召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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二百九十四話~side イクス~

硝煙の香りと地面に開いた無残な弾丸の痕を残して土煙が晴れていく

 

お父様が仰向けで倒れていました

 

 

「安全な所に運ばなくては」

 

 

終わりです

 

動けなくなったお父様が戦闘の余波に晒されないようにするのが最優先事項ですね

 

 

「残りライフ無し。ダウン確定」

 

 

安全を確認して後にゆっくりと近づく

 

そして大人モードになってお父様を抱え上げた

 

 

「いつもとは逆ですが、これも好きです」

 

 

星見の最中に寝てしまった私を運んでくれるお父様

 

起きてしまっているのに気付かれないかドキドキして、結局ベットに運んでもらった後はお父様の余韻に浸って考え込んでしまいます

 

 

「駄目な娘です」

 

 

相応しくないって分かっていながら、妹であるヴィヴィオにさえも譲る気が起きない

 

ずっと、ずっと、ずっと一緒に居たい

 

 

「ん、これは」

 

 

誰かが近づいてきている

 

まぁこれは何と無く予想のつく相手です

 

 

「間に合った?! イクスお姉ちゃん」

 

「いえ、残念ながら手遅れです、ヴィヴィオ・・・それに、覇王」

 

 

これから倒そうとした相手が自ら来てくれるとは楽で助かります

 

しかしあのお父様の生徒の騎士は敗北したのでしょうか?

 

 

「あぁーまったく、流石にお姉ちゃん相手に一対一はって言ったのに」

 

 

やれやれ。と呆れた仕草をしたヴィヴィオは一瞬だけストラトスと目を合わせていた

 

何かの合図ですね

 

 

「まぁあきパパの仇くらいは取るけどねっ!」

 

 

ストラトスは私の頭に断空を、ヴィヴィオは私の足を刈り取るように蹴りを。それぞれ全く同じタイミングで攻撃を仕掛けてきた

 

お父様を抱えている以上は余り大きく動けません

 

 

「タイミングは良し。ですが、ヴィヴィオ。貴方は大きな間違いを犯しています」

 

 

私にとってお父様に荷物に成り得ません

 

ストラトスの拳に額を合わせながらヴィヴィオの足を蹴り返す

 

 

「私の断空をそんな方法で」

 

「断空。威力の割りに大層な名前を付けているんですね」

 

 

ヴィヴィオとの蹴り合いは、私の方が押し勝ってヴィヴィオを下がらせる。そして体勢をすぐに整えて驚き戸惑うストラトスの脇腹に蹴りを入れた

 

 

「アインハルトさん!」

 

「あぅ、がっ・・・だ、大丈夫です」

 

 

流石に一撃で全てのライフを削る事は出来ませんでしたか

 

しかし前衛と後衛が揃っているのですから、定石通りにヴィヴィオが後衛でストラトスが前衛を勤めれば、もっとマシになるはずでしょうね

 

 

「お父様。少しだけ、降ろします」

 

 

お父様を安全な私の背後に下ろして振り向き様に戦弓を作り出す

 

対戦車用ライフル。本来人相手に使う武器ではありませんがヴィヴィオ相手なら大丈夫でしょう

 

 

「あ、相変わらず規格外。お姉ちゃん? そんなの片手で撃ったら肩外れるよ?」

 

「心配無用です。外れたら嵌めれば問題ありません」

 

「にゃはは・・・でも、無用心だよね。イクスお姉ちゃん」

 

 

引き金に掛けている指に力を込める

 

しかし、その前にヴィヴィオは転送魔法を使った

 

 

「大切な人は放しちゃだめだよ。こんな風に」

 

 

妹はお父様を抱いていた

 

お父様は大人モードのヴィヴィオに凭れ掛かるように意識をなくしている

 

これでは撃てない

 

 

「放しなさい」

 

「いや」

 

「これでもですか?」

 

 

片方ずつ狙いを定めていた弓をストラトス一点に絞る

 

 

「にゃはは、怖いなぁお姉ちゃん・・・あきパパバリア!」

 

 

ヴィヴィオが何かアクションを取る前に引き金を引く

 

弾丸は一切の抵抗無くストラトスに直撃して残りのライフを全て削り取っていた

 

 

「むぅ躊躇が無い・・・まぁでも! イクスお姉ちゃんは転送魔法を使える訳でもないし、あきパパが居るから手を出せない」

 

 

スフィアが数十個展開される

 

こう言う勝負において、卑怯と呼ばれる手を一切迷わず使う所はお父様に似たのでしょうね

 

羨ましい

 

 

「奪うまで」

 

「辿り付けるかな? お姉ちゃんに」

 

「はんっ、妹が偉そうな口を聞くなと言って置きましょう」

 

 

唐突に、本当に唐突に私とヴィヴィオは桜色の閃光に襲われた




ちなみにカリーノは二人の猛攻にライフを削られ回復の為に撤退していました

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