召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百三十八話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

帰宅→普段通りのイクスに迎えられる→高町一尉がテーブルに伏していた→面倒なので放置→イクスの手料理を堪能→料理メモを見せてもらう→意外とキッチリしている→・・・将来に期待だな

 

あれから。三日と言う、予定より随分と早い日数で、テンションの高いウルから完成の知らせが届いた。と、同時に開発部の人から、ウルが倒れたとの連絡もあった

 

相当のめり込んでいた様だ

 

 

「へぇ、まだまだと思っていましたけど、もうそんな時期ですか」

 

「まぁな」

 

 

現在。何故かキャロに近況報告をしている

 

・・・まぁ何故も何も、偶然帰って来れたキャロが、久しぶりなので二人っきりでレストランに行きましょう。と言い出したのが原因なんだけどさ

 

珍しくイクスもヴィヴィオも付いて来ないと言い張った

 

 

「それで、ウルは大丈夫なんですか?」

 

「ああ、連絡をもらった後。直ぐに迎えに行って局の病院に放り込んできた」

 

「病院って」

 

「どうやら、アインハルトちゃんのデータが揃った日から三日間、飲まず食わずでニヤニヤしながら、デバイスの作製を続けていたらしい」

 

「あ~想像できますねぇ」

 

「だろ?」

 

 

元々協力的だったが、そこまでだったとは思えない。アインハルトちゃんのデータに何か刺激されるモノでもあったんだろうか

 

 

「まったく相変わらずですね」

 

 

恐らくウルの姿を思い浮かべて笑っていたキャロが、少し眉を潜めて壁の先を見詰めるように視線を動かす

 

方向的には店の入り口の方か

 

 

「どうした?」

 

「いえ、何だか騒がしくないですか?」

 

「そう、か?」

 

 

何も喋らずに音だけに集中する

 

すると、装飾された綺麗な壁の向こうから、確かに言い合いをする声が聞こえてきた

 

 

「他の客が喧嘩でもしてるんじゃないか?」

 

「んー、防音室だと聞いていたんですけど」

 

「危険時の為に一定量の音量を超えると聞こえるんじゃないか?」

 

「・・・とりあえず納得しておきます」

 

 

難しい事を考えるのは止めたようで、目の前の料理に手を付け始めた

 

しかし、それも数分で、まったく終わらない言い合いにキャロの表情はドンドンと険しくなっていっている

 

 

「・・・段々音も大きくなってきていますし。場所、移しますか?」

 

「いや、大丈夫。大して気になってないよ」

 

「秋春がそうでもですね! 私が気にします! 折角久しぶりに秋春と二人っきりなのに雰囲気台無しです!」

 

 

どうやら最初からキャロの中では場所を移すで決定されていたらしい

 

うん、何か理不尽

 

 

「お客様」

 

 

少し怒り気味にキャロが立ち上がった瞬間、仕切っていた扉が開いてウェイターが入ってきた

 

 

「なんですか」

 

「その、お客様の知り合いだと言う方が来られているのですが・・・お通ししても宜しいですか?」

 

「知り合い? 誰でしょう?」

 

 

此方に視線を送ってきたので、取りあえず首を横に振る

 

どうやら、キャロにも心当たりは無いらしい

 

 

「えと、名前とか」

 

「それが、事情は話せないとの事で。会えば分かるそうです」

 

「会えばって・・・まったく誰でしょう? んーまぁ良いです。通してください」

 

「分かりました」

 

 

返事を聞くとウェイターは急いで出て行った。もしかして、さっきの喧騒は、その俺らの知人かも知れない奴が原因だったのか?

 

 

「良かったのか?」

 

「・・・仕方ないです。なんだかお店の人も困っている様子でしたし」

 

「確かに急いでたな」

 

「ホントです。誰ですかね」

 

 

暫らくすると、先程のウェイターが戻ってきて、キャロも良く知った顔をしている少女が入ってきた

 

 

「やっほー! あっきー久しぶりっ!」

 

「ってフェイトさん?! なにを!」

 

「レヴィ?!」

 

 

え? とキャロは混乱した表情で俺の方を振り向く。まぁ当然ではあるけど、レヴィを知らないキャロにとっては、どう見たって昔の頃のフェイトさんにしか見えないだろう

 

髪色とか口調とか雰囲気とか全然違うけど

 

 

「え、えと。フェイトさん。ですよね?」

 

「いや、あの子はレヴィって言って、ちょっとした事情でフェイトさんにそっくりな全く違う人物だよ」

 

「いや、ちょっとした事情って・・・コスプレ?」

 

「違う」

 

「そ、そうですよね、フェイトさんに限ってですよね」

 

「ん~? なになに、僕の話?」

 

 

レヴィは自分の名前が出た事で少し食い気味に近寄ってきた。しかし、すぐにテーブルに並べられた料理に目が移っている

 

 

「わー! 凄いね! なに? 誰かの誕生日かなの?」

 

「レヴィちゃんも座って」

 

「ちゃん付け禁止! 王様に言われたんでしょ? レヴィって呼ぶ事! あれ? ・・・って言うか、さっきレヴィって言ってたよね?」

 

「・・・はいはい。レヴィも一緒に食べようか」

 

「うん!」

 

 

嬉しそうに座るレヴィ

 

俺をあっきーと呼び、更にはあの会話を知ってるって事は、あの時に出会ったレヴィで間違い無いのかな

 

 

「秋春? 随分と親しそうじゃないですか。また女の子ですか。女の子。好きですねー、女の子」

 

 

三回も言われた

 

しかも不機嫌そうだ。久しぶりに帰って来たのに事件に巻き込まれて不満なのか?

 

 

「えと、キャロ? 怒ってる?」

 

「はぁ? 何で、私が怒らないといけないんですか。それとも、秋春は私に怒られる事をしたんですか?」

 

「してません」

 

「なら良いじゃないですか」

 

 

ジーッと見詰められる

 

何だか攻められている気分になってきた

 

 

「もぉ、あっきーもばいんばいんのピンクっ子も早く食べようよぉ」

 

「なッ!」

 

 

ばいんばいんのピンクっ子

 

間違いなくキャロの事だろう。言われた本人は非常に面白い顔をしている

 

 

「キャ、キャロです」

 

 

物凄く何かを言いたそうな顔で震えるキャロ・・・正直可愛い

 

 

「ん? キャロって言うの? うん! 覚えたよ! じゃあ食べようよ!」

 

 

完全にレヴィのペースになった俺らは、とりあえず事情の説明をレヴィに求めるのは後にして食事を再開した


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