教会騎士から出来るだけ強い騎士を借りれませんか?
それが雨水一士からのお願いでした
冥王陛下が無事目覚めたと言う報告と同じくして言われたので、私もカリムも首を傾げました
ですが、雨水一士の事ですので信用して指定日時に無人管理世界へ向かった
「あの、これは一体・・・」
目の前には冥王陛下と聖王陛下が、それぞれの騎士服を身に纏い向かい合っていた
「え? あの後に騎士カリムには詳しい話をしていましたけど?」
「・・・。」
唐突にうっかりと笑うカリムが脳裏に浮かんだ
「その様子だと知らないみたいですね・・・まぁ子供喧嘩の仲裁役ですよ」
子供喧嘩?
マリアージュの戦闘服を身に纏う冥王イクスヴェリア
オリヴィエの騎士服を身に纏う聖王ヴィヴィオ
二人とも変身魔法で大人になっている
「す、スケールが・・・」
「いや~俺って戦闘能力皆無ですから・・・危なくなったら止めに入るとか出来ませんし」
「理解は出来ます。ですが、これは正直私でも・・・」
自分の実力は十分に理解し教会の中でもそれなりだと自負は有りますが・・・えぇー
「その、応援を呼んでも?」
「大袈裟過ぎますよ」
大袈裟?!
この人は目の前のお二方を理解しているのですか?!
「それじゃっ始めるけど勝ち負けのルールは分かってるね?」
「はい」
「もちろんっ!」
「降参した相手に追い討ちとか止めてくれよ・・・では、レディー・・・ゴーッ!」
混乱する私を置いて事態は確実に進んだ
◇◇◇◇◇◇
自分の非力を思い知らされる戦いを見ている
これは模擬戦と言うより戦争に近い
冥王陛下の数の暴力に聖王陛下の真っ直ぐな拳が真正面から向かい合う
「こんな・・・子供でしたよね?」
「まぁ二人とも王ですからね。生まれた時点で一般の子供とは資質が違いますよ・・・同時に背負うものですけどね」
・・・何と無くですが・・・この戦いで自分の弱さを最も思い知っているのは私では無く雨水一士なのでは無いかと思ってしまう
「えと・・・あの、ですが。ヴィヴィオちゃんはあんなに強くなかったですよね?」
少なくとも冥王陛下が寝込んでいた一週間くらい前までは・・・
「今日の日の為に必死に修行や勉強をしましたからね」
「どの様な?」
「そうですね・・・古代ベルカ式を一通り使える様になって、それでも戦闘特化のイクスに勝てないからってミッド式を覚えて防御系、捕縛系、結界系、補助系、移動系などの幻術や召喚のような、先天的なモノを必要としない魔法に幅広く手を出しましたねー」
「・・・は?」
なんですか? その鬼才っぷりは・・・
「ヴィヴィオは言うなれば万能型の天才ですから」
「いや・・・だと言いましても」
一週間ですよ?
「教えるのは得意なんですよ」
「得意ってレベルでは・・・」
「おっ進展してる」
数十体は居たマリアージュは既に全て居なくなっており冥王陛下と聖王陛下が直接戦っている
聖王陛下の拳は速く鋭く的確に繰り出されていた
「・・・私に捌ききれるか」
恐らく数発後には急所に入って終わりですね
しかし冥王陛下は涼しい顔をして戦刀一本で対応して反撃までしている
「マリアージュも居なくなりましたし、ヴィヴィオも秘策を使うかな」
「秘策?」
雨水一士の言葉に応えるように聖王陛下から溢れるように魔力が立ち上った
「・・・聖王の鎧ですか?」
「そうそう、生憎と完成はさせれなかったけどね」
あれで未完成?
「イクスは如何出るか」
「冥王陛下にも秘策が?」
「まぁね」
虹色に輝く聖王陛下と同じくして黒色に輝く冥王陛下が目に映る
「・・・あれは?」
「マリアージュシステムにあった肉体操作を自身に掛けた完全な身体制御って言ったところですかね」
「完全な身体制御ですか?」
「はい、人間って言うのは自分で自分の体を自由に動かしていると思いがちですけど、反射などと言った無意識の部分が意外と多いんですよ。戦闘中だったら生き延びる為に余計に体は勝手に動きますしね」
言っている事は納得出来ますけど・・・
「まぁ違いは小さなモノですから」
これ以上は複雑になるようで実際に見た方が早いらしい
・・・これが出し惜しみを一切していない全力の聖王陛下と冥王陛下
どちらが勝つかなんて全然分かりません
それでも、虹色の輝きと黒色の輝きがぶつかり合って途轍もなく神々しく綺麗なのは確かでした
ヴィヴィオはミッド式の魔法をそれぞれ三つずつ程度取得しています