召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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百五十九話~side イクス~

見付かってしまった

 

自分でも修正の利かない範囲にまで異常が及んでいたのは分かっていたけど秋春様の前だと、まるで気付いて欲しいと言わんばかりになる体とは思わなかった

 

大嫌いだ

 

秋春様とはギクシャクしてしまい、更には気を使ってくれているのだろう

 

此方の様子を伺いながらも自然とヴィヴィオの方に行って下さっている

 

 

「元の関係に戻るには如何したら・・・」

 

 

やはり異常の原因究明

 

 

「しかし・・・」

 

 

心当たりが無い

 

発症が何時からだったかは分からないし、最初は気にも留めない小さな誤差だったのかも知れない

 

考えているとノックが二回鳴る

 

 

「イクス~」

 

「お父様?!」

 

「入っても良いかな?」

 

 

如何しよう

 

駄目なんて言いたくない

 

一緒に居たい、一緒に座りたいし、寝転がりたい

 

撫でて貰いたいと思うし、褒めてもらいたい

 

して欲しい事や聞いて欲しい事も一杯ある

 

 

「い、いま・・・取り込み中なので」

 

「ん? そっか」

 

 

私は馬鹿だ

 

素直とか正直とか反復してノートにでも書いた方が良い

 

少しはマシになるかも知れない

 

 

「じゃっ入るねー」

 

「え? 秋春様?!」

 

 

扉に駆け寄る隙も無くアッサリ開いてしまう

 

 

「イクスがテレビを見て無いって珍しいね」

 

「・・・あ、はい。良い番組が無かったので」

 

「んー、ベットに座って?」

 

「はい」

 

 

此処まで来たら言われた通りにするしか無いです

 

秋春様は近くにあった椅子を持ってきて背凭れに腕を組んで座る

 

 

「今度、聖王教会に行こうと思うんだけどイクスも付いてきてくれるか?」

 

「えと、それは構わないのですが、何故ですか?」

 

 

名の通り聖王家を信仰対象にした宗教でしたね

 

 

「イクスの検診」

 

「何故そこで?」

 

「あそこはベルカ専門に色々調べているからね。それに普通の病院だとベルカ系の異常は分からない事が多いし」

 

「・・・嫌です」

 

 

気持ちは嬉しいですけど秋春様以外には見られたくない

 

考えただけで気持ちが悪い

 

 

「一回だけ!」

 

「注射が苦手なんです」

 

「注射はしないから!」

 

「病院が嫌いです」

 

「あそこは教会だから!」

 

「宗教が嫌いです」

 

「聖王教は比較的緩い宗教だから医療にまでは混ぜてないから!」

 

 

緩い?

 

ああ、禁忌や制約の事でしょうね

 

 

「ね? 心配だし行ってみよう」

 

「・・・心配」

 

「そうそう、イクスが寝込んでもしたら皆が心配するからね」

 

 

心配ですか・・・やっぱり迷惑を掛けてしまいましたね

 

・・・迷惑を掛けずに役に立とうと頑張ったつもりなのですけどね

 

 

「そうですね」

 

「ん? 行ってくれるか」

 

「はい。教会は一人でも行けますので、明日にでも行きます」

 

「そっか、でも一緒に行くよ」

 

 

嬉しそうに笑う秋春様は教会に連絡を入れると部屋を出て行った

 

 

「優しいお父様」

 

 

もう嫌だ

 

あんなにも優しい自慢のお父様を困らせる自分が嫌だ

 

 

「眠い、です」

 

 

いっそ眠り続けた方が誰の為にもなるのかも知れませんね

 

 

「ああ、電気消さないと、です」

 

 

ゆらりと力無く立ち上がった所で意識がプツリと途絶えた




もう少し続きます

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