召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百五十話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

学院に戻ってイクスを説教→反省はしている様だが行いは認めず→暫らくだんまり→気付けばイクスは念話をしていた→その後は素直に非を認めて反省→次は必ず行くとの約束してくれた

 

下校時刻も過ぎ、恐らく大半の生徒が帰宅した時間帯。まだ残っている生徒に帰宅を促す為に中等科の校内を見回っていた

 

 

「うん、今日は遅くまで残ってる生徒は居ないみたいだな」

 

 

テスト前などになると残って勉強している生徒が、クラスごとに何人か居る事が多い。今日みたいに特に何でもない日はこんな時間まで残ったりしないみたいだ

 

 

「あとはイクスのクラスか」

 

 

まさかイクスが残ってたりしないよな。無限書庫に行ったり、夕食の買出しをしたり、帰ってからもやる事はあるから大丈夫だと思うけど、なによりあの子には課題を取り組んでいて欲しい

 

また夕食に間に合わないなんてことになったら大変だからな。少し不安になりながら近づいていくと動物の鳴き声が聞こえてきた

 

 

「にゃん、にゃあん」

 

 

猫?

 

 

「・・・なんで学校に猫が」

 

 

いきなり入って逃げられたら追いかけるのが大変なので、なるべく気付かれないように忍び足で中の様子を伺う

 

 

「にゃあん」

 

「くすぐったいです、ティオ」

 

「にゃん、にゃん」

 

 

アインハルトちゃんが猫と戯れていた

 

・・・珍しい光景だな

 

 

「アインハルトちゃん。下校時刻はとっくに過ぎてるよ」

 

「ッ! う、雨水先生! どうして」

 

「見回り当番だからね」

 

 

猫は人に慣れているのか。俺が近づいてもアインハルトちゃんの膝の上から逃げないでいる

 

 

「ん? 本物の猫じゃないのか。ゴーレム?」

 

「あ、これは、今朝ヴィヴィオさんに頂いたデバイスです」

 

「へぇヴィヴィオやイクスと同じタイプにしたんだ」

 

 

コアの状態ならウルの開発室で見た事あったけど、フレームは初めてだったから気付かなかった

 

シュトゥラの雪原豹をモデルした豹型デバイス、アスティオンと言うらしい

 

愛称はティオ、ヴィヴィオのクリスやイクスのノノと違って泣き声もインプットされているおかげで、感情表現が豊かに表現されている

 

 

「はい、ヴィヴィオさん達と同じで支援系デバイスです」

 

「で? どうしてこんな時間まで」

 

「それが」

 

 

話を聞くと、朝一番にヴィヴィオにデバイスを貰って、さっそく嬉しさ余って認証まで済ませてしまったのところまでは良かったらしい。しかし、授業中にティオは何故か落ち着きを見せず、アインハルトの周囲で遊びまわっていたせいで授業の妨げになってしまい已む無く先生から没収されたそうだ

 

で、返してもらう際に注意を受けていたら、こんな時間になってしまったらしい

 

 

「いまは比較的落ち着いているのですが」

 

 

不思議そうに首を傾げるアインハルトちゃんに俺は思い当たる答えを言ってみる

 

 

「マスターの周囲環境の登録でもしてたんだじゃないか?」

 

「周囲環境、ですか?」

 

「そう。一応ヴィヴィオが学院だったり、ランニングコースや帰宅路、それに皆が使ってるジムなんかは登録してくれてるとは思うけど、ティオ自身は始めてだからね。持ってる情報と照らし合わせながら再確認してたんじゃないかな」

 

「なるほど」

 

 

もしくは、ようやく会えたマスターに遊んで欲しかっただけの可能性もある

 

 

「少なくとも数日はやんちゃすると思っていた方が良いよ」

 

「・・・そうなんですか」

 

 

アインハルトちゃんは視線を下に落として膝の上のティオを見詰める。ティオはアインハルトちゃんの視線を物ともせず楽しげに膝の上でごろごろと器用に遊んでいた

 

 

「にゃん」

 

「楽しそうだな」

 

 

ですね。と呟きそっとティオを抱えて席を立つ

 

 

「そろそろ帰ります」

 

「ああ、気をつけて帰れよ」

 

「はい」

 

 

ティオを片手で抱えて鞄を持つとアインハルトちゃんは教室から出て行こうとする。しかし扉の前で止まるとくるっとこちらを向いた

 

 

「そう言えば」

 

「ん?」

 

「ティオを受け取った後にヴィヴィオさんから妙な質問を受けました」

 

「妙?」

 

「はい」

 

 

あきパパに双子の兄弟がいるって聞いた事あります?

 

 

「冗談の類では無い。とヴィヴィオさんの瞳から察した私は、思ったとおりの答え。雨水先生の家族構成に関して小耳に挟んだ事は無く、ヴィヴィオさん達以上に知っている事など有り得ない、と言いました」

 

「・・・。」

 

「それだけです」

 

 

では、御機嫌よう。そう言って小さく頭を下げてアインハルトちゃんは俺に背を向け教室から完全に出て行った


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