目なのよ!?このままじゃすってんてんにされちゃう!」
胡散臭そうにこまちの相手をするエーデルとは対照的に向かいに座った金髪の美女は満面の笑みでカードを拾いシャッフルを始める。
「コマチ、どうする?つづける?ワタシは大歓迎ですヨ」
少しそばかすの残った頬を緩めて催促する彼女に対しこまちはうつぶせのまま無視することで返答する。
代わりに答えたのはため息をつきながらロースドードーを切り分けるエーデルだった。
「アズサ、そのへんにしてあげなさい。また泣きつかれるのは御免よ」
「ソーですか?代わりにエーデルがお相手をしてくれても構いませんヨ?」
烏の濡れ羽色ともいえる見事な黒髪を口に入れぬようかき上げて、リュウゼンツランのソースを絡めながら一口にローストドードーを飲み込む。爽やかな香りと脂ののったドードーは意外と合うようで。少し口元をほころばせながら、
「それこそ御免被るわね」
と答えるのだった。
キュウコ商会と護衛計画を組んだ彼女たちはマジコヤマを中継しその先のオタカ市まで向かう途上だった彼女たち、ダイアー飛行隊がカヤシの宿に足止めを食らっているのにはそれなりの理由がある。
もともとキュウコ商会が保有している小型飛行船シロクマ号は貨物を満載している場合、航続距離と加速力が著しく悪化するという特徴があった。
ロコウ油田からパイプラインが引いてあるカヤシは飛行機のみならず飛行船向けの給油作業まで行える。このことを活かしシロクマ号は燃料をカヤシまでプラスα程度に収め、中間点であるカヤシで荷物の一部をおろし、マジコヤマまでの燃料を給油する算段だった。惜しむらくはカヤシの給油設備が久しく使われていなかったために修理と給油に時間がかかり、半日近くカヤシに滞在を余儀なくされていることだろう。
停泊中の飛行船などいい的としか言えずその間ダイアー飛行隊は飛行船から降りて地上待機とつかの間の上陸を楽しむことと相成った。彼女たちにとって意外だったのは田舎ともいえるカヤシで意外とグルメな彼女たちの舌を満たせる味をこの宿屋が出してきたことだろう。
こまちとアズサの二人が料理のおごりをかけてカードで勝負を始めるのに時間はかからなかった。
乾いた音とともに店に入ってくる影が一つ。
テンガロンハットを被った青年は騒ぎ立てるダイアー飛行隊に目もくれず一直線にカウンターへと向かう。
「マスター、水と何かすぐにできるものを」
ハットをカウンターに置き、水を一気に飲み下す。イジツでは酒よりも水の方が貴重なことが度々ある。カヤシでもビールより水の方が高価であり、懐の余裕具合が推測できる。
すぐに出てきたのは乾きものと、ドードーのスープ、いずれも作り置きしているものだからすぐに出てくるわけだがマスターの仕込みの成果か、やはり逸品として仕上がっている。
だが、青年はにこりともせず飲み下していく。
その姿が気に入らなかったのかアズサにまた毟られたこまちがいそいそと近づいていく。
「おにいさーん、飲んでますー?」
下手なナンパよりもなお悪いそれは、しかし青年の気を引くことに成功したらしい。睨みつけられながらの返事と言うものではあったが。
「何の用だ?」
鋭い眼差しが切り揃えた黒髪から覗いてくる。意外と若いその相貌からは明確な怒りが見てとれる。案外無表情なりに食事を楽しんでいたのだろう。
やや気圧されつつもめげずに話を続けるこまち
「いやぁ、お兄さんいいもの飲んでますねぇ。いやねお人で寂しそうだなぁと、思いましてこの私目があちらの卓へお誘いしに参った次第です。」
そう言いながらダイアー飛行隊が囲っているテーブルを指さすこまち、その指先に見える二人の女性はそれぞれ正反対の表情を浮かべていた。アズサは新たなカモに期待を膨らませていたしエーデルは面倒ごとに巻き込まれるのを予感してかはたまたただの人嫌いか、渋面を作り、こまちを睨みつけていた。
そんなエーデルに気付き慌てるこまちを尻目に青年はため息を一つ。
「断る。」
そう返し、食事に向き直る。一刀両断とはこのことだろう。なおもすがるこまちに対して
「連れも喜んでいないだろう」
と続ける。事実青年をカードでカモにしようとする意図が透けているし何よりも、スープが冷め始めているのが決め手だろう。
そうしてやっと残りにありつこうか、と言ったところでバーカウンターの内側からがけたたましく電話の呼び鈴が鳴り響いた。きっとそれが開幕のベルだったのだろう。
ついてない、その一言に尽きる
その日ファルコは一等ついていない日だった。
朝のフライト前の点検で故障が見つかり、出発が遅れる。その為乗客は他の便に移り、せっかく飛行機を飛ばすのに乗客は立ったの2人、普段通りに貨物でなんとか売上で伸ばそうと言う試みも先にカヤシに向かった飛行船のおかげで潰えていた。それでも契約は契約と赤字覚悟で機体を飛ばしたのだが、、、
「くそ、どこまでもしつこい奴らだ…!レニア!カヤシに連絡ついたか!?」
振り返ることなく後席の通信手席にいるレニアに尋ねる。通信手のレハルクが病欠のため代わりに副操縦士のレニアが通信手の代わりを行っているがどうにも普段行わない仕事なのだから手元がおぼつかない。
「いけました!このままカヤシにいる飛行隊が救援に来てくれるそうです!」
朗報と言えるだろう。今はまだ攻撃をかわせているがいつまでもつものか...
「お客さん!カヤシの飛行隊がこっちに来るらしい!それまで頑張ってくれ!それとレニア!通信手はいいから後部銃座でお客さんの手伝いをやれ!」
大声で叫びながら上部銃座のお客を振り落とさないように気を使いながら機体を旋回させる。紳士的な御仁で何でも旅医者をやっているらしい。迎撃の手伝いを頼んだ時も快く答えてくれた。
機銃で散らしているものの2機いる手練れが進路を妨害して来る。六機いる敵機はいずれも隼の初期型であり、何発か貰っても何とかなっているがそれも時間の問題だろう。既にかなりの低高度まで下りてきている。あまり時間がないと言えるだろう。
「あの...何かお手伝いできますか?」
そう、控えめに言ってくるのはもう1人の乗客のお嬢さんだ。白のワンピースが似合うはかなげな娘さんで、流石に機銃手をやらせるわけにもいかず、キャビンの方で伏せているよう言い含めていたのだ。
「お嬢さん!危ないから立ってはいかんと言ったろう!」
そう言い切るも、人員の余裕はなく、たった三人だけでこの難局を乗り切れそうにもない。
「後ろの無線機使えるか!?使えるならそいつで飛行隊と連絡を取ってくれ!」
心の中で不甲斐なさを詫びながら少女に指示を出す。元気のいい「はい!」と言う返事が返ってきた。幸いにも経験があるようで、レニアよりも手際がいいのかすぐに通信を行いだす。
「機長さん!こっちはもう看板だよ!」
やっと希望が見えてきたところでこれだ。上部銃座の弾が切れそうなのだろう。乗客の男性から悲痛なお知らせが届く。側面銃座は使う人間も機会も少ないので早々に撤去していた。そのため備蓄も二門分しか積んでおらず、予備弾倉なんて最低限しか積んでいない。細々とした経費削減がここにきて響いてきているのだった。
ふとそこでファルコはカーゴの中身に気が付く。食料品などを積んだ飛行船がカヤシに向かったと聞いて武器ならばとマジコヤマから7.76mを貨物室に積み込んでいたのだ。大事な商品ではあるがこのままでは空賊に奪われるばかり。背に腹は代えられぬとつかうことを決断する。
「カーゴに弾が有るはずだ!そこから持って行ってくれ!」
確実に赤字ではあるが機体を落とされて修理する手間に比べれば幾分ましである。
そうして乗客の男性がカーゴに向かうがアクシデントが二つ。カーゴから戻ってきた男性が手にしていたのは弾倉ではなくむき身の実包。商品なのだから弾倉に詰めていなかったのだ。そうしてもう一つのアクシデント。後部銃座のレニアが撃たれたらしい。男性に応急処置を頼むが、いよいよ機銃による防護火力も落ち万事休す、そう思ったが悪運だけは残っていたようだった。
正面から3機の戦闘機が向かってくる。カヤシの飛行隊だろう。そうして前方に気を取られている間に右手で隼が墜落していった。呆気に取られている間にもう一機。いつの間にか上方に陣取ってた奇妙な鳥が描かれたゼロ戦が瞬く間に二機を撃墜していった。呆然とそれを眺めていれば後ろのお嬢さんが、カヤシの飛行隊から何か指示を受け取ったらしい。
「機長さん!機銃を撃たずに真っすぐカヤシに向かえって!」
危機一髪で何とかなりそうだとファルコは口元に笑みを浮かべながら一気にスロットルを上げる。
一方救援のため出撃したダイアー飛行隊はもう一機の救援機のゼロ戦が鮮やかに敵機を落としたことに舌を巻いていた。上空から一式陸攻に気を取られていた隼を襲撃、20ミリをエンジンに叩き込み1機、そのまま離脱する1機を下から1撃見事2機を打ち取った。
「あのパイロットやるねー」
そう感想を思わず漏らしてしまうほどだった。
「ま、変なセンスみたいだけど」
しかしこの隙を逃がすダイアー飛行隊でもない。三機編隊は一式陸攻の上をフライパスし降下、一式陸攻から離れつつあった隼2機を追跡する。上昇途中の隼は追撃を振り切るため上昇を中止し振り切ろうと二手に分かれる。短くハンドサインでこまちとアズサ、エーデルの二組に分かれ追撃する。上空を陣取っていた二機は手練れのゼロ戦が請け負っているので気にしなくていいだろう。エーデルは時間稼ぎに徹するだろうから今のうちに目の前の隼を落とさなければいけない。下降する敵機を追いかけてこちらも下降する。オーバーシュートを狙う隼に対しすこし機首をずらすことで対応する。
下降を辞め地面すれすれで飛ぶ隼に対してこちらも同じ高度に下りて追撃する。上空はアズサに任せて大丈夫。ぎりぎりまで引き付けて照準いっぱいに敵機が移った瞬間を狙い撃つ。軽快な音とともに吐き出される曳光弾は吸い込まれるように隼の翼に当たる。
「一機撃墜!」
無線でそう伝え高度を戻していく。すれ違いざまに何かが下降していく。鐘馗だ。
「アズサ!?」
思わず口をついて出た叫びに対する答えは、無慈悲な機銃弾だった。エンジンに食らった一撃によりみるみる速度が落ちていく。不時着に備えて速度を落とし地面と水平を保つ。着地場所を選んでいる余裕はないが幸いにもここは荒野、何とか不時着できそうだ。衝撃を感じなながらの着陸。燃料への引火はなさそう。
上空を見上げエーデルとゼロ戦を探す。激しくドッグファイトを繰り広げるゼロ戦と隼、いつの間にか一体一となっているところを見るとどうやら、時間をかけすぎたらしい。判断が甘かった、上空の二機もそれなりに手練れだったようでなかなかに尻尾をつかませようとしない一進一退と言うところでないか。対して一機で追撃していたエーデルは悲惨だった。何とか撃墜されぬよう逃げに徹しているがいつまでもつか分からない。
無線機では援護を求める声がしているがこれはダメだろう。
さっきアズサと自分を撃墜した隼が一気に上昇をかけていくところを見ながら諦めが頭にちらついていたが、予想はいい意味で裏切られた。
ゼロ戦は僚機が援護に来たことで気を抜いた一瞬を見逃さず一閃尾翼付け根に機銃弾を叩き込みすぐさま急降下、隼を振り切った。もはや形勢は逆転したと判断したのか撤退していく。エーデルは追撃を仕掛けようとしたみたいだがゼロ戦に制止され断念したようだった。
何はともあれ危機は去った。後は撃墜されたアズサを探し機体の修理費に頭を抱えるだけでいい。
本当に救援の代金をいくらとれるかで今後の進退が決まるので頭の痛い話だった。
カヤシに着陸して無線士さんを運んで、旅医者のキンブルさんの手伝いをして、ほっと一息ついたとき、夕焼けが目に入ってくる。酒場から外に出ると茜の空に黒い影がぽつりぽつり、救援に来て撃墜されたパイロットの回収を終えた赤とんぼが着陸してくるところだった。
機体から降りてきたのはイジツで見かけない怪鳥の描かれたゼロ戦のパイロットだ。こちらも見慣れない飛行服を着こんでいる。昔祖父がユーハングの仲間と写っている写真で見たものだ。
短く刈り揃えた黒髪に鋭い眼光に少し臆するが、めげずに話しかけることにする。
「パイロットさん」
そう呼びかけるも返事は無し。それでもこちらを振り向いて少しの沈黙。寡黙なのかな?
「助けてくださってありがとうございます」
そう言い切って頭を下げる。反応を待つことしばし。恐る恐る顔を上げると、頭を掻きながら困ったように一言。
「仕事だ、気にするな」
かなり不器用な方のようです。
色々と(一方的に)おしゃべりしながら酒場に戻る。機長さんに今後のフライトについて尋ねなければいけない。
そう思ってテーブルで一休みしている機長さんのところへ行く。ちょうどキンブルさんが通信士さんの様態を話していたみたいだ。
話を中断して機長さんはこちらに一礼。
「お嬢ちゃん、相棒が世話になった。二人のおかげで何とかなりそうだ。本当にありがとう」
そう言いながら着席を促す。パイロットさんはカウンターの方にいって暖かそうなスープを飲んでいる。
...手が速い。
恨めしそうな顔をしていたのだろう。キンブルさんが手元のサンドウィッチを皿ごとこちらにくれた。慌てて返そうとする私に笑みを浮かべながらキンブルさんはやんわり拒否する。治療を手伝ってくれたお礼だそうだ。仕方ないので頂くことにする。ドードーのハムのサンドイッチは初めて食べるがしっとりジューシーでほっぺが落ちそうなくらい美味しかった。
「それで二人には悪いんだが、マジコヤマに戻ることになりそうなんだ。」
その言葉に私は飛び上がりそうになる。
「それはちょーっと困るんですが...」
何のためにここまで逃げてきたのか、このままでは奴らに追いつかれてしまう。
かなり切羽詰まった様子をみてそれでも機長さんは申し訳なさそうに、無理だと話す。
「被弾が激しいってのもあるがまともに動けるのが俺だけになっちまった。レニアの様態も気になる。すまないが戻らざる負えない」
そう言って頭を下げられてしまっては仕方ない
「しょうがないですよ、でも本当にどうしましょう」
頭をうんうん悩ませる、マジコヤマにはまだ追手がいるだろうか、キンブルさんもムロガシに行けなければ困るみたいだけれども
「キンブルさんはどうなさるんですか?」
そう水を向けてみるが
「私は彼女の様態を見なければならないからね、このままマジコヤマに戻るつもりだよ」
最早どうしようもないのか、しかし戻るわけには・・・
頭を机に打ち付け深く考え込む、陸路移動は不可能ではないはず、しかし街道がどこまで保全されているか
「お嬢さんお困りごとですか?」
そう声をかけてきたのは救援にきてくれた女性パイロットさん
「そうなんですよー困ってます。どうしても急いでムロガシに行く必要があるんですが・・・」
「あら、それは災難ね、私たちが護衛している飛行船もマジコヤマ行きだしねぇ」
ふっ、と色っぽいため息とともに悩まし気に佇む姿も絵になって大人の魅力を感じた
「うーん陸路ってのも危ないし、おねぇさんとここでしばらく待っておく?シロクマ号は一週間もすれば往路に入ってまたここに立ち寄るはずなの、落とされた機体の引き受けもしないとだしで一人ここに残るから退屈しないわよ?」
うーん、そんなにここに残って大丈夫かな?でも正直あんまり人気がないから見つかる心配は薄いような
「嬢ちゃん」
わぁ今日はよく話しかけられる、今度は宿屋の店主さんだ
「金はあるかい?」
無くはない、決して大金持ちではないけれどそこそこ遊んで暮らせる程度には
「一応少しなら」
そんな風に答えたのは少し疑心にかかっているからだろう
「クリント!依頼だよ」
二階の個室に向かっていたゼロのパイロットさん改めクリントさんが嫌そうな顔でこちらに顔を出す
「内容は」
「ムロガシまで乗客一人、速達だ」
「金額は」
「相場通り」
ちっ、と舌打ち
疲れた風に階段をゆっくり降りてくる、まだ頼むとも言ってないけれど護衛にもなる戦闘機で送迎は正直助かる
「えっと」
「こちらとしては異論はない、どうする」
相変わらずぶっきらぼうで
思わず
「よろしくお願いします?」
と疑問形になってしまった
慌てた様子でおねぇさんが割り込んでくる
「いいの!?こんな得体のしれない男の人と一緒で?腕はいいんだろうけど・・・」
だんだんとしりすぼみになっていく言葉の原因は彼の眼光だろう
「彼女は依頼した、こちらは依頼を受けた、部外者は黙っててもらおう」
おねぇさんを黙らせると振り返り同じ眼光でこちらを見やる、思わず身構えるが
「料金は店主の爺さんに渡しておいてくれ、機体の準備をしておく」
それだけ言って外にある駐機場へ向かっていった。案外目つきが悪いだけかもなんて考える
「おねぇさんせっかく誘ってくれたのにごめんなさい。でも私急いでムロガシに行く必要があるの」
ペンダントぎゅっと握り微笑む
「また会ったその時にはお茶してくださいね」
スープを一気に飲み干しスッと席を立つ
そのまま店主さんにお金を渡してクリントさんの後を追うことにする
「キンブルさん、機長さんもお世話になりました、通信主さんにもお礼をお伝えくださると幸いです」
あっけにとられ気味だった機長さんに比べて旅慣れたキンブルさんはこういったことにも慣れているのだろう
「ここでお別れなのは少し寂しいが仕方ない。気を付けて、これを渡しておくから使うといい」
と応急キットを手渡してくれる
ずっしりとした重みのそれを受け取りお礼を言う
すこし呆けた様子から立ち直ったみたいで
「迷惑をかけた上で言うのもなんだがまたぜひ星戦商会を利用してくれ、機内食ぐらいはサービスするからさ」
と言ってくれる、もちろんと返して笑顔でお別れを言う
すでに外からはゼロのエンジン音が聞こえてきた
面倒なことだ、という感想しかない
流れの飛行機乗りをしていると契約に縛られ不自由をすることもしばしばある
カヤシに流れてきたとき仕事が無かったために店長から依頼の斡旋を受けることにしたのだが
斡旋された依頼を断れない契約だったためにかなりこき使われている
それでも金払い自体は悪くないのだから我慢できる方ではある
後部に補助座席を取り付けエンジンの具合を見る
そもそも女の輸送など面倒に過ぎる、以前一度だけ運んだが文句を山ほど言われ金をケチられたのだからたまったものではない
機体の準備はすぐさま終わり暖気に入る、余り遅れるようなら追加の料金を取るつもっりだったがその心配はいらなかったようだ
「来たな、乗ってくれ」
それだけ言うと彼女からトランクを預かり、機体に押し込む
いくらか生活用具が入っているがこの程度ならまだ余裕がある
「パイロットさん改めてよろしくお願いします」
何と返そうか迷ったげく手を振ることで返事をする
全く持って面倒くさい
「各機、目標を発見した地上に落としてギフトをいただくぞ」
「「了解」」
返事を聞きつつゼロへと降下を仕掛ける
一軍ほどの手練れではないが空賊相手の訓練を担っていた二軍の機体があっさりと落とされたのは記憶にも新しい
二軍を連れてきても足手まといになると考え一軍三機だけで仕掛けたが・・・
一気に距離を詰め一撃に葬る気だったがあっさりと避けられる
降下から上昇に切り替えて敵機に目をやる
月明りに照らされた機体塗装に何か記憶に引っかかるものを覚えるが無視し空戦に集中する
捻り込み後ろに回り込む気だろうがそうはいかない
そのまま上昇せず宙返りし進行方向を変える、追従する僚機二機が攻撃を加えるが中々に避けるのがうまい
ターンを決めかなり速度を失ったが問題ない、三対一の有利を覆させずじわじわと逃げ場をなくす
うまく僚機が攻撃できるよう態と単調な回避で攻撃を誘うが乗ってこない
ただの流れものならフェイクに食いつくだろうがやはり手練れだ
囮を部下に任せて攻撃に回りたいがもしこちらが前につけば囮はそのまま食われるだろう
大きく右回りで旋回し直線起動を誘うがやはり隙を見せないらしい
高度で上を取っている部下の攻撃は横滑りするようにそらされていく、一応こちらは攻撃しやすいようしかしいつでも避けられる動きをしているが見透かされているのだろうか
攻撃を一切してこないのが不気味ではある
「ヒソー殿、仕掛けます!」
先にしびれを切らせた部下が仕掛けるため速度を上げ近づく、オーバーシュートしかねないが味方がカバーしきれると思ったのだろう、しかし無謀だぞ
コチラも攻撃に合わせ離脱を図る
ぐるぐると回っていた空戦は一気に乱戦へと様変わりする
離脱のためロールしダイブする
このタイミングならば離脱可能だ
しかし一瞬目に映ったのは大きく回避機動を取るのではなく最小限の動きでこちらを追尾するゼロだ
なぜ部下の隼を無視して?
その疑問はゼロの後部で光るマズルフラッシュが教えてくれた
衝撃、機体の状態を確認する
右のラダーがやられたらしく大きく機体がそれ地上へと向かっていく何とか立て直した上で部下たちを見れば突撃した部下の隼はエンジンが死にきりもみで墜落、残った一機も後ろへ付かれ先は長くないだろう
そう思えば、ぱっと追撃を辞めゼロが離脱を始める
あれは見逃されたのだろう
なおも切り返し攻撃しようとする部下を無線でとどめる
下から見上げることでやっとゼロに描かれた特徴的なペイントの名前を思い出す
ここらで有名なネームド
「怪鳥、か。この借りは忘れん」
「おいお客さんよ。あいつら昼の空賊だろう、何だって二回も襲われているんだ。心当たりあるだろ」
辛くも襲撃を乗り切りましたがまさか昼の空賊がまた来るとは
クリントさんの言う通りでしょうか
機関銃弾でこじ開けた風防から機関銃を引き抜き仕舞いながら考えます
しかし簡単に話すわけにはいきません。少なくとも彼が裏切らないという確証がなければ
もし祖父の遺産を狙う何者かに売られでもしたらと考えてしまいます
「話さないならそれはそれでいい、だがムロガシどころか途中で放り出すぞ、俺が受けたのは輸送で護衛じゃない」
その言葉にハッとします。少なくとも契約を変更する必要があるそう言う事ですね
「では契約を護衛に変えていただけますか」
「期間は?ムロガシ行まででいいのか。戦闘機使って襲撃してくるようなやつらだが」
「いえ、当面の間、少なくとも私が襲われなくなるまで」
「事情は話せない、期間も曖昧か、高くつくぞ」
やっぱりこの人案外悪い人ではないのでしょうか、態々そう言うことを言ってくれるのは
こつんと背もたれというよりクリントさんの座席裏に頭を預けます
「構いません、私はまだ捕まるわけにはいきませんので。お代はご随意に、ムロガシにつけば金庫からお支払いできます」
ふうっとため息をつき心底面倒そうに
「わかったよお客さん、護衛の仕事受けてやる。三割増しじゃ聞かないからな」
そう言ってくれて安堵します
「そいえば名前を聞いてなかったな、お客さん」
「まぁ、私の話を聞いてなかったんですか!?カヤシでも機内でも散々話していたのに」
「改めてってやつだ」
くつくつと笑い始める彼に少しつられてしまう
「では改めて私の名前は・・・
ざっくり各キャラ解説
ヒロイン
祖父の作った何かを奪われないため祖父の友人というキンブル医師のすすめでマジコヤマからムロガシへと逃げる途中
名前はまだない
機関銃ぶっぱガール
16歳
主人公
クリント
鋭い眼光と高い背丈テンガロンハットが特徴
ネームドさすらいの怪鳥、愛機はゼロ戦22型
いくつか独自の改良がなされている
やむを得ないとはいえ即席の後部銃座を作られて頭を抱えてる
本話の出来はどうですか?
-
よい
-
悪い
-
改善点はあるがよい
-
改善点があり悪い