帰宅されたルシエさんに衣服の注意をされた私とお父様は、恐らく適切だと思われる正装に整えた後に来客を迎える事にしました
近頃は千客万来です
「イクスちゃ~ん、久しぶり! 元気だった?」
リビングに入るなり妙なテンションの高町なのはが私を迎え入れました
「・・・。」
寄ってくる高町なのはを無言で避けてヴィヴィオの近くに座っていた男性に話し掛ける
無限書庫の司書長
「久しぶりです、いつもヴィヴィオがお世話になっています。姉として心より礼を尽くしたいと思います」
私が話し掛けると司書長は少しだけ驚いた顔をしました。変ですね、書庫に出向いた際は最低限の会話をしていたと思うのですが
「うん、久しぶり、最近はあまり来ないから元気かなぁって心配だったよ・・・え、えと、なのはにも、もうちょっと親しく接してくれると嬉しいかな」
「なのは? 誰ですか? そんないい年してにゃーにゃー言ってる頭の緩そうな名前の人物は私は知りません」
「私そんな風に思われてたの?!」
「・・・。」
なぜか困ったように笑う司書長。ヴィヴィオがお世話になっていますからね、このくらいの挨拶はしておかないと、お父様の娘としても姉としても恥になり兼ねません
「お姉ちゃんの見たくないモノを見ない癖って自覚あるのかなぁ」
ヴィヴィオが何か考えるように唸っていますが、気にせず隣の席に着きます
「今日は無限書庫に行っていたみたいですね」
「うん、ちょっと調べたいことがあったから」
「見付かりましたか?」
「・・・ちょっと」
ちょっと。ヴィヴィオが調べた結果としては不十分な成果ですね
「まだ掛かりそうなのですか? もう大会も近いのですから、無理をするのは得策ではありませんよ」
「んーそうなんだけどねぇ」
大会などヴィヴィオにとっては遊戯なのでしょうが、万が一がありますからね。不調で自滅などされたらお父様に余計な気を使わせてしまう事になります
ヴィヴィオと他愛も無い話をしていると、ルシエさんが次々と美味しそうな料理を運んでくる。今日は来客が大勢いるので料理が豪勢ですね
「急いで作りましたからあれですけど、味は保障しますので先に食べておいて下さい」
そう言い残して再びキッチンに戻っていく、そして入れ替わりで夜天の主が出てくる
「いやぁ流石主婦、キャロには追い越された気分やわぁ」
「八神二佐も手伝ってたんですか。すみません、お客さんなのに」
「あはは、こんくらいで気にせんといてぇ。愛情たっぷりやから、よお味わって食べてね」
「了解です」
お父様と夜天の主を目で追っていると、這いよる様に良くない気持ちが湧き出てくる。仲は良くなかったはずなのに・・・アギト関係で交流を深めたのでしょうか
「お姉ちゃん、目が据わってるって」
「だから何ですか」
「・・・もぉ」
お父様の合図で皆が夕食を食べ始め、暫らくするとルシエさんのお母様がこの場に居る全員に聞こえるように話し出した
「えぇと、レヴィの件。キャロがもうちょっと掛かるみたいだから、キャロが聞いたところまでは話しておこうと思います」
「ん? 僕の話?」
「そうだよ。私やキャロに話してくれた事をもう一度お願いできる?」
「おっけい!」
口に詰め込んでいた物を飲み込むと立ち上がって話し出す。こうやって並ばれると違いを見つけるのが難しいですね
「あ、その前に、あっきーはこれを読んでて」
「ん?」
何の変哲も無い一通の手紙。無造作に渡されたソレをお父様は開き、中から二枚の便箋を取り出して目を通し始める。それを確認したレヴィさんは再び私達を見渡す
「経緯とか入れると長くなっちゃうから、省いてまずは皆が聞きたい事から言うね。えぇと、僕って単に事故で此処に来ちゃったみたいなんだよ」
それだけ言われても。私を含めて殆どの方はピンと来なかったのか、不思議そうに次の言葉を待つだけに見えました
お父様とヴィヴィオだけは違った反応でしたが
皆一様に複雑な理由を勝手に想像してしまっていたのでしょう
「あきパパの手紙には何が書いてあるの?」
そんな中、ヴィヴィオが最初に口を開いた
「ん? レヴィがいま言ったのと同じ内容だよ。事故だから気にするなってね」
「そうなんだ」
それからレヴィさんから、遺跡探索の最中に見つけたオーバーテクノロジーや誤作動が起きた原因らしき行動など聞かされ、最後に明日には帰れる目処が経っているから心配はいらないなど告げられた