二百三十七話~side 雨水~
前回のあらすじ
拘置所へ→相変わらずのスカリエッティ→結局振り返れば終始向こうのペース→なんだかんだで→ウルちゃんは逃走
闇雲に走ってくれたおかげで探すのには苦労したが、無事大事になる前にウルちゃんを捕獲してエリオ達に引き渡した
数日後
少し日にちを早めての退院に成功した
「いやぁー! やっぱり病院内は暇だったね~!」
学院側からは大事を取って明後日くらいから来るようにと伝えられている
と言う事で
「お父様! おめでとうございます!」
「あきパパ、おかえり~!」
何故か時間帯的に学院居るはずのイクス達に迎えられながら自宅に帰っていた
「学院は? 今日は休みの日じゃないよね?」
「大丈夫です。今日はお父様の退院の日なので祝日です」
「おめでたい日だよっ」
気持ちは嬉しいがそれは学院を休む理由として通ったのか?
「シロやアギトは?」
いつも家で家事をしている二人がイクス達のサボりを見逃すとも思えないんだが・・・
「ルールーの家にいったよぉ~」
「二人には私達の為に家を譲って頂きました」
・・・追い出したのな
「もう良いや。最近俺が居ない間に学院で変わった事はあった?」
「そうですね・・・プール開きがありました」
「すっごくひろいんだよっ! こぉーんなあってね! こぉーんなふかいの!」
ヴィヴィオが目一杯両手を広げてその広さを表現している
「それは溺れたりしたら危なくないか?」
「その危険は無いですよ、お父様。浅めのプールも設置されていますし、なにより深いプールに入れる生徒は先生方からの許可が必要ですから」
「ふふん! ヴィヴィオは水泳でもクラスでいちばんなんだよ!」
「いつもだけどヴィヴィオは凄いな。えらいえらい」
自慢げに胸を張るヴィヴィオを撫でる
すると久しぶりなせいかヴィヴィオはとても嬉しそうに目を瞑って撫でやすい位置に頭を移動させていた
「・・・。」
「イクスは水泳はどうなんだ?」
「ヴィヴィオには劣る成績でした」
戦闘のパターンとして水中と言うのも存在するので、イクスでも不得意にはならないはずなんだけど・・・
「それでもクラスでは上の方だろ?」
「二番です。あの碧銀さえいなければ・・・」
「碧銀?」
何故か撫でられていたヴィヴィオが過剰な反応をしめたようにも見えた
「こらこら、人にあたるのはイクスの悪い癖だぞ」
「・・・ごめんなさい」
「そう言われてもなにげにヴィヴィオをつねろうとしたのはイクスお姉ちゃんらしいよねっ」
「ヴィヴィオ!」
「にゃ~! ヴィヴィオはわるくなーい!」
久しぶりに見慣れた鬼ごっこが発生していた
「ところでイクスにヴィヴィオ~! 暇だから遊びに行かない?」
「行きます!」
「いく!」
息ぴったりな姉妹だな
「姉妹喧嘩も良いけど程々にな」
喧嘩も一切しない姉妹よりは、喧嘩くらいは酷くならない程度に適度にしておいても良いと俺は考えている
「ヴィヴィオ、おくないプールにいきたーい! あきパパに水着みせてイチコロさせちゃうもんね!」
「フェイトさんの水着なら未だしもお前じゃ無理だ!」
「確かに私もヴィヴィオの水着姿に魅力が有るとは思えませんね」
「二人してひどいよっ!」
泣き真似をしながら二階に駆けていったヴィヴィオだが、予想が正しければ、そのまま準備をして降りてくると思う
「さて、イクスも準備をしておいてね」
「はい、お父様の分まで既に終えています」
・・・えらく準備が良いな
俺が遊びに行くのを言い出すのとヴィヴィオがプールと言い出すのを予想していたのか?
「そっか、ありがと」
「いえ、当然です」
当然と良いながらもイクスの目は完全に期待の眼差しに見える
ここであえて何もしないか、それとも褒めるか
「むしろ勝手に部屋に入った事に対して叱るべきか?」
「え? あ、あのお父様?」
「いや、しかしイクスの髪はさらさらしてるよな。触り心地が良い」
結局撫でる
「お父様の心地が良いのなら私も心地良いです」
「そう言うもんか」
「お父様の手は暖かくて優しくていつまでも触られていたいと思います」
この後、準備を終えて降りてきたヴィヴィオが俺とイクスの様子を見てズルいと叫んだ事は言うまでも無い
ようやく雨水復活です