召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百五話~side ディアーチェ~

雨水秋春と言う男と出会ったのは、我らが未だ砕け得ぬ闇の姿を見る以前の事だった

 

戦力としては最低の部類

 

正直言って、足手纏い以外の言葉が思い浮かばん

 

しかし、それでも・・・あってはならない話だが、王が調略されてしまった

 

 

「以前と変わらぬのであれば、味付けはこんなものだな。おい、シュテル」

 

「はい」

 

 

味見用に小分けにした物をシュテルに渡す

 

レヴィだと何でも美味しいと言うからな。いや、我の作った物は美味と決まっておるのだから、その感想も決して間違いでは無い

 

 

「どうだ?」

 

「流石は我が家の調理技術の頂点を極めし存在。寸分狂わず、アキハル好みだと思われます」

 

「言い過ぎだ」

 

 

うむ、では次だな

 

 

「王」

 

「なんだ」

 

「アキハルが魔法を使えるようです」

 

 

魔法を扱う。それ自体は珍しくも無い話題のはずが、我は手を止める程に驚いていた

 

奴が魔法を?

 

なんと笑える話だ

 

 

「それは何の冗談だ?」

 

「冗談ではありません。紛れもない事実であり、驚くべき真実です」

 

「そうか。我が思っていた以上に、差異は意外にも大きいのだな」

 

 

我らの知る調略師が知ったらどんな顔をするだろうな

 

落ち込む様が浮かぶわ

 

 

「王様! 僕も感じたよ! フツぅーくらいだったけど!」

 

 

突然、間に割り込むようにしてレヴィが現れた

 

 

「聞いたおったのか、レヴィ」

 

「ん? うん! だから僕も味見したい!」

 

「だからの使い方はそうではない」

 

「えと、じゃあ、シュテるんだけズルい! 僕だって王様の料理を食べたいんだよ! かな?」

 

 

両の手を握り締めて上下に振り、答えを待つように首を傾げる

 

暴れるでない。まったく仕様が無い奴め

 

 

「らしいが最初からそうで無くては意味を成さんな」

 

 

悩むレヴィの前に、シュテルに出した物と同じ物を置く

 

 

「いいの?!」

 

「おかわりは無いぞ?」

 

「うん! 王様大好き!」

 

 

一口で食べ終えたレヴィは物足りなさそうに皿を見詰める

 

 

「そんな顔をするでない」

 

「ぅぅ、足りないよぉー」

 

「味見で満足されてたまるか。それより、感想をもらおう」

 

「おいしい!」

 

 

うむ、当たり前だ

 

もう少しくらいなら、食べさせても良いのだが、空腹とは一層に食を進ませるモノだからな

 

 

「よし、仕上げに掛かるぞ!」

 

 

我の一声で再び二人は持ち場に戻った

 

それから暫らく。料理を持って戻ってみると、ユーリが調略師に抱かれてテレビを見ていた

 

 

「思ったより早く打ち解けたようだな」

 

「あ、ディアーチェ。準備は終わったんですか?」

 

「うむ。すまんが、ユーリは赤毛と桃色を呼んできてはくれぬか?」

 

「分かりました!」

 

 

ユーリが出て行った事で、初めて我と調略師の二人っきりになる

 

 

「ディアーチェちゃん。俺も何か手伝おうか?」

 

「ちゃんは止めろ。知らぬ事であろうが、以前は呼び捨てだったのだぞ? 背中が痒くて堪らん」

 

「レヴィちゃんやシュテルちゃんも?」

 

「無論だ。赤毛と桃色にはそうでは無かったようだが、少なくとも我らにはそうであったな」

 

 

嘘だがな!

 

いつまでも、ちゃん付けなどで呼ばれてたまるか。我の威厳に関わる

 

返答は曖昧なモノだったが、まぁ良い。帰るまでには無理やりにでも呼ばせてみせるわ




一週間ぶりの更新

後書きが特に無いので、遅れの理由を・・・だいたいダークソウルのせいです

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