召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百六十八話~side ヴィヴィオ~

装飾の施された、煌びやかでありながらも暖かみの無い部屋。その部屋に存在する一つの椅子にわたしは座っていた

 

体は動かない

 

感覚が麻痺しているのか、お腹の底に響く様な深い音だけが聞こえる

 

顔を上げると、モニターが展開されていて、モニターには碧銀の髪に青と紺のオッドアイが印象的な青年が、その瞳に決意を宿し睨むように空を見上げている姿が映し出されていた

 

自然と体は力の限りでモニターに向かって手を伸ばそうとするけれども、見えない力で押さえ付けられ、触れることすら叶わない

 

もうあの頃には戻れない

 

モニターに移る頑固な青年や物知りな放浪者、それに森に住む悪戯っ子な魔女。いつまでも続くと疑いもしなかった楽しい日々にはもう戻れない

 

終わりの見えない争いを終わらせる為・・・

 

圧倒的な力による過ちを忘れないように、閉じたくなる気持ちを抑えて前を見据えた

 

 

「な、なに?」

 

 

突如艦内に鳴り響いた警報に久しく忘れていた感情が露になる

 

 

「きゃっ」

 

 

そして本来なら有り得ない現象。何ものにも劣らない硬度のゆりかごが、何かに負け大きくその船体を揺らされている

 

 

「堕ちる? まさか、ゆりかごが? そんなはず・・・」

 

 

抑止力が消えれば終わりが本当に見えなくなる。全てが台無しになりそうなのに、不謹慎にも頬が緩んだ気がした

 

そして二回目の衝撃と共に目の前が暗転する

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「・・・ゆめ?」

 

 

えぇと、ん~と

 

状況確認。確か昨日はなのはママと一緒にフェイトさんの家を訪ねた後、イクスお姉ちゃんがお泊りだって思い出して急いで団長さんに家まで送ってもらって・・・

 

寝てるパパの腕を枕に寝たんだった。かな?

 

 

「妙にリアルな夢だったなぁ、でもオリヴィエの記憶とちょっと違ったし・・・んぅ、あっ、あきパパが腕を動かしたから起きれた、のかな?」

 

 

あんまり良い夢じゃなかったから結末まで見なくて良かった、よね。でも起きるには早い・・・そうと決まれば二度寝なの

 

あきパパに抱き付くと自然に眠気がやってくる

 

分かんないけど安心する匂いだよぉ~

 

 

「いまごろお姉ちゃんはリオと特訓中かなぁ」

 

 

二人の性格を考えれば絶対早朝訓練とかしてる

 

 

「予想できるなー」

 

 

ま、リオの真っ直ぐなところはお姉ちゃんも気に入りそうだし、たぶん真面目に特訓を付けてくれると思うんだよね

 

ただ、加減とかちゃんとしてるのかな?

 

 

「してればいいんだけどねぇー」

 

 

む、考えごとしてるせいで眠気が覚めてきちゃった

 

でもやっぱり、起きるには早いし。朝食の準備をしても良いけど、キャロがいるからわたしがするのも微妙・・・あきぱぱは平気で、キャロのがよかった。とか言いかねないからねっ!

 

 

「・・・うん、あきパパを起こそう」

 

 

ぐぅすか寝てる方が悪いんだもん

 

あきパパはパパなんだから、ヴィヴィオの面倒を見る義務があると思うのです

 

超完璧理論武装

 

 

「はむ」

 

 

だから、これはしょうがないの

 

少しずつ力を強めていく、あきパパの二の腕にわたしの歯が沈んでいった

 

 

「ッ・・・ヴィヴィオ」

 

「ほはよう」

 

「・・・起こし方が乱暴すぎないか? あと、そろそろ二の腕に歯型が付きそうだから放せ」

 

「うん」

 

 

痛みなら絶対起きるだろうなって思って噛み付いたら見事起きました。そして時計を見て不思議そうにしているあきパパに何で起こしたかを説明する

 

 

「これ絶対跡残るだろ」

 

「にゃはは、回復魔法使うから平気だよぉ」

 

 

そうだ、せっかくだからちょっと悪戯を仕込んでおこうっと

 

 

「・・・だいたい、高町一尉のところに泊まるんじゃなかったのか?」

 

「なのはママはいつでもママだけど、あきパパはお姉ちゃんとヴィヴィオのパパだからね。一人占めできるって聞いていてもたってもいられなかったのです」

 

「あっそ」

 

 

かわいいむすめに対する反応としては淡白すぎるとおもうの

 

 

「ってなわけであきパパぁ、ひまなの」

 

「課題は?」

 

「おわった」

 

「大会に向けての特訓とかは?」

 

「いらない。強いて言えば、いまあきパパとひまつぶしするのは大会に向けての行動だよ?」

 

「んな訳あるか」

 

「あたッ」

 

 

きちんと答えたのにデコピンされたぁ

 

 

「あきパパがイクスお姉ちゃんばっかりかわいがるからわるいのに」

 

「ヴィヴィオもきちんと可愛がってるだろ」

 

「たりないもん」

 

「もんって。今日は随分と退行してるが、大丈夫か?」

 

 

ちょっと子供らしく甘えたら、この言われよう。確かに、わたしは他の子より早熟ですれてるところがあるって自覚はあるけど

 

だけど、いまのはそこまで言われる事じゃないって声を大にして言えるの

 

 

「むぅ」

 

「演技じゃないみたいだな。最近はアインハルトちゃんとの接触が多かったから、隠し抑圧された部分が出たか?」

 

 

む、あきパパの目に魔力光が・・・これは、チョキでえいってやっても怒られないよね?

 

 

「なに、冷静に分析してるのかな? ヴィヴィオはひじょーに怒ってるんですけど」

 

「ごめんごめん、言い過ぎた」

 

「ゆるしません」

 

 

お姉ちゃんが羨ましがるくらい構ってくれないと絶対許さない

 

 

「そこをなんとか・・・そうだな、寝汗が気になるし、久しぶりに一緒にお風呂に入るか」

 

「うん! ヴィヴィオがパパの背中流すね!」

 

「お願いする」

 

 

お風呂の後、さっぱりしてリビングに向かうと朝食を作ってるキャロが居て、あきパパはそろそろわたしやお姉ちゃんと一緒にお風呂に入るのは如何なのかと軽く注意されていた

 

・・・キャロも、一緒に入りたかったのかな?


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