召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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百八十七話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

落とした財布との出会い→飯食って風呂入る→急ぎでイクス登場→ヴィヴィオはダウンしているらしい→シャンテちゃん以外の子は割とハシャいでいたので何かOKとしよう

 

温泉から上がった頃に端末を見てみると、アルフから騎士カリムが捕獲されたと連絡が入っていた

 

ご愁傷様です

 

まぁそれはそれとして、イクスが放置したヴィヴィオを探さないとな

 

 

「えーっと外の長椅子・・・あ、発見」

 

 

ぐだ~っと何時ものヴィヴィオの姿からは考えられないくらい脱力していた

 

 

「起きてるか~」

 

 

呼び掛けて数秒するとゆっくり顔を上げた

 

 

「・・・あきパパだぁー」

 

「お疲れさん」

 

「うん」

 

 

ヴィヴィオが寝転がった態勢で両手を此方に突き出した

 

 

「ん?」

 

「だっこ」

 

「・・・お前、恥ずかしいと思わないのか?」

 

「べつにぃー」

 

 

まぁ本人が良いなら良いんだけどさ

 

子供のヴィヴィオを抱き抱えるくらいなら大した労力でも無いので抱き上げて皆の所で戻った

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

魔力回復が妙に遅いのでリミッターを一つくらい外そうかと悩みながら戻ると、シャンテちゃんが明らかに不満そうに仁王立ちしていた

 

 

「おい」

 

「何かな?」

 

「オレ達の服を何処にやったんだ」

 

「何処っていま着てるじゃん」

 

 

着付けが微妙に間違ってるけど浴衣の文化なんてミッドに存在しないから仕方ないよな

 

 

「元々着ていたやつだ! なに勝手にすり替えてんだよ! あとなんで下着は準備してねぇんだよ!」

 

 

そう言う文化だからね

 

 

「シャンテちゃん達の洋服なら、既に新しいのに交換してロビーの人に預けてるよ。帰りに貰っておいてね」

 

「下着についてを答えろ!」

 

「それはそう言う服なんだよ。ミッドでは結構高価なんだぜ」

 

 

シャンテちゃんは無言で近づいてきて俺の首元を掴むと自分に引き寄せる

 

 

「にゃっ」

 

 

当然抱き抱えられていたヴィヴィオは急な揺れに対応出来ずに落ちかけた

 

 

「勝手な事してんじゃねぇよ。アンタはそれで達成感か何かに浸れるかも知れないけど、迷惑なんだよ、お節介野朗」

 

「お節介で上等だよ。シャンテちゃん」

 

 

何と無く俺もシャンテちゃんも引けないので見詰め合う

 

先に動いたのはシャンテちゃんだった

 

一緒に連れてきていた子供達に声を掛け引き連れて帰ろうとする

 

 

「・・・お節介なおにぃーさん」

 

「如何した? 別れの挨拶くらいは言ってくれるのかな?」

 

「・・・まぁな。リーダーはオレだから代表して言わせてもらう、今日は飯と風呂と服、ありがと・・・結構楽しい一日だったよ。久しぶりにコイツらのあんな無邪気な笑顔も見れた・・・酷い事ばっかり言って悪いと思ってる」

 

「そっか、そりゃ良かったし気にしてないよ」

 

 

最後に照れ隠しなのか舌を出して挑発して外に出る為の扉を開けた

 

 

「良いのですか? お父様」

 

「何が?」

 

「いえ、いつものお父様なら引き止めて何か対策と取ると思いましたので」

 

 

そうだね・・・イクスの読みは間違ってはいない

 

対策は幾つか考えはしている

 

 

「まぁ必要無いかなって」

 

「必要無い?」

 

「うん、たぶんだけど騎士カリムはあの子がスリだって気付いたと思う」

 

 

思い返してみれば、あの時の騎士カリムには幾つか不審な点が有った

 

そもそもあのチョコ事件だって真実か怪しい・・・いや、あれは真実か

 

慌て具合から嘘とは思えないしな

 

 

「と言う事は任せきりにすると言う事ですか?」

 

「二、三日様子を見て騎士カリムが動かないようなら俺が動くよ」

 

「あの・・・お父様に対して失礼かもしれませんが、如何して今すぐ解決せずに任せると言う選択をするのですか?」

 

 

・・・イクスにしては結構興味有り気だねぇ

 

ま、他人に興味を持つ事は悪い事じゃないから別に良いんだけどさ

 

 

「それは、ほら、あれだよ。俺ってこう言う性格だからシャンテちゃんの犯罪に対して如何対処を取って良いか悩むんだよ」

 

「裁けば良いのでは?」

 

「まぁ確かにあのまま捕まえれば今までの事もバレるだろうから何かしらの罰が下るだろうけど・・・んーそれは無いよね?」

 

「・・・無い。のですか」

 

「うん、シャンテちゃんはキチンと金持ちを選んで盗ってるみたいだしね。俺がスラれたのは、世間知らずのお嬢様のお付き人に見えたからだろうよ」

 

 

それに恐らく同じ場所でスリをしているんだから、どんなに上手でも人物を特定されるのはそう遠くない未来

 

終わりはシャンテちゃんが思っている以上に近いはず

 

 

「ともあれヴィヴィオを休ませたいから俺達も帰るか」

 

「・・・うにゃ~わすれられてるかと思ったよぉー」

 

「ごめんごめん」

 

「お父様から降りろ、降ろしますよ、降ろされたいのですか」

 

 

イクスの興味は既にシャンテちゃんからヴィヴィオに変わっていた

 

 

「イクスお姉ちゃんゆれるよぉー」

 

「知った事では無いです」

 

 

やれやれ、それにしても・・・

 

 

「イクスも着てくれるなんて嬉しいな」

 

「えっはい! お父様の故郷の衣類は素晴らしいですね! 特に下に何も着ないと言うのは画期的です!」

 

「イクスお姉ちゃん。たぶんそれ着付けちがう」

 

 

お、流石博識なヴィヴィオ

 

 

「・・・ホントですか? お父様」

 

「あとで教えようと思ってたんだけどね」

 

「・・・。」

 

 

この後、イクスはヴィヴィオに何故最初から言わないのかと理不尽なキレ方をしたあとに、俺に顔見せ出来ないと酷く落ち込んでしまった




ヴィヴィオの魔力回復の遅延は単なる気分の問題です

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