あたしのマスター・・・もとい、アキハルは娘想いの出来た父親だと思う
自然保護隊? アキハルはそこから帰ってくると、妙にやる気で着々とイクスさんやヴィヴィオの希望であった入学への準備をしていた
のは良いのだが
事も有ろうか頑張らなくて良い事まで頑張り始めた
アキハルのせいで、現在あたしは聖王教会の一室でお見合いをする羽目になっていた
「初めまして、聖王教会騎士団所属見習い騎士のリーデレと申します」
アキハルじゃ到底適わないような、さわやか風なイケメンだった
「アギト」
「えと、今回はアギト殿のロード候補として選抜された身ですが・・・単刀直入に言って私は如何ですか?」
「不合格だな」
「そうですか」
残念そうな見習い騎士はそれでもあたしの気分を害さないようにさわやかに笑っている
「アキハルには困ったもんだ。あたしはアキハルをロードとして認めたってのに」
「先生は自分は騎士じゃないって言ってましたが?」
「ああ、アイツは騎士じゃねぇ。騎士道精神なんてこれっぽっちも持ち合わせていないね」
「ですねー。今の副団長が先生の教え子なんですけど凄く・・・セコイですから」
見習い騎士は周囲を見渡して小さな声で調子良く言った
その副団長って奴は狡賢い手を使っていても人気のある奴なんだな
「へぇーどんな奴か興味が沸く。時間まで聞かせてくれよっ」
「良いですよ。インノチェンテ・カリーノ副団長はですね、年は私より下で身長は小柄な女性・・・と言うか少女なんですが」
幼くして騎士になるなんて戦乱期でも無いのに凄い努力だな
「入団試験で団長に一撃を入れた唯一の人物で、通常有り得ない出世をした人なんです」
「ふぅん、セコイって言ってたけど戦闘スタイルがなのか?」
「はい。小柄な体格を利用しているのは良いんですけど、何故か身の丈に有ってない大剣を使いこなして予想不可能奇想天外な攻撃をするんです」
「・・・別に戦いなんだから有りだろ。セコくは無いんじゃないか?」
それとも騎士道って奴なんだろうか
「実は平気で脅しとか使ったりするとか使ったりするんですよ」
「あー」
アキハルが最も教えそうな戦法だよな
「本当に相手が嫌な事には踏み込まないんですけどね? それでもギリギリのラインで可愛い口から発せられる言葉が・・・正直普通の人だったら白旗上げますよ」
「そこまでなのか? ・・・何言われたんだよ」
「いえ、騎士の男性寮は不純な・・・女性の前では言い難いですが・・・まぁ不純な物の持込を禁止しているんですよ」
・・・ったく男って奴はどいつもこいつも!
「それを何故か副団長が持っていたり隠し場所を知っていたり・・・皆、自分より幼い・・・しかも異性・・・更に可愛い副団長に笑顔で脅されたり罵倒されると心が折れ掛けるといいますか」
「お前ら世間とは全く違うんだな」
聖王教会の騎士団と言えば誰もが憧れる
「ハハッ変わったのはある意味で先生のおかげですよ。それに副団長がそんな感じなので団長は真逆の厳格な方です」
「へー・・・ん? ちなみに副団長は団長に如何戦ったんだ? まさか団長って奴も・・・」
「無い無い! 無いですよ! 団長は今時珍しい正真正銘の騎士で聖王家を守護する家系ですよ?!」
いや、そんな事情は知らねぇけどさ
「副団長は真面目に戦えば武器無しの団長と互角ですからね」
「それは凄いのか?」
「凄いも凄いですよ!!」
やっぱり上として尊敬されているのは見習い騎士は若干興奮気味だ
しかしアキハルの交友関係って結構スゲェよな
「入団試験の時は見習い五十人対団長一人だったのに、今の副団長以外は掠り傷一つ付けられなかったんですよ!」
「会ってみたいな」
「副団長は結構私生活は無邪気な方ですから、気軽に会ってくれますよ。聖王教会の孤児院によく居ますね」
「そっか・・・あー」
ん、そろそろ時間だな
「え? あ、そろそろ終わりの時間ですね。有難う御座いますアギト殿。今日はとても楽しかったです」
「いや、あたしも結構楽しかった」
「いえ、今後もアギト殿に合格と言って頂けるような騎士を目指して精進します」
「おう、頑張れ」
まぁあたしのロードはアキハルだから合格って言葉は言ってやれねぇと思うけどな
雨水がアギトのロード探しを頑張り中