炎の剣士と黒龍の少女   作:一般龍人族

9 / 12
長く作ったつもりでもいざ文字数計ったらそうでもないってことがよくある。


迫る戦い、その準備。②

ウルの町周辺には防壁が生成されていた。ハジメが作ったものである。その壁をハジメは見上げていた。

 

「へへ……倒し損ねた魔物がこの壁を短時間で壊して町に攻めたら……あいつらはどんな顔するかなあ」

 

 しかし、実はこの壁は壊れやすくなっている。ハジメの嫌がらせの一つである。

 

 仮に魔物が到達した場合、短時間で破壊されてそのまま町に雪崩れ込むようになっているのだ。その間にハジメはユエとシアと一緒にそのまま町から逃げるつもりである。残る予定のウィルは回収できたら、という感じであり、仮に魔物に襲われてたらそのまま見捨てるつもりだ。

 

 が、飛羽真達が魔物を倒し損ねて逃すとも思えないので、そこから追い打ちで嫌がらせという名の妨害工作をするつもりだった。

 

 ハジメは、飛羽真達が絶望する顔を思い浮かべ、ニヤニヤと口角を吊り上げるのだった。

 

「「……………………」」

 

 その様子を、とある二人の人物は陰から見ていた。

 

◇◇◇◇

 

 賢人は現在、魔法の絨毯に乗り上空から魔物の大群を見ていた。その様子をガトライクフォンで撮影しており、更にそれを役所のある一室で飛羽真がガトライクフォンで見ていた。

 

「こんなに沢山……」

 

 飛羽真は魔物の大群をを見て眉を顰める。園部や玉井達もその映像に戦慄している様子だった。

 

『他のところを見て回ったが、現状魔物の軍団がいるのはここだけだ』

 

「地図を見た感じ……その状態だと、このルートから来るのかも」

 

 賢人の言葉を受け、地図でウルの町周辺の魔物が通ってくるだろう部分を指す。

 

『だが、魔物は地上だけじゃない。空にもいる』

 

 賢人がフォンを動かすと、空にプテラノドンを思わせる魔物が飛んでいた。群れを作ってはいるが、地上の魔物程ではない。

 

「うーん……その魔物は俺がストームイーグルを使って迎撃してみる。その間賢人は、地上で園部ちゃん達と戦ってくれ」

 

『分かった』

 

「まず……ポジションを考えるためにも、皆がどういう力を使えるのか教えてくれるかな?」

 

 飛羽真が園部達に訪ねた。

 

「えーっと……私は、このナイフと炎魔法を使えます。それで、刃のとこに火を纏わせて戦えます。これ、全部で12本あって1本でも手元にあれば帰ってくるようになってるんです」

 

 園部が試しにと、窓を開けてナイフを投げてみる。しばらくすると、その投げたナイフが園部の元に引き寄せられるように戻って来た。

 

「後は……私は"投術師"っていう天職で、投擲がすごい上手く出来るみたいです。だからこのナイフも貰いました」

 

「天職? 何それ?」

 

天職という知らない単語が出て来たので聞く飛羽真。

 

「んーと……メルド……国の騎士団長さんは"才能"って言ってました。天職は戦闘系とか非戦闘系とか色んな種類があって、それに対応した技能って言うのもあります。で、その領分において無類の力を発揮する……らしいです。だから、私は投擲では無類の力を発揮するってことです」

 

「なるほど……」

 

 解説を受けて飛羽真は頷いた。

 

 その後、天職や能力の紹介は続いた。

 

 菅原は"操鞭師"。操鞭師は鞭を始めとしたロープ状のものを操れる。専用の鞭を使って戦う。

 

 宮崎は"氷術師"。名の通り、氷の魔法を用いて戦う。

 

 玉井の天職は"曲刀師"。彼が持っている2本の曲刀は風の斬撃を飛ばすことが出来る。

 

 相川は"戦斧士"。玉井の曲刀と同じように専用の斧で斬撃を飛ばせる。

 

 仁村は"幻術師"。名の通り幻を見せる魔法を使うことができる。

 

 ティオは"守護者"。火と風の魔法、龍の力を使える。持っている扇子は鉄扇として機能し、更に背中には"ある武器"を仕込んでいるらしい。

 

 ちなみに、愛子の天職は"作農師"で、ハジメは"錬成師"であるらしい。その他にも、この場にはいない園部達のクラスメイトの天職もついでに教えてもらった。

 

「へぇー……! 俺たちと同じ剣士に魔法剣士、それに、勇者もいるんだ! すごいなあ、会ってみたいよ!」

 

 こんな状況で不謹慎かもしれないが、飛羽真は剣士や勇者の名前を聞いてファンタジーの王道だよなあ、と胸を躍らせていた。小説家の血が騒ぐのだろう。

 

「勇者、か……」

 

 そのティオの呟きは誰にも聞こえなかった。

 

「そういえば……その天職っていうのは、どうやって分かるの?」

 

「ああ……天職はですね、このプレートで分かるんです」

 

 園部は懐からカードを取り出して、飛羽真に見せた。そこには園部の名前や、投術師の名称、その下には"技能"という文字の横に"投擲"等がの文字がある。

 

「それは?」

 

「これは"ステータスプレート"って言って、持ってる人の名前や性別、年齢と、さっき言った天職と技能が表示されようになってるんです。最初は何も書かれてないですけど、血を塗り込むとこれの魔法陣が反応して表示されます」

 

「へぇー……」

 

 飛羽真は感心した様にこくこくと頷く。

 

「てことは、ティオちゃんも?」

 

「いや、妾は持っておらん。妾の里には天職を見抜く力を持つものがいてな。その者によって知ったのじゃ」

 

「なるほど。で、皆の能力が分かったわけだけど……仁村くんの幻術で魔物を撹乱することは出来ないかな? その隙を狙えばスムーズに倒せるかも」

 

「出来ますけど……でも、ずっとは無理ですかね。やっぱ魔力の限界とかもありますし」

 

「ずっとじゃなくても大丈夫。数を減らせればいいんだ。後はそうだね……宮崎ちゃんは後方から魔法で魔物の迎撃。園部ちゃんも一緒に後方から迎撃。ティオちゃんと玉井くんと相川くんと妙子ちゃんは、俺や賢人と一緒に前線で迎撃だね」

 

 飛羽真からの言葉に一同は頷く。

 

「今回の戦い、私達も参加させてもらおう」

 

 と、扉が開けられ男の声がした。そこにいたのは甲冑を身に纏う騎士達。

 

「貴方達は?」

 

「私達は、愛子を護衛するために来ていた神殿騎士だ。愛子から事情を聞いて馳せ参じた。俺の名前はデビッド=ザーラー。よろしく頼む」

 

「私はチェイス=ドミノ。どうぞお見知り置きを」

 

「俺はジョシュア=オキーズ。助太刀させてもらうよ」

 

「俺はジェイド=ハット。足を引っ張らんよう全力は尽くす」

 

 騎士達の紹介が一通り終わった。ちなみに、このメンバーにも更に人が集合する予定である。

 

 ウルの町のギルド支部長達により、冒険者達が招集されているのだ。戦闘が終わった後、彼らには報酬も渡される予定である。

 

 後は、住民達の避難も始まっていた。当初は魔物が攻めてくることに騒ぎは起こったもののどうにか収まり、荷物を纏め避難準備を始めていた。

 

 とはいえ逃げる者ばかりではなく、故郷は捨てられない、場合によっては町と運命を共にすると、居残る者もいた。

 

 しばらくして、飛羽真達の下に招集による冒険者達が集まった。互いに挨拶し合い、その後は天職ごとにポジションの相談もした。余談だが、ティオが龍人族であることは他の冒険者達や神殿騎士の四人には伏せておいた。彼女としては、種族の存在が公になるのは避けたいからだ。なので必然的に今回の戦いで龍化をすることは出来ない。

 

 そして色んな準備が整った後、こっちから攻め込みに行くということになっていた。来る場所が分かっているなら攻めない手はないからだ。

 

「神山先生、少し良いですか?」

 

 出発までに、これから戦う魔物の生態を軽く調べるため魔物図鑑を読んでいた飛羽真の前に愛子が現れた。

 

「愛子先生、どうしました?」

 

「実は……魔物を操ってる男の正体なのですが……」

 

 愛子は魔物を操ってるだろう男の正体の予想を告げた。明かしているのは飛羽真だけであり、他の人には話してないらしい。

 

「…………それは、本当ですか?」

 

「…………そうあってほしくないですが、ちゃんと確かめないことには分かりません。無茶な頼みではあるんですが……その……見つけたら連れてきてください」

 

「…………わかりました、連れてきます」

 

「…………ありがとうございます」

 

 その後、夜中になってウルの町の住人の避難は完了した。それを伝えると賢人も帰還して合流。

 

 それと、最終的にハジメは壁を作っただけで武器は作らなかった。「疲れたんでね!」と言ってさっさと宿の方へ帰って行った。そんな様子を見たギルド支部長は呆れながらも「壁を作っただけ良しとしよう」と言っていた。

 

 何はともあれ、遂に出発の時である。

 

◇◇◇◇

 

 戦士達が地面を一歩一歩踏み締める。戦場に向けて行進をする。

 

「————見えてきました」

 

 先頭に立つ飛羽真は、視界に入った魔物の大群を見て一行に向けてそう言った。

 

 一行も魔物の大群が目に入り、気を引き締めて武器を手に取る。

 

「皆さん……必ず生きて帰りましょう! もしも危険だと感じたら……その時は、無理をせずに逃げてください」

 

 飛羽真のその言葉に皆頷いた。

 

「……一年前を思い出すな」

 

「……確かに」

 

 賢人と飛羽真はかつて、一年前に仮面ライダーストリウスを打ち倒すための最終決戦に臨んだ。その前座として、ストリウスの下っ端である怪人の大群と戦いを繰り広げた。目の前の魔物の大群を見て、当時の光景が浮かび上がったのだ。そしてその時と同じように、付き合いはまだ浅いものの、共に戦う仲間達もいる。

 

「賢人、行こう!」

 

「ああ!」

 

 既に構えている賢人に声をかけ、ソードライバーを装着。ブックのページも展開する。

 

『ブレイブドラゴン!』『ランプドアランジーナ!』

 

「「変身!」」

 

『烈火、抜刀!』『黄雷、抜刀!』

 

 二人は仮面ライダーセイバーと仮面ライダーエスパーダへ変身。

 

 それを初めて見た冒険者の面々は驚いていた。

 

「話した通り、それぞれ配置についてください!」

 

 だが、そのセイバーの一言で正気を取り戻し返事をしたり、頷いたりする。弓や魔法等の遠距離攻撃組は後方に、近接戦闘組は前方に。

 

「仁村くん! 幻術を!」

 

「はい!」

 

 仁村は魔物達を目に据えて、幻術の魔法の詠唱を始める。しばらくして呪文を唱え終わった。

 

 やがて、目の前にいる魔物達の隊列が崩れ始めた。突然暴れ回ったり、逃げるように走り出す魔物などそれぞれだった。幻術の効果なのだろう。

 

「まずは俺と賢人で数を減らします! 賢人、合わせるぞ!」

 

「ああ!」

 

『『必殺読破!』』

 

 ドライバーに納刀した聖剣のトリガーを一回引く。その後すぐに抜刀。

 

『烈火! 抜刀! ドラゴン一冊斬り!』『黄雷! 抜刀! アランジーナー冊斬り!』『ファイアー!』『サンダー!』

 

「「はあああっ!」」

 

 炎と雷の斬撃を魔物に向けて飛ばす。その強力な斬撃で魔物の何体かを削ることが出来た。

 

「行きましょう!」

 

 セイバーが一番に駆け出し、それに「おお!」と声を上げ追随する各戦士達。

 

 戦いの火蓋が、ここに切られた。

 

◇◇◇◇

 

 何処かの崖の上。一人の男がいる。

 

 顔立ちは整っていながらもピンクのフェイスペイントを施しており、背中にまで届くほどの髪にはピンクのメッシュが入っている。後、髪型はオールバックだ。

 

男はローズピンクの派手なカラーの超ロングコートを身に纏っていた。

 

 コートの下に着込んでいるシャツとズボンもローズピンクで統一されており、町で見かけたら目で追ってしまいそうである。

 

 男は目を閉じ、穏やか笑みを浮かべていた。

 

 その後、しばらくして————踊り始めた。

 

 まるで神楽のような、舞楽のような。

 

 ただ、舞う。舞い続ける。

 

 男はゆっくりと目を開け、告げた。

 

「————感、動」

 

 それは————開戦を、祝う踊り。




tips:ステータスプレートについて
原作のものとは違い、数値が表示されていない。それ以外は同じ。

仮面ライダーストリウス:かつて飛羽真と賢人が激闘を繰り広げた相手。飛羽真が仮面ライダーセイバーの究極の形態に変身することで撃破した。

付録↓
https://telegra.ph/%E4%BB%98%E9%8C%B2-02-07

予告

「…………嫌な予感しかしないんですけど」
「龍人剣術」
「嫌がらせ開始といきますか」
「まさか……! 彼か……!」
「どうしてメギドが……!?」

次回 大合戦、魑魅魍魎の群れ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。