召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百三十五話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

ウルから連絡が入っている→以前、頼んでいたデバイスの件で情報が足りないらしい→アインハルトちゃんを連れて開発部へ

 

熱中しているウルは、完全に俺の存在を忘れてアインハルトちゃんとモニターを見ながら愉しそうに作業をしていたので、隣の仮眠室に移動してヴィヴィオが来るまで待つ事にした

 

 

「どーん!」

 

 

程なくして陽気な声で起こされる

 

 

「・・・。」

 

 

いや、まぁ起こされるのは覚悟してたから別に良いけど

 

 

「体重増えた?」

 

「にゃはは、殴るよ?」

 

「いやいや、成長したなぁって意味だよ」

 

 

よっこいしょ

 

上半身を起こすと、上に乗っていたヴィヴィオはバランスを崩して倒れる

 

 

「ふぅ、ヴィヴィオはイクスに比べて成長が早いよね」

 

「・・・それは、ちょっと違うような」

 

「ん? ああ、そうか。ヴィヴィオが早いって言うか、イクスが遅いんだったな。成長遅延の魔法。アレは本当に実感し辛いな」

 

「にゃはは、まぁ色んな魔法の副産物みたいな感じだしね。あんなに根深いと、呪いって言ってもおかしくないの、純粋な王の呪いってね」

 

 

先程と同じく陽気に笑うヴィヴィオだけど、先程とは違って、瞳は少し寂しそうに見えた

 

 

「あ、そうだ」

 

「ん? どうしたの?」

 

「ごめん。アインハルトちゃんにデバイスの件を話しちゃったんだよな」

 

「あー」

 

 

そう言えば、何だかんだで未だに話して無かった事を思い出した

 

聞き終えたヴィヴィオは、少しだけムッと顔を顰め、すぐに呆れ顔に変わる

 

 

「なんとなーくアインハルトさんがウルと居る時点で気付いてたけど・・・もぉーヴィヴィオから言いたいって言ったのにぃ」

 

「ごめんごめん」

 

「許さないもーん」

 

「え~」

 

「にはー」

 

 

今度は楽しそうにコロコロと笑うとクリスが目の前にふよふよと寄ってきた

 

首を傾げるとモニターが展開される

 

 

「さて、誰でしょー!」

 

「いや、布団に包まってる人? くらいしか分からん」

 

「むっふふ~」

 

 

なぜか凄く楽しそうなヴィヴィオ

 

まぁ本当の所は周囲に置いてある物などで、イクスの部屋だと分かっているし、つまりは布団に包まっているのはイクスだろうと言う所までは分かるが

 

・・・それを見せて何をしたいのか

 

 

「今日は寝るのが早いね」

 

「違う違う、これは拗ねてるんだよ。ノノからの映像なんだけどね~・・・音声聞く? 面白いよ~」

 

「音声?」

 

 

そう言えば先程からずっと無音だな

 

てっきり眠っているせいからだと思っていた

 

 

「あきパパにとっては珍しいお姉ちゃんが見れるよ~」

 

 

俺にとって珍しいイクスか

 

そもそも、イクスが俺に隠し事をする事自体が途轍もなく珍しいんだが

 

 

「よし、繋げ」

 

「は~い」

 

 

音声が繋がれるとイクスの声が小さいながら聞こえてくる

 

 

「お父様もヴィヴィオもお出かけ・・・私だけお留守番・・・お父様はお仕事で・・・ヴィヴィオは手伝いなんでしょうかね・・・そして私は役立たず・・・ヴィヴィオみたいに万能でも無いですし、当然ですよね」

 

「くくっ、あっははは! さっきから、ずぅっとこれなんだよ!」

 

「私だけ・・・どうせ私に出来るのは戦です・・・戦闘しか出来ない娘なんて・・・」

 

 

姉が落ち込んでいる姿を実に楽しそうに見ている妹である

 

そして人の上で足をバタつかせないで欲しい

 

 

「と、言う訳でぇー・・・早く帰ってあげてね」

 

 

笑っていたヴィヴィオは真剣な表情になっている

 

次々に色んな感情を・・・忙しい奴だ

 

 

「確かに、その方が良さそうだな」

 

「にゃはは、それで許してあげる。わたしは心配しなくても、お姉ちゃんみたいに拗ねたりしないから」

 

 

にへら。と笑いながらも有無は言わせてくれそうに無い

 

やれやれ、随分とお姉ちゃんっ子に成長した事で

 

・・・いや、元々ヴィヴィオは何故かイクスが大好きだったな

 

 

「ありがと、ヴィヴィオはお利巧で助かるよ」

 

「お利巧さんも大変なんだよ?」

 

「分かってるよ」

 

「えへへ、おやすみ」

 

 

おやすみって事は今日はヴィヴィオはウルの所で過ごすつもりか?

 

まぁ良いや

 

 

「ああ、おやすみ」


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