前回のあらすじ
アギト訪問→グランガイツさんは亡くなったらしい→スカリエッティ陣の根の深さを知る→何故か一時的に主になった
寝ていたのはそう長く無い時間だった
起きるとすぐに自分がした行動が恥ずかしい事だと認識したのか、俺を突き飛ばして走っていった
のだが
扉を開けた所でアギトは凍り付いた
「イ、イクスさん」
「・・・。」
何か用でもあるのだろうか
そう思って見ていたのだが、長い付き合いの勘が警告音を鳴らしている
「ちょ! イクスストップ! なにやろうとしていた?」
直感で止めに入った頃にはイクスの右手には戦刀が武装されていた
・・・セーフ
「あーいえ、羨ましかったので」
・・・あー家族大好きっ子のイクスの悪い癖が出たようだった
「秋春様の腕の中で寝るなんて・・・我慢出来ません」
「ひぃ! マ、マスター!」
誰がマスターだ、許可してねぇよ
「イクス、おいで」
「はい!」
「ああ、そうだ。ルーテシアちゃんの部屋なら二階だよ、チンクも一緒だから・・・あ、洋服は、ベルカの方が良いならテキトウにキャロに言ってくれれば良いから」
イクスやヴィヴィオ用に古代ベルカを模した服が揃っている
・・・サイズは、まぁ多少大きいけど問題ないか
「分かったよ、ありがと」
アギトが起きたら仕事部屋に戻ろうと思っていたのだが、イクスが膝の上でニコニコとしているので動けなかった
◇◇◇◇◇◇
「第二回! ヴィヴィオ強化特訓!」
「やーだぁー!」
「パチパチ」
ヴィヴィオは既に戦意喪失していた
「おいおい、ヴィヴィオ。この間のやる気は如何した」
「ざがくからやろうよっ!」
「えー、俺って基本的に即戦力を育てるのが上手い方なんだけどな」
「何事も一番の学び場は戦場です」
イクスが戦弓を準備するとヴィヴィオはサッと顔を青くして座学と言い張る
・・・俺が知らない内にどんなトラウマがヴィヴィオに出来たんだろうか
「あきパパに~はんたいっ!」
「賛成」
そしてパパ言うな
「秋春様のやり方が一番です」
「賛成二票」
「にゃぁ~~!!」
ちょっと面白い
「まぁイクスも今日は組み手だから戦武器禁止な」
「・・・分かりました」
「ほっ」
ヴィヴィオが安心して何時ものやる気を取り戻したを確認して特訓を開始した
「オリヴィエが最も得意としていたのは武器を使わない格闘です。ですので、貴方にもその才能は当然備わっています」
「うん! うん!」
「覚えておくべき事は実戦では命は一つと言う事です。だから必死に守りなさい」
「はい!」
真っ直ぐ放たれたイクスの拳をヴィヴィオは捌く
時折混ざるフェイントには追いつかない所はあるがどれも直前にはキチンと避けれている
「目が良いのか」
それに直前まで引き付ける勇気もある
「はんげきだよっ!」
「くっ」
ん? ヴィヴィオが押している?
・・・違うな、イクスが何か不自然にヴィヴィオとの接触を避けている
ヴィヴィオはイクスに見えない様に足を少し捻り不意を突いて回し蹴りを放った
「・・・え?」
「お~ヴィヴィオが勝った」
倒れたイクスは遅れて首を捻った
ヴィヴィオの体勢は明らかにイクスを倒す程の威力が有る蹴りを放てる状態じゃなかった
恐らくだがヴィヴィオは無意識に身体強化系の魔法で補助をした。だからイクスは気付かずに当たってしまった
ま、二度目は利かないだろうけどね
「や、やったー!! これで明日の相手はシロママだぁ~!!」
「「・・・。」」
俺とヴィヴィオは模擬戦のたびにやる気向上と勝った時の条件を決めていた
イクスが勝ったら俺の仕事中に乱入しない
ヴィヴィオが勝ったら次の模擬戦の相手をヴィヴィオが選ぶ
ちなみにシロが一番手加減を知っている
「と言うか無駄にやる気があると思ったらそんなにイクスが嫌だったのか」
「い、いやっていうか・・・こわいかなぁー、なんて」
「失礼ですね」
浅かったのか、すぐに回復している
「ごめんなさい!」
俺とキャロを見ている様だった
「秋春様」
「ん? お疲れ、頑張ってるの見てたよ」
「ふにゃぁ」
褒めてオーラに当てられてつい撫でてしまった、すると当然ヴィヴィオの機嫌は悪そうになり
「ぶぅ~」
「娘の特権です」
「・・・イクスおねぇーちゃんだけズルい・・・ヴィヴィオもがんばったもん」
もしかして、二人の仲が悪いのは俺のせいだろうかと思ってしまったりもした
ヴィヴィオの中での模擬戦評価
シロ:一番優しい キャロ:雨水と同様で子供相手にも全力
チンク:打撃の全てを流され投げられる ルーテシアの代理でガリュー:硬い
イクス:戦弓で追い駆けられる 雨水:戦うと嫌がらせしかしない
・・・座学は基本雨水のみ