召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百七十六話~side なのは~

ヴィヴィオとアインハルトちゃんの試合は開始直後から、レベルの高い技の魅せ合いで多くの人を魅了し、二人の訓練に付き合った事があった、私も目が離せないくらい惹きこまれてしまっていた

 

 

「凄い・・・まるで事前に合わせていたみたいに二人とも綺麗に攻撃したり防いだりしてる」

 

 

いまも、アインハルトちゃんの小さな体を活かした跳躍からの踵落としを、ヴィヴィオが綺麗に聖王の鎧を纏った両腕で、受け止めながら膝を曲げ地面に衝撃を伝導させている

 

 

「事前に。不思議な事を言いますね、高町なのは」

 

「え?」

 

 

ちょ、ちょっと驚いた

 

イクスちゃんから声をかけられただけで動揺してるなんて、これだからイクスちゃんに大人失格とか言われるんだろうなぁ

 

 

「私から話しかけられるのは嫌ですか」

 

「ごめんね! そうじゃない、ちょっと驚いただけ。すっごく嬉しいよ!」

 

「・・・そうですか。私は、貴方に話しかけるのは嫌です」

 

「えっ」

 

 

こ、これはイクスちゃんなりのジョークなのかな?

 

イクスちゃんっていつも淡々と話しているから、よく分からない。ヴィヴィオの前じゃないと、感情もあんまり出してくれないし

 

 

「ともあれ、事前に合わせているのですよ。正確には、ヴィヴィオが合わせ、アインハルト・ストラトスが、合わされている。ですね」

 

 

これはお父様に報告ですね。と舌打ちでもしそうな口調で締め括ると、話しかけても反応してくれなくなった

 

 

「うぅ、今回も一方的に終わったぁ」

 

「ファイト。いつもより、話せてたよ」

 

「そうかな? フェイトちゃん」

 

「うん! だから、諦めずだよ。なのはが諦めなかったら、絶対イクスちゃんは心を開いてくれる!」

 

 

そうだよね

 

まだ、私とイクスちゃんが一緒に過ごした時は短いんだし、いきなり詰め寄ったら誰だってびっくりして警戒しちゃうよね

 

 

「イクスちゃん。私のことも、フェイトちゃんみたいに名前で呼んでくれるかな?」

 

 

私の問いにフェイトちゃんは何故か沈黙する

 

 

「フェイト、ちゃん?」

 

「え? あ、うん! 呼ぶ! 呼ぶ呼ぶ、呼ぶよ! だから頑張って! でも、ほら、いまはヴィヴィオの試合だよ!」

 

「・・・うん」

 

 

試合の方に視線を戻すと、丁度アインハルトちゃんがカートリッジを取り出している所だった

 

 

「カートリッジシステム。本当に実装したんだ」

 

「聞かれた時にもしかしてって思ってたけどね。その様子だと、フェイトちゃんも聞かれた?」

 

「うん、負荷だったり、いま私が使える最大数だったり。結構事細かに聞かれたかな。アインハルトちゃんのカートリッジシステムは、ウルと雨水さんが手掛けたんだよね?」

 

「はやてちゃんも少しだけ手伝ったらしいよ」

 

 

だからなのか、アインハルトちゃんが使っているカートリッジシステムは、現在普及しているカートリッジシステムと細部が割と異なるみたい

 

 

「試合までの日数はそんなに無かったのに、よく実戦段階まで持っていけたよね」

 

「構想事態は前からあったんだって」

 

 

いまは先天的才能が無いと難しいけど、ロストロギアを使わない安全な古代ベルカ秘術の再現。後に必ず必要になるだろうからと、ウルが早い段階から研究はしていたらしい

 

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「やっぱり、まだ才能の壁を壊すのは難しいんだって。将来は、才能のある人間に才能の無い人間が意志の力で勝てる様にしたい。らしい、よ・・・難しい話だったから、ちょっと話半分だけど」

 

「・・・私もウルとじっくり話してみようかな」

 

 

フェイトちゃんは少しだけしんみりした雰囲気で言った。何と無くだけど、いまのフェイトちゃんの気持ちは理解できる気がする

 

私も最初は、努力すれば誰にだって勝てる。そう言っていた、ウルはそれに直接否定の言葉を言った訳じゃなかったけれど、努力できた時点で、その子は何かしらの才能を見出せただけ。とモニターに向かったまま呟いていた

 

 

「ん? あれってフェイトちゃんの魔力光?」

 

「正確には魔力粒子。だけど。うん、そうだよ? たぶんだけど、アインハルトちゃんはヴィヴィオの知り合い全員に魔力装填を頼んだんだと思うよ」

 

 

あれだけ大きな魔力にも翻弄されずに、覇王流を使えている。そんなアインハルトちゃんに関心していると、ヴィヴィオに目に見える程の変化が現れる

 

 

「ヴィヴィオ?」

 

 

苦しそうで泣き出しそうで、とても戦っていられる表情とは思えない

 

隣のフェイトちゃんも私と同じことを思ったみたいで、急激な変化の理由を探している

 

 

「あっ!」

 

 

分からずに、とにかく見逃さないように見詰めていると、ヴィヴィオはとうとう完全に足を止めて棒立ちになってしまった

 

 

「あれじゃあ、試合にならない」

 

「セコンドの人にタオルを投げてもらおうよ!」

 

「落ち着いて、なのは。システムではまた正常だから、たぶんスタッフの人も困ってるんだと思う・・・ほら、ヴィヴィオのセコンドが動きだしてる」

 

 

確かにスタッフの人は他に人を呼んで相談しているように見える

 

それに流石にヴィヴィオの変化におかしいと思った人が増えたのか、会場がざわつき始めた

 

 

「・・・ヴィヴィオ」

 

「理由は分からないけど、これ以上の続行は」

 

 

残念そうにフェイトちゃんは首を振る。遠目からでもヴィヴィオの変化は十分に分かった。私もあの状態のヴィヴィオが試合に復帰できるとは思えない

 

スタッフの人がようやく相談し終えたのか、タオルを持って試合場に近づく

 

 

「・・・。」

 

 

こんな形で終わるなんて

 

これじゃあ、どうしても悔いが残ってしまうよ

 

思わず目を逸らしてしまったところで、フェイトちゃんが何かに気づいたように声を出す

 

 

「あれ! ヴィヴィオが!」

 

「え?」

 

 

試合場のヴィヴィオは打って変わって平然とした表情で、何度か確かめる様に体を動かしてアインハルトちゃんに向かって笑いかける

 

 

「も、戻ってる」

 

「もう、大丈夫なのかな?」

 

 

さっきまでの表情が嘘みたいに楽しそうが笑みを浮かべている。まるで、心の底から試合を楽しんでいるみたいに見える

 

これには、やはりアインハルトちゃんも困惑している

 

 

「分からない」

 

 

しかし、アインハルトちゃんの困惑が消えない内に、ヴィヴィオは魔法を描き、弾幕を張り、地を駆ける。それからは、少し前と変わらない激しい攻防が続いて幾度かの仕切り直しをしながら試合を終えた


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