前回のあらすじ
試合を終えたヴィヴィオ達を迎えに行く→道中イクスと高町一尉の関係についてフェイトさんと話し事になる→フェイトさん曰く俺が高町一尉と親しくなれば変わるかもと→実際に挑戦してみるが、俺から見てイクスに目立った変化は無かった
選手用ゲートに着いてまず俺達を出迎えたのは、妙に機嫌が良くニマニマと笑顔が絶えないヴィヴィオであった
「おっそーい! もう、なのはママもあきパパも寄り道してたんじゃないの?」
「ごめんごめん、雨水さんと話し込んじゃって」
口調で怒っているが、誰の目から見ても上機嫌なヴィヴィオ。今日の試合はそんなにヴィヴィオが楽しめたって感じの事は聞かなかったんだけど
不思議に思っている事が顔に出ていたのか、ヴィヴィオが高町一尉と話している間にリオちゃんとコロナちゃんがヴィヴィオが機嫌が良い理由を教えに来てくれる
「どうも三回戦の相手がアインハルトさんだから嬉しいみたいです」
「ああ、なるほど・・・っと、二人ともお疲れさま」
「はい!」
「雨水先生も退院おめでとうございます!」
「ありがとう」
なるほどね。そもそもヴィヴィオが出場した理由の大部分はアインハルトちゃんとの再戦だから、予定が早まって嬉しいのか
「チームザンクトヒルデ的にはガッカリです。あたしも三回戦は前回の上位選手になると思いますし」
「前回のか。確かにちょっと辛いかもな」
アインハルトちゃんは・・・既に帰ったのか? アインハルトちゃんはヴィヴィオとの再戦をどう思っているんだろうな。あの子は嬉しいとかそう言う気持ちにはなれなさそうだから、ただただ勝つ事しか頭にないかも知れない
「お父様」
「イクス先輩! お願いがあります!」
「・・・っ」
リオちゃんとの間に入り込む様にして話しかけてきたイクスに、リオちゃんは前触れも無く手を掴んで頭を下げた
イクスはリオちゃんの予想もしていなかった行動に少しだけ身を引いている
「たしか・・・コロ」
「リオです!」
「・・・リオですね」
「はい!」
「・・・放してもらえますか」
「放しません!」
珍しく無碍には扱わず、俺に視線で助けを求めるだけに留めている
コロナちゃんと一緒に見守るか
「コロナちゃんの三回戦の相手は決まってる?」
「ミウラさんです」
「ああ、八神道場の子」
「リオってば、イクス先輩に稽古を頼み込んでるみたいですね」
「リオちゃんはやけにイクスを気に入ってるよな。仲良くしてくれて嬉しいんだけどさ」
「憧れ。てるからだと思いますよ」
いまでこそ、説得。つまりは会話が成立しているらしいけど、最初は完全無視で話しかけても素通りされることも多かったらしい
「それは・・・ごめんね」
「あ、いえ、そう言うことじゃないんです。いまはわたしもリオも優しい先輩なんだってきちんと分かってますから! 前に怖い人に絡まれた時だって・・・あっ」
冷たいところだけじゃなくて、優しいところもあると説明したかったんだろうけど、普通に聞き逃せない話が出てきた
「いつの話かな?」
「な、なんのことでしょう」
「イクスが口止めした? それともヴィヴィオが口止めしたのかな」
ピクピクと小さく身を震わせたコロナちゃんは肩を竦めて視線を泳がせる。分かり易く反応してくれたので、どっちが口止めしたのかは分かったけどね
「やったー!」
コロナちゃんから正解を聞く前に、満面の笑みを浮かべたリオちゃんがちょっと疲れた表情を浮かべるイクスを連れてきた
「その様子だとイクスを抱きこめたみたいだね」
「はい! 一日限定ですけど!」
「たとえ一日でも凄いよ。場所は決まってる? 訓練場なら手配できるけど?」
「だいじょーぶです! あたしの家でしますから!」
イクスを横目で見ると、視線が合った瞬間に全力で首を横に振って否定の意思を示した。どうやら、それは聞いていないらしい
まぁイクスも一度特訓に付き合うと約束した以上はもう断らないと思うけどね
「それじゃあ、明日はたっぷりイクスに教えてもらうと良いよ。実践的だけど、無駄にはならないから」
「はい!」
しかし。積極的で押しに強い子には弱い傾向のあるイクスだけど、なんで同じような高町一尉とは険悪なんだろうな