前回のあらすじ
最近巷の犯罪者である違法ベルカと対峙→逃げる→高度な結界のせいで手詰まり→命を賭けた受身な作戦を決行→二度とやりたくないと思った
運良く目を覚ましたのは病院のベットの上だった
どうやら、違法ベルカ事件の主犯の可愛い少女は、人を恨む事はしても、殺せる覚悟までは持ち合わせていないらしい
事前にフェイトさんの事件資料で死人が無しなのを確認しておいて良かった
「まさかお前さんと久々に会う場所が病院とはな」
病室の扉を開けて入ってきたのは、とても珍しい友人だった
「ヒューズ?」
「よぉ、知らない事を知らない人が手助けに来てやったぜ」
なんとも心強い友の言葉に俺は思わず思った
と言うか口に出した
「胡散臭せぇ」
「ヒデぇ!」
「いや、お前が絡むとなんか胡散臭いんだよな。で? その知らない事を知らないヒューズさんは犯人の手掛かりを掴んでいるのか?」
そもそも俺が怪我した事を何故知っている
まぁ態々やって来たって事は当然手掛かりの一つでも掴んでいるはずだよな
「もちろん。エリシアちゃんの恋人のお母さん? いやお姉さんか? の頼みだからね~・・・っとそろそろヤバい」
ほほぉようやくエリオを認めのか
・・・若干まだ荒い口調のような気もするけどな
「やばい? なにがだ?」
時計を確認したヒューズは扉の向こうを見る
その時、まるで計ったようにタイミング良く足音が聞こえてきた
「流石天才、いや鬼才か。お前さんの居所の情報を隠したにも関わらず、この短時間で見つけ出すとは・・・」
鬼才ね
イクスがそんな事を出来るとは思えないからヴィヴィオかな
「イクス達が来られると困るのか?」
「逮捕するはずの犯罪者が、幼女に殺されてました。なんて管理局に報告出来る訳ない」
「・・・まぁ・・・そうだな」
ぬるい違法ベルカさん達とは違ってイクス達は人を殺すのなんか日常って戦乱期に生きてた子だからな
「そんじゃまぁ詳細はお前さんの端末に送ってるから、一人の時にでも確認してくれ・・・一人の時に見てくれよ?」
「念を押さなくても分かってる。じゃ、エリシアによろしく言っておいて」
手を振ってヒューズが立ち去るとものの数秒で娘達が入ってくる
ホント計ったみたいな退場だな
「あきパパ!」
「お父様!」
「如何した? そんなに慌てて」
重傷と判断されはしたが、意識もあるし、俺が思うにそんなに酷くやられた訳では無いと思う
そして二人はもっと酷い状態を想像したんだろうな
「あれ? あきパパ?」
「お父様! お父様!」
首を傾げるヴィヴィオと跳び付いてくるイクス
「ってイクス、痛い! 痛い!」
「イクスお姉ちゃーん。あきパパ見た目より重傷みたいだよぉ~」
「軽い! ヴィヴィオ軽いぞ。普通に痛い! 結構痛い! 滅茶苦茶痛い!」
ヴィヴィオは少し考える仕草を見せて虹色の魔力を腕から手に掛けて巡らせた
「治癒魔法なら、医務官かキャロお姉ちゃんに任せた方が良いかもしれないけど、すこしだけ・・・ね?」
みるみるうちに傷が治っていく
まぁ恐らく外傷だけなんだろうけどな
「それにしても、あきパパを隠したのだれなのかな?」
「・・・。」
「ヴィヴィオ、少し黙って頂けますか? いまは、お父様をこの手で・・・」
「むぅーヴィヴィオだってしんぱいしたもん」
ヴィヴィオも控えめに抱き付いてきた
「さて、イクスにヴィヴィオ」
「「ん?」」
「せっかく見舞いにきてくれたのは嬉しいけど、少しだけ一人にさせてくれない?」
「「・・・。」」
明らかに不満そうである
「あの、お父様」
「ん? なに?」
「お父様が一人になりたいと仰るのなら、それは良いのですが・・・できれば私達のリミッターを外してもらえませんか?」
ヒューズの言った言葉が脳裏に浮かぶ
幾ら、ヴィヴィオやイクスでも、短時間で犯人まで辿り付けるとは思えない
だけど、マリアージュで虱潰しに探したり全ての分野で一流みたいなヴィヴィオが揃えば必ず犯人に辿り付くのは目に見えている
「いまは傷に響くから駄目」
まぁ本当は全く関係ないけど
傷と聞くと先程ヴィヴィオが治した部分を凝視していた
「見えなくても痛いのですよね」
「・・・まぁね」
「お父様が苦しい思いをしているのに他人への憎悪で心を埋め尽くすなんて・・・やはりヴィヴィオのようにはなれませんね」
「え? あ、うん。そうだよー、イクスお姉ちゃん。犯人なんてキャロお姉ちゃんにまかせる話だよー」
これは・・・ヴィヴィオは暴走しないように誰かに見ていてもらう必要があるな
本当に一瞬で俺の見間違いかも知れないけれど、ヴィヴィオの瞳に宿っていた憎悪はイクスに負けず劣らずだった気がした
久々ヒューズ登場でした