よく分からない液体の中でふわふわと浮かぶ
昔の夢でも見ているんだろうな
旦那に助けてもらう前、研究所でよく分からないけど痛くて苦しかった実験の日々が続いていた時の事
あの時から考えたら、旦那に救われて、アキハルの融合騎になれた今の生活が嘘みたいだ
「おい、夢かと思っちまったぞ」
「ん?」
アキハルの監視の為に病院にやってきて数日目。今日も目覚めるとウルの検査を受けていた
・・・びっくりするから、いきなりは止めろって言ってんのに
「やぁ、意外と起きるのが遅いんだね」
「まぁ休みだし。ってそうじゃねぇだろ! 毎度毎度何してやがんだ!」
「ん? 昨日告げておいたはずだけど」
困惑した表情で首を傾げる
アタシが物申してるのは、言っていたからって普通は起こすだろって話なんだが。なんで熟睡してる奴を液体にぶち込む発想に至るんだよ
「検査薬か何か知らねぇけど」
「まぁまぁ、これも必要な検査なのだから、キミもご主人様を想うなら多少は目を瞑って欲しいところだよ」
「・・・我侭を言っているみたいな対応が癪なんだが」
本当に何が問題が分かっていないのか、いつものへらへらした表情でモニターを弄くっている
「今日もご主人様は可愛い子供達に囲まれているみたいだよ」
「あ?」
「うんうん、別に羨ましくは無いが、ぜひ友好の築き方を指南してもらうのは有りかも知れない」
周囲を見る。すると手元にあるモニターとは別のモニターにアキハルの病室が映っており、そこにはウルの言う通り複数の少女に囲まれるアキハルの姿がバッチリ映っていた
ったく色んな奴から愛され過ぎだっつうの
「前にさ」
「ん?」
「アタシが似たような事を聞いた時に、アキハルは自分の友好関係は殆どレアスキルのおかげなんだって言ってたんだけど、そのレアスキルもロストロギアからの恩恵なのか?」
あん時は否定したけど、やっぱり事実として、そう言うレアスキルがある訳だし、まったく関係ないとは言えないんだろうな
「まぁレアスキルに関してはそうなるね」
「なんか含みのある言い方だな」
「キミが言うところの確定印象と言うレアスキル。まぁ分類は魅了系のレアスキルなんだけど、漏れ出している魔力量から推測される効能は微々たるモノだよ。恐らく魔力を持たない且つ知性が無い動物に好かれる、と言う程度で、ミッド育ちなら子供にさえ抵抗される威力さ。同じ系統のレアスキルの中では底辺と言っても良い」
「は? そうなのか?」
その話が本当だとしたら、アキハルもアタシも、それにきっと色んな奴が今まで要らない苦労をした様な気がする
「知らないかも知れないけど。正直言って、あの程度の能力はレアスキルには値しない。よって、ご主人様の友好関係はともかくレアスキルに関しては、と言った含みのある言い回しになってしまう・・・これでいいかい?」
「ちょ、待ッ! それ! アキハルには教えてるのか?!」
「ん? 何故? そんな意味のない問答をするくらいなら、もっと実のある問答をしたいね。例えば観察眼と言うレアスキル。あれは実に興味深いね、最初はご主人様が持つ記憶から素早くデータを持ってきているのだと思っていたけど・・・」
なるほどな、ウルはきっとアキハルは自分のレアスキルについて十全に知っていると思っていたんだな
「とは言っても、覚えている記憶が全てでは無いからね。無い袖は触れない。必ず欠片くらいの情報を持っているはずなんだ。ご主人様は度々無限書庫に潜っていたと言う記録も残っているし、まぁその辺が鍵になるのかな」
今度一回ヴィヴィオを読んでウルの研究を全て見てもらった方が良さそう。どうせコイツの事だろうから、公開のタイミングを計って秘匿にしている情報とかもありそうだし
「しかし、それだけでは説明できない部分も多少残っているのが気掛かりではあるんだけどね」
「済んだか?」
「ん? まだ途中だけど・・・おや? 確かに時間も頃合だね。明日も検査はある事だし、これ以上の拘束は酷か。うん、あとはボクだけで問題ないからキミはキミの役目に戻るといい」
「そうさせてもらう」
ようやく変な液体から開放されたアタシは、フルサイズに戻りながら今日の検査結果を受け取る
「またよろしく」
「おう」
モニター向かって手を動かすウルに手を振って、検査室を後にした・・・が、監視役する為に病室に戻ってみるとそこにアキハルの姿は無く、代わりにちょっと外の空気を吸ってくる。などと書かれた紙切れのみが残されていた