召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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二百九十九話~side イクス~

家族旅行二日目

 

深夜

 

暗闇の中で茜色の暖かい光が周囲を満たす

 

 

「さすが、お父様です」

 

「ありゃ? 子供の頃は魔力光が違ったのか」

 

「綺麗です」

 

 

徐々に小さくなる光を止めて、私の差し出した手を掴むと魔法式を展開した

 

少しだけ脱力する

 

でも、お父様に私の魔力が流れるのがハッキリ実感できて気持ちがいい

 

 

「式の展開の速さも問題無し。イクスからの魔力供給でも大丈夫・・・凄いな、子供ボディ」

 

「可愛らしいです」

 

 

いつもの落ち着いたお父様も、いまの活発そうなお父様も、どちらも好きです

 

 

「いや、あんまり嬉しくない・・・で、ウルは見付かった?」

 

「あ、そうでした。ちょっと待ってください」

 

 

この惑星に放っている全ての兵に情報を求める

 

しかしマリアージュなんて虫並みの知能ですからね

 

正直期待は出来ません

 

 

「複数。妙な拠点を見つけています」

 

「どんな?」

 

「遺跡が二つ、人工施設が三つ。です」

 

「・・・人工施設は最近の物?」

 

「はい、一つは新しいですが、二つは古い物です」

 

 

腕を組んで考えている

 

格好良いです

 

十代の前半くらいでしょうか

 

この姿を独り占めできていると言うだけで至福です

 

 

「うん、まぁ居ないと思うけど、新しい施設の方にマリアージュを向かわせて」

 

「はい」

 

 

恐らくお父様にとって、子供の状態まで戻れたのは嬉しい出来事だと思います

 

なぜなら魔法を使えるから

 

 

「おぉ、デバイスも使用してないのに」

 

 

無垢な子供の様な表情で自分の手の上の魔法を見ている

 

やっぱり、諦めていると言っても・・・心の奥底では憧れていたんだと思います

 

 

「・・・。」

 

 

だからこその嫉妬心。いや、お父様の場合は憧れと言うのでしょうか

 

お父様が高町なのはを苦手にする理由はそこにある

 

きっとお父様は見てしまった。高町なのはの異常な才能を・・・不屈の魔導を・・・

 

 

「・・・なんて、お父様から魔法を奪っている私が思って良い事では無いですね」

 

 

私の特殊な魔力が、お父様に悪影響を及ぼしているのは知っていた

 

ヴィヴィオの魔力も同様ですが

 

それでも、いまの表情を奪うと知ってながら・・・私はお父様の傍に居続けていた

 

 

「いやぁ・・・戻りたいが、これも良いねぇ」

 

「・・・。」

 

 

本当に傍に居てもいいのか?

 

お父様の表情を見ると自然にそう思えてくる

 

 

「ん? どうした? イクス。マリアージュの負担でもあったか? 辛そうだぞ」

 

「あ、いえ・・・だいじょう、ぶです」

 

「ずっと探してくれてるからね。辛いなら休んでも良いよ?」

 

 

辛くなんか、無い

 

きっと、お父様に心配して欲しいだけ・・・私の悪い癖だ

 

心配させたくないのに、体は構ってくれるお父様に甘え始める・・・自己抑制がなってない

 

 

「お父様。もし、もしですよ? いまの幻の魔法を、現実にする事が出来たら・・・望みますか?」

 

 

方法は簡単

 

害のある子を捨てれば良い

 

 

「イクス。面白い顔をしてるね・・・ふむ、ちょっと楽しみ過ぎたかな。ごめんね」

 

 

どうやら私の浅い心の底なんて、お父様には見え見えだったみたいです

 

・・・当然ですね

 

 

「いえ、お父様は悪くないです」

 

「ま、現実にできたら? もちろん望むけどね」

 

「うっ」

 

 

にへらと楽しそうに笑う

 

幼くなっても変わらないお父様でした

 

いじわるです

 

 

「ははッ、まぁ出来たらの話だけどね」

 

「出来ます。お父様なら」

 

「いいや、そのお父様だから出来ないのさ」

 

 

首を傾げると、お父様は少し考えて、真っ直ぐ伸ばした指を私の胸の上に置く

 

いつもとは違って殆ど同じ背丈なので、目線が合う・・・逸らそうとしても、魅入ってしまっている

 

 

「俺がイクスやヴィヴィオの父親を辞めれると思う? 魔法は惜しいけど、根本的な価値に違いがあるよ」

 

 

お父様の指は、そのままゆっくりと上がっていき唇に触れる

 

心臓の鼓動が速くなる

 

 

「あき、はる・・・様?」

 

 

そして残念ですが指は止まらず私の頬を狙った

 

 

「いひゃいです」

 

「イクスは考え過ぎ。もっと自分を高く評価しな」

 

 

・・・同じ。お父様も、もっと自分を高く評価して欲しい

 

きっとヴィヴィオも賛同する意見。それを私は、頬の痛みで言えず仕舞いになってしまった




未だに魔法に未練たらたらな雨水と、それを感じて焦るイクスでした

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