召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百七十話~side イクス~

上段から繰り出される真っ直ぐな一太刀

 

速度はともかく、籠められた力は並大抵ではありませんね。薄いバリアジャケットならば、容易く切り崩すでしょう。あくまで、当たればの話ですけど

 

 

「セイやッ!」

 

「太刀筋が素直すぎますよ。せめて、目線でフェイントをかけるくらいをしないと貴方の剣は当たりません」

 

 

余裕を持ってかわした剣は、籠った力を吐き出せずに大きく隙を作ってしまっている。いまは実戦では無いので、そこを突く事はしませんが・・・正直この程度では明日の試合を勝ち抜く事は厳しいと思われます

 

まずはリオの能力の確認から始めたのですが、やはりお父様と違って直ぐには妙案は浮かんできませんね

 

 

「リオ。現状見る限り、剣のみでの才能は決して高いとは思えません。怪力を活かして大剣を振り回した方がまだ勝率は高いですよ」

 

「大剣ですか?」

 

「こんな感じの物です」

 

 

持っていた戦刀を捨て、戦武器の中から比較的大きなサイズの剣を作り出す。騎士団にいるお父様の教え子の騎士剣と同じくらいのサイズでしょう

 

 

「相手を固定し、絶対に逃れられない状況下で当てれば。それだけで十分に大打撃を与える事が出来るでしょう」

 

「お、重そう・・・持ってみても良いですか?」

 

「もちろん。ただし気をつけて下さい、これも質量兵器なので」

 

 

質量兵器と聞いて、リオは剣を掴もうとしていた手を止める

 

 

「え、と。危なくないですか?」

 

「もちろん危険物です。上手に扱っても、下手に扱っても、この剣は対象を容易く切り倒しますよ」

 

「触るのはまた今度で・・・」

 

「良いから持ちなさい」

 

「ひゃっ!」

 

 

無理やり握らせると、剣の重みで前に踏鞴を踏む。しかし、直ぐに自分の持っている物を思い出して踏ん張り真っ直ぐ地面に突き刺した

 

 

「おもい、です」

 

「少々厚めに構成していますからね。右腕武装、さぁ打ち込んでみて下さい」

 

「えぇっ?! 無理無理! 無理ですって!」

 

「ハンマー投げの様に、遠心力を使い、後も先も考えず一撃を放てば良いのです」

 

「・・・。」

 

 

決心を固めようとしているリオを確認して、右手に作り出した大盾に身を隠す。暫らく来るべき衝撃に備えていると、何度かステップを踏む音が聞こえ爆発的に魔力が上がった事を肌で感じた

 

 

「ッ!」

 

 

想像、以上。です

 

備えていたはずなのに、片足が地面から引き剥がされる

 

 

「これは・・・少々侮っていたのかも知れません」

 

 

剣より盾を強固に作っていた為か、剣は砕けてリオは目を回していた。それにしても、作りが粗野とは言え、あのサイズの剣を壊す怪力だったとは・・・身体強化で底上げ出来る範囲を超えてます

 

 

「この子は一点特化のタイプなんでしょう。ヴィヴィオの友人なので万能なタイプかと勝手に思い込んでいましたが」

 

 

軽く怪我が無いかの確認を行う。手首を少し傷めていますが、処置を行えば半日程度で回復できますね。特訓はこれ以上続けられません

 

まぁいまので成果としては十分です

 

 

「やれやれ、ですね」

 

 

軽くバリアジャケットを撫でると、武装が解除されて動き易いシャツとデニムショートパンツの私服に戻る。デバイスが光っていますので、独自の判断で武装解除を行っても安全だと判断したのでしょう

 

 

「貴方のご主人様は面白い才能を持っているみたいですね」

 

 

何度か点滅を繰り返すデバイス。何と無く嬉しげに見えるのは気のせいでは無いかも知れませんね

 

 

「ですが、まだ、未熟で幼いのに変わりはありません。しっかり支え、全力が出せるように貴方自身も向上心を忘れないように・・・さて、起きたら威圧を教えてみますか。あれならば、体に負担はありませんからね」

 

 

機械相手に語っても仕方が無いのかも知れない。ですが、これが少しでも、この真っ直ぐな少女の為になるのなら、それはそれで悪くないと感じずにはいられませんでした


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