ジェイル・スカリエッティ
それが雨水さんが残した唯一の手掛かり
だから・・・だから私は会いたくなかった奴に会いに来た
「やぁキミが来てくれるなんて嬉しいなぁ」
私にとって不愉快でしかない
決別した過去
「私は嬉しくない」
「まぁそう言わずに、監獄は喋る相手が少なくて退屈なんだ」
「それが報いだ」
「そうだろう。まぁそんな事は如何でも良い」
自分の過酷さをアッサリ如何でも良いと言い切るところも相変わらず
スカリエッティ
稀代の大犯罪者で何かが違えば歴史に名を残こすはずだった科学者
「取引だ」
「いきなり不躾だねぇ。まぁ良いよ。機嫌が良いからね・・・今日だけで二人も来客があって本当に気分が良いんだ」
「二人」
「騎士様とチンクだよ」
騎士はともかくとしてチンク?
何故彼女が・・・
スカリエッティと会うにはそれなりの準備を要するはずなのに
「いや、チンクと話した内容は、恐らくキミが今から私に話す内容と大差無いと思うがね」
「人の心を見透かしたような言い方をするな」
「刺々しいね。普段からそうなのかい? ちょっとキミのコミュニケーション能力を疑うよ」
「貴様にだけだ」
「特別とは光栄だね」
駄目だ
面会時間も決められているのだから冷静にならないと・・・雨水さんがせっかくヒントを残してくれたのに・・・
「ところでFの遺産」
「フェイトだ!」
「・・・ククッ、フェイトと呼べば良いのかね? ところで面会時間も危なくなってきているよ。名残惜しいけど本題に入ろう」
「そんな事は分かっている!」
大きな声を出す私にスカリエッティは苦笑する
・・・これじゃあ、まるで私が駄々を捏ねているみたい
「さて、巷の違法ベルカの件だね?」
「そう、知っている事があったら話して欲しい。もちろん管理局に有益とみなした場合は減刑も考える」
「減刑? そんなのはいらない。私はこれでも此処が気に入っているんだ・・・まぁそれと違法ベルカの件・・・私は何も知らない」
「・・・そう」
話は終わり
そう思って私が面会室から出て行こうとするとスカリエッティが呼び止める
「ただ」
「・・・。」
「ただ、違法ベルカなんて事柄を起こせる固体を私は知っている」
黙って席に付く
「通称プロジェクトUrd・・・プロジェクトFの次なる実験ってところかな」
「プロジェクトUrd?」
「私にとってはお遊びに過ぎない実験だったのだが・・・確か固体識別名はウル。それが恐らく今回の主犯者だよ」
「・・・何が目的だ」
何の条件も無しに此処までの情報を開示するとは思えない
「目的? ああ、強いて言うなら廃棄し損ねた失敗作が暴れているので、作った側からの謝罪と言ったところかな」
「はい、きだと?」
非人道
なんて言葉は通じないと分かっている・・・だけど・・・
「キミには刺激の強い言葉だったかな。プレシア・テスタロッサから廃棄され掛けたキミにはね」
「母さんはそんな事しない!」
「ククッ彼女は損得勘定の出来る学者だったか、まぁ利用価値の有るモノを捨てたりはしない訳だね。だが生憎と私は失敗作は切り捨てる学者なのだよ・・今回は局の何処かに保管されていたらしいが・・・」
確かにその子は人造生命体かも知れないけど、心のある人
それを失敗とか成功とか・・・絶対分かり合えない
「まったく、私としては自分の失敗作が出回るのは恥ずかしいね」
「話は以上だな」
「・・・そうだね。あ、ただ気をつけておくと良い。プロジェクトUrdとは才能遺伝の実験。そしてウルに使われた才能は、私の科学者としての才能だ」
スカリエッティからの忠告
それは第二のスカリエッティとも言える者を相手にする事を意味していた
ウルを保管していた管理局は雨水やヒューズが浄化する以前の管理局です