お父様の退院許可が下り、ヴィヴィオの出場している魔法戦競技会を見に行く事になったのですが・・・非常に残念な事に、私達が観戦席に着いた頃にはヴィヴィオ達の出番は既に終えているみたいでした
ちなみに試合の結果ですが、余裕を持って勝ち抜いたみたいです。先ほど、アナウンサーがごちゃごちゃとそんな事を興奮気味に喋っていたのですぐに分かりました
「どうしましょうか、お父様」
「せっかく来たのにすぐ帰るのもなぁ」
「とりあえずヴィヴィオ達と合流しますか?」
「それが良いか。フェイトさん達も近い場所に居るはずだから、まずはそっちと合流しよう」
「はい」
さっそく次の行動を決めた私とお父様は人を掻き分けてフェイトさんのところへ向かう。それにしても、本当に人が多いですね・・・参加選手の保護者や友人だけでここまでの人数になるとは思えないので、大半が赤他人の試合を見ている事になるんでしょうか
終盤にならなければ殆ど素人と区別のつかない子ばかりでしょうに、そんな者同士の試合の何処が面白いのでしょう
「あ、雨水さ~ん! イクスちゃ~ん! こっちこっち!」
暫らく移動していると、大の大人が見っとも無く子供みたいに燥ぎ手を振っていた
高町なのはです
会場に来る前もお父様に言われて考えはしましたが、やはり彼女を好意的に見るのは難しいと思っています
「急に立ち止まってどうかしたか?」
「ぃぇ」
「ん?」
別に高町なのは個人が嫌いな訳じゃない
人として彼女を見れば、容姿も能力も優れていて欠点など見当たらない様な人物です。お父様に圧倒的な才能の持ち主と言わせるくらいですから
大抵の困難は愚作であろうと結果をみれば大団円で乗り越えられるでしょう。だからでしょうか?
きっと、努力をすれば乗り越えられない壁など無い。などと言った夢物語を本気で信じてそうです
そして・・・お父様の抱える悩みさえも・・・そんな薄く軽い言葉で解決するのでしょう・・・とても、不愉快です
「昨日ぶりだね、イクスちゃん」
「昨日? 何処かで会いましたっけ」
「にゃっ、会ったよ! って言うか、一緒に夕ご飯食べたよね?!」
そんな記憶はありません
「なのは、落ち着いて。他の人に迷惑だから」
「あ、わっ、わっ、そうだよね。フェイトちゃん」
「久しぶり、雨水さん、イクスちゃん」
「久しぶりです」
「お久しぶりです、フェイトさん。あの、ヴィヴィオの試合について聞いても良いでしょうか?」
結果は知っていますが、試合内容は見ていないので知りませんからね
真面目にしていれば良いのですが
「ん? 本人から聞いた方が良いんじゃないかな?」
「第三者から見た印象も重要ですので・・・あの子は、真面目にしていました?」
「真面目? うん、私が見る限りだと真面目だったよ。ただちょっと手加減してる感じだったけど」
「そうですか」
手加減ですか。やはりヴィヴィオと対等に渡り合う選手はそうそう居ませんか・・・まだ始まったばかりですし、いま色々考えるのは早計かも知れませんが
「雨水さんとイクスちゃん、時間は大丈夫ですよね。いまヴィヴィオ達から連絡入って、選手用ゲートで待ってるみたいだから、一緒に迎えに行きませんか?」
「喜んで」
あ、お父様の意見も聞かないとです
そう思い振り返って視線で問います。お父様は直ぐに視線に気付き、返事の代わりに私の頭を優しく撫でてくれました
「あ、私も」
「は? 冗談は止めてもらえますか?」
「うっ」
何故か手を伸ばす高町なのは
まったく、理由も無く人の頭に触れようなどと信じられない行動ですね
「えぇと、それじゃ行こうか・・・大丈夫だよ、なのは。チャンスはまだあるって」
「そうだよね、うん、頑張るね。フェイトちゃん」
聞こえていますよ
高町なのはが何故私にそれ程までの執着を抱いているのかは、謎と言えば謎ですが、どうせヴィヴィオのオプション程度にしか思っていないのだろうと結論を付けてお父様の背中を追いかけた