前回のあらすじ
検査がようやく終わり退院する→ヴィヴィオ達が参加しているDSAAの会場にイクスと向かう→思いのほか道が混んでいた為、ヴィヴィオの出番までに間に合わずに結局殆ど試合の終わった頃合に着いてしまった
まぁ仕方が無いので、とりあえず試合を見に来ていた高町一尉達と合流し、試合の話を聞きながら一緒にヴィヴィオ達を迎えに行く事になった
「微妙な距離感ですね」
「なのはも押しが弱いところあるからね」
ヴィヴィオ達が待つ選手ゲートまでの間、俺とフェイトさんは示し合わせた訳では無いが、何と無くイクスと高町一尉が並んで歩ける様に手を回していた。いまのところ、高町一尉の一方的な喋りで終わってしまっている
「イクスも高町一尉のことは嫌いじゃないんですよ? 完全に無視をしていないみたいですし、少なくとも話は聞いているみたいですから」
以前も好きになれない。と変わった言い回しをしていたからな
「分かってる。イクスちゃん、優しいもんね。何か、なのはを好きになれない理由でもあるのかな」
「高町一尉は人としてかなり出来た人ですから、あるとすればイクスの方ですかね」
「難しい年頃だもんね」
「ええ」
「そう言えば・・・」
急に黙ってしまったフェイトさんを不思議に思い、視線を向けてみるとキョトンとした表情で首を傾げていた
「どうしました?」
「あ、ごめんね。えぇと、ふと思ったんだけど、何で雨水さんってなのはの事を高町一尉って呼んでるのかなぁって思って」
「え、一等空尉でしたよね・・・もしかして、階級上がってました?」
「ううん、なのはは出世とか興味無いから一等空尉のままだよ。でもそうじゃなくて、何でいつも他人行儀に呼んでるのかなって・・・ほら、私のことはフェイトって呼んでくれてるよね」
「呼び捨てにした覚えは無いですよ」
別に他人行儀していたつもりは無いんだけど。だけど、まぁ親しいかと聞かれればヴィヴィオ関係以外では全く関わらない人だからな
「私は、雨水さんになら何て呼ばれても構いませんよ?」
「俺が構います」
「気にしなくてもいいのに」
少しだけ拗ねた様な表情をしていたが、すぐに切り替えて話を戻した
「一回なのはの事を高町一尉じゃなくて、なのはって呼んでみたら? イクスちゃんも雨水さんと親しいんだって分かれば、一歩を踏み出せるかもですよ」
「・・・その作戦は高町一尉に許可を得ないといけないでしょ」
「いいの。なのはの代わりに私が許可します。それに、なのはも雨水さんなら気にしないと思う。たぶん」
たぶんなんですか
当たり前か。俺自身、高町一尉の中で俺がそこまで親しい人のカテゴリーに入ってるとは思えない
「方法としては一理あると思いますけど」
「なら実践あるのみです!」
まぁ親友のフェイトさんが言っているのだから、きっと大丈夫だろうとは思うけど、どうしても気負いするモノはある
「・・・はぁ」
「挑戦しないんですか?」
「フェイトさんは余程俺と高町一尉が仲良くなって欲しいみたいですね」
「当たり前だよ。二人とも私の大切な友人だからね、どうせなら二人も大切な友人同士になって欲しい」
「はぁ」
この人の笑顔は何かズルいなぁ
流石にここまで言われて実行しない訳にもいかないので、何かテキトウに話題を考えながら先頭を歩く二人に近づいた
「な、なのはさん。少し良いですか?」
「にゃっ・・・にゃはは、もう、突然後ろから話し掛けないで下さいよ~。びっくりしちゃいました」
名前で呼んだことには触れられなかった
「すみません、イクスとの話に夢中だったみたいですから」
隣のイクスに至っては・・・あまり興味の無さそうな顔をして前だけ向いて歩いている。ちょっと不満そうだけど、イクスは俺が家族以外と話している時は大抵良い表情はしてないからこんなもんかなって感じだな
「雨水さん?」
「あ、すみません。いえ、改めて俺が入院している間に子供達がお世話になった事のお礼を言わないとなって思いまして」
「気にしないで下さい。私はヴィヴィオのお母さんですし、イクスちゃんも大好きですから」
「それでも、イクスは丁度難しい年頃ですから、なのはさんには当たりが強い事も言ったんじゃないでしょうか」
「にゃ、にゃはは」
言葉にはせずに苦笑いで返すだけだったけど、察するにはそれだけで十分だった
正直な人だなぁ
それでも、高町一尉じゃなかったらイクスの他人嫌いには根を上げてるところだろう。それを考えれば、何でこの人イクスにそこまで執着を見せているのか。正直分からない
「これからも二人と仲良くしてあげて下さい」
「うん! もちろんなの!」
もうすぐヴィヴィオの待つ選手用ゲートに着くので今日はこれくらいで良いだろう。これがイクスにとって良い一歩になれば嬉しいんだけど・・・とりあえず今は見守るだけだな