三百十六話~side ヴィヴィオ~
家族旅行二日目
脱衣所から逃げ出したわたしは、呼吸を整える為に静かに扉に背を預ける
にゃはは、まったくイクスお姉ちゃんはこわいよねぇ
「それより、二人は気付いてるかな?」
んぅ、あの魔力なんだったんろう?
わたしは腕を組んだ時に気付いたけど、イクスお姉ちゃんの感度なら十分気付けたはず
まるで、ロストロギアでも体内に入れてる感じだった
「まさかだよね」
うんうん、そんな訳無いよね。だいたい危険だもん
効率悪いし、幾らドーピング法として使えてもアレは人を選ぶ業だよ
「ヴィヴィオさん? お一人で考え事ですか?」
「アインハルトさん?!」
わたしが驚くと、小さくペコリと頭を下げた
「深く考え込んでいたようですが」
「だ、大丈夫です! ぜんぜんまったくもーまんたいです!」
「はぁ・・・大丈夫のであれば」
とってもテンパッてるかもっ
アインハルトさんに変な子って思われてないかな?
「にゃぅぅ」
「本当に大丈夫ですか? 私は非力ですが力になれ・・・なりたいです」
真っ直ぐな瞳に見詰められてたじろぐ
「そ、そうだ! アインハルトさん! せっかくですし、今日の練習会の話をなのはママに聞きにいきませんか」
「そうですね」
なのはママの部屋の場所はバッチリ覚えているので、話し易い速度で歩き出す。アインハルトさんはわたしの一歩後ろを歩いてくれている
「アインハルトさん」
「はい」
「なんで、あそこに居たんですか? アインハルトさんの部屋って離れてますよね?」
「呼ばれた気がしたんです。恥ずかしい話ですが・・・それが、ヴィヴィオさんからだったら嬉しいなって思いまして。つい、足を運んでしまいました」
ズ、ズルい
もぉぜったい顔真っ赤になってる
「そう、なんですか」
「はい」
アインハルトさんが、余りにも平然と当たり前の様に言っているので、わたしだけがドキドキしてるみたい
にゃぅ、そう考えたら気落ちした
「ヴィヴィオさん」
「は、はい。なんでしょう」
呼ばれたので振り向くと、アインハルトさんは少し後ろに立っていて、近くの扉を指差している
「ここではないでしょうか? プレートにお母様の名前がありますが」
「あ。にゃはは~ちょっとボーってしてたみたい!」
恥ずかしさを隠す為にノックもせずに扉を開けて中に入る
スタスタと早歩きで奥にいく。部屋の内装はそれぞれ少し違うみたい
「寝てるのかな? アインハルトさん。寝室見てきますので待ってて下さい」
「はい」
だらしない格好で寝ている母親を見せるは恥ずかしいもん
キチンと身嗜みを整えてアインハルトさんに会ってもらわなきゃ
「なのはママぁー?」
「にゃっ! ヴィヴィオ?!」
「ふぇっ! ヴィヴィオ?!」
「にゃーあーえー・・・シャワーは浴びて出てきてね」
待ってとか違うとか後ろから聞こえますけど知りません
だいたいこれから集まって夕食を食べるのに、その前にワインなんて飲むものじゃありません
「しかも結構良い銘柄だったし。んぅ渡したのはルールーだ、きっと」
収集癖のあるルールーから貰ったに違いない
「どうしました?」
「あ、その。ちょっと眠ってたので起こしてきました」
「・・・良かったのですか?」
「いいんです!」
は~調子狂うなぁ
いつもそう、アインハルトさんと一緒に居る時はいつだってらしくない行動ばっかり取っちゃう
なのはママには後で説教
「ジュースでも飲んで待ってましょうか」
「お任せします」
冷蔵庫を開けて中を見たわたしはとてもビックリした
酒、酒、酒
家では見た事も無いお酒の量でした
「な、なのはママぁああーー!!」
ぜったい禁酒させます
アインハルトも表には出してませんがヴィヴィオと同じくらい心揺らいでます