「雨水さん。何かこのじょうきょうに見覚えがあるのはわたしだけですか?」
雨水さんは苦笑いでシロと目の前の黒い獣を見比べてやれやれと言った仕草をする
「この狼の名前に魔法の魔が付いているのを忘れていた」
「で、ですよね」
腕の中にシロ、肩にフリードを乗せて私は今すぐにキャンプに戻る準備をする
あーそれにしても本当に見覚えがあるなー
特に涎を垂らされて見下ろされてる具合が
「えっと、確かに魔狼であってるな。にしても何でさー・・・何で子犬サイズから前回の竜種並になるとは」
「シロちゃん・・・将来あんなに大きくなるんですね」
「さて、ゴホン」
咳払いをした雨水さんは大きく片手を前に突き出して宣言した
「聞け! アホ犬共!」
「ガァアア!!」
「まぁそう怒るな、馬鹿犬。こっちが折角テメェらの連れを持ってきてやったんだ。喜べ」
「ガウッ!」
何だか歓迎の様子が一切見えない
言葉が通じないにしても馬鹿にされているくらいは何と無くで把握できる
もしかしたら言葉を理解しているのかも知れないですね
「あん? 自分達から捨てた? ・・・ふふっまぁ何と無く予想は付いてたさ・・・だから俺はお前等を罵倒した訳だが」
自分達から捨てた? 私と似てる
「このまま俺達はこの・・・俺等はシロと呼んでいるが、このシロを連れ帰っても問題は無い」
「ガウッ」
「ああ、帰る帰る。だからって折角俺等が苦労して見つけたお前等だ、せめて捨てる事についてお前等がシロに謝って貰いそれで帰ろう」
「ガアッ!!」
巨体の黒い狼に囲まれている状況で更にその狼が怒り出した
私は震えを我慢するので精一杯なのに雨水さんは堂々としている
「おっと! 此処で俺等に手を出せば状況不利になるのはお前等だぜ?」
「ガ」
「お前等、俺の職業を忘れた訳じゃあないよな? 俺の職は自然保護、それは危険から動物を保護すると同時に人間に危害を加える危険な動物を駆除指定出来るって訳だ」
え? そんな権限ありましたっけ?
雨水さんは空間モニターを宙に表示させる、そこにはイエスとノーと書かれた何かの最終決定のような画面が表示されていた
「確かにお前等だったら俺等を殺すのは容易いだ。が、しかしその後はどうだろうなぁー、最初らへんは派遣部隊も少数だから問題なくても五度目くらいにはお前等でも対処出来ない数だぜ? さぁどうする? 此処でプライド圧し折って謝れば丸く収まるんだぜ!」
か、格好良い
雨水さんが輝いている
「グルルゥ」
「ガウッ」
「ガゥゥ」
それぞれで会議でもしているのか一箇所に纏まり話し合いをしている、雨水さんはと言うと魔狼の群れの更に奥をジーッと見つめている、睨むに近いかな?
「決まったか! 馬鹿犬共!」
黒い狼は雨水さんの前に集まって頭を下げる
「「「グルゥ」」」
「アハハハッ! 俺にじゃねぇだろぉ! シロにだろ!? ハハハッ! 誇り高き魔狼が良い様だな!」
あれ? 雨水さんが壊れ・・・
黒い狼の皆さんも若干怒っているような雰囲気が出ている
「「「グルゥゥ」」」
「ガーウッ!」
シロは小さな手で黒い狼の頭を叩いた
「さて! 帰るぞ!」
「も、もう大丈夫なんですか?雨水さん」
「大丈夫だ。アイツらはどうやら長以外は馬鹿だ! この奥っぽいから逃げよう! 早く帰ろう!」
あ、そう言う事ですか
◇◇◇◇◇◇
キャンプに戻ると雨水さんは疲れたように椅子に座る、そしてダルいと一言呟いて空を見詰めた
「ったく、最悪だな」
「ですね」
「どうやら、そいつはアイツらの頂点の娘らしいぞ」
へぇー・・・へ?
「うん、正確には今の長の息子の腹違いの妹って位置だな。毛並みが白なのもそのせいだ。魔狼の長は代々白いらしい。んとキャロにはちょっと難しい話だがようは後継者争いだな」
「え? え?! じゃ、シロってとっても凄いッ?!!」
ってそんな事より娘って事は女の子だったんですか?! いままで男の子と勘違いしてました
「うん、まぁ将来は魔導師で言う所のB+からA-くらいは望めるな」
「ガウ!」
「お! 誇らしげだな」
「キュクルー!」
「お前が絡む意味が分からん」
そんな凄い狼と分かってなお、前と変わらず接する雨水さんはやっぱり凄い人なんだなぁーって私は思います
・・・啖呵切ってる雨水さんは格好良かったな
雨水がキャロには難しいと言った内容。
魔狼の長は代々オスが担っていた、そしてそれに合わせるように毛並みが白で生まれてくるのは必ずオス、しかし今回何故かメスで白い毛並みが生まれてしまい一族から追い出される事になる。それがシロ。