前回のあらすじ
帰宅したキャロに服装を注意される→イクスによるコーディネート→なぜかレヴィはイクスの制服を着用していた→リビングへ→レヴィによる事態の説明→俺宛ての手紙を受け取る→ディアーチェからの忠告だった
イクスを送り出して改めて手紙の文面を眺めながら今後について考えてみることにした
ロストロギアの不適合による危険性。恐らく暴走の危険性は無いだろうから、緊急って訳じゃないはず・・・正直実感沸かないな
「実際スキルも観察眼ぐらいしか使ってないし」
もしかしたら、観察眼以外の特典スキルには異常をきたしているのかも知れない。まぁ、だからと言って使わないのだから不便は無い
「はぁキャロが知ったら即摘出を勧めるだろうし、早めにウルに相談しておこうかな」
ちょっと納得出来ない方法ではあるが、ウルは違う時間軸で一度これを暴走させること無く安全に摘出した実績がある
その後の取り扱いについては重々言い聞かせないといけないが、話の出来ない相手でも無いし、その辺は問題ないだろう
「問題があるとすれば」
ロストロギアを失ったら何も残らないって事だな
全てのスキルを失う、年齢操作は良いけど、観察眼は惜しい。だいたい仕事がいまみたいに成功してるのは殆ど観察眼のおかげだからな
「はぁ」
正直何か欠陥が見付かったりしないと踏ん切りがつかないなぁ。とそんな結論に達したところで扉を控えめに叩かれる
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのはキャロだった
「キャロ?」
「なんですか? わたしが来るのは予想外って顔ですね」
「予想はしてなかった」
「そうですか・・・ん~随分と悩んでいたって顔ですねぇ。ヴィヴィオも悩み事の真っ最中でしたし、どうしたんですか?」
ゆっくりとした足取りで近づいてきたキャロは俺の目を覗き込むように顔近づける
「近過ぎないか?」
「ドキドキします?」
「・・・それを聞いてどうする」
「ふふっ、内緒です」
昔は会話の主導権は俺にあった気がするんだが、いまはすっかりキャロのペースになってしまってるな
「ったく。ちょっと困った事が起きてね、たぶんヴィヴィオはその断片に気付いて探ろうとしてるんだよ」
「ふぅん。教えてあげないの?」
「なにを?」
「ヴィヴィオの気付いた断片って言うの」
「教えてあげたいんだけどね。ちょっと複雑と言うか言い難い事情があってさ」
「・・・本局に報告もしないで違法所持しているロストロギアが関係してるんですか?」
まぁそれもあるんだけどね
どこからどこまで話して良いかが分からないって言うのが本音なんだろうな
「ん? あれ、知ってたんだ」
「まぁこれだけ一緒にいればですね。他の皆さんには言ってませんが、レヴィってばフェイトさんの口車に乗せられて殆ど喋っちゃいましたよ、ディアーチェって人の忠告の件も」
なんか頭を抱えたくなった
やっぱりレヴィに我慢は難しかったか
「・・・フェイトさん、聞き上手だからなぁ」
あの笑顔で的確な相槌をされたら、大抵の人は快くペラペラと喋ってしまうんだろうな
「それにしても、レヴィさんって本当にフェイトさん達と同年代なんですか? 随分と幼く感じましたけど」
「・・・まぁ間違いなく同年代だよ」
生まれた時はだけどね
「別に話しても良いと思いますけどね。イクスにしてもヴィヴィオにしても、普通の子とは違う訳ですし、理解出来ない訳じゃないでしょう」
「そうなんだけどねぇ・・・あ、ちなみに違法所持じゃないんだよね。これ」
「え? 本局のデータベースにはありませんでしたよ?」
「そりゃデータベースには乗せてないから無いよ。ヒューズと数名のお偉いさんしか知らないからね・・・だから、所持自体は認められてるはずなんだよ」
「ヒューズさんが・・・あの人、秘匿しないといけない情報はデータ化するのを嫌ってましたね」
ヒューズの奴はいま何してたんだっけ・・・前にエリシアちゃんに聞いた時は、夫婦水入らずで旅行に行ってます。とか言ってたな
「キャロはさ。召喚魔法が家族にとって危険な魔法だって言われたら、いままで頼ってきた力を捨てなくちゃならなくなったら、どうする?」
「何の話ですか?」
「例え話だよ」
「わたしの召喚魔法は元々危険です。それで生まれた場所から追放された訳ですし、しかし秋春やイクス、ヴィヴィオや、それにアギトやシロ達。皆が危険に晒されるくらいなら、わたしは捨てます・・・愛する人達を傷つけてまで持っていたモノでもないです」
「そっか。やっぱりそうなんだよな」
「・・・ホントに何の話ですか?」
「今度話すよ」
困惑しながらも了承してくれたキャロに感謝しながら、ヴィヴィオの様子を確認する為に端末を手にとってクリスに連絡を入れた