召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百八十二話~side ファビア~

古い、とても古い記憶

 

その遠い記憶の中は、いつだって笑顔に囲まれていた

 

穏やかで優しい笑顔、頼れる勇ましい笑顔、博識だけど生意気な笑顔。私はその笑顔が大好きで守りたかった。だから、だからこそ、守れなかった自分に、そして一人で行っちゃった覇王を呪った

 

 

「ヴィヴィさまは覚えている」

 

 

インターミドルの予選第三試合目

 

昨日の試合。あれは喧嘩をした時の二人によく似ていた・・・ヴィヴィさまはあそこまで怖い感じはしないけど

 

でも、試合の最中。ヴィヴィさまは私に気づいてくれて覚えている事を教えてくれた

 

嬉しかった。一人じゃないって知って、とっても嬉しかった

 

 

「みんなもごめんね。あと、ちょっとだけお願い、ね?」

 

 

もうちょっと頑張らないと

 

どうすれば良いか分からなかったけど、とりあえずクラウスの末裔には一言ガツンって言わないとクロゼルクも納得しないはず

 

 

「人質、一人で大丈夫かな?」

 

 

本当はヴィヴィさまを連れてくるはずだったけど、あの子から危険って伝わってきてあとは流れで違う人を連れてきてしまった

 

関係者なのは確かだと思うけど

 

・・・あれ、瓶がない

 

 

「どこに」

 

 

みんな、悪戯好きだから下に隠したのかな?

 

そう思って屈んで下を覗いたら、魔力の篭った手に首を掴まれた

 

 

「動かないでね?」

 

「どうやって?」

 

「最初は驚いたけどね。魔法を全く使えないって訳じゃないみたいだったから、そう言う対策はJS事件って言う大きな事件の後で十分に開発されてるんだよ」

 

 

それでも、一人だけだから。普通よりキチンと蓋をして脱出方法を断ってたのに・・・

 

 

「ここは何処?」

 

「ベルカ領のはずれの森」

 

「えっと、旧ベルカ? 教会の保護区画であってる?」

 

「そんなの知らない」

 

 

魔女の結界は容易に人を寄せ付けない。だから、ここが誰かの手に渡ってるとは思えない・・・だってここはクラウスのだから

 

みんなと遊ぶ為の場所だから

 

 

「使い魔達に待機を命じて」

 

「みんな、私は大丈夫」

 

「ありがとう、名前を聞いてもいいかな?」

 

「ファビア・クロゼルグ」

 

「年齢は?」

 

「十三」

 

「あ、じゃあ一つ下だね」

 

 

え?

 

 

「大会出場選手で間違いない?」

 

「そう、あってる」

 

「ヴィヴィオ達を狙う理由は教えてくれる?」

 

「それが彼の王に対する最初の魔女、クロゼルクの呪いだから。私は彼の王を憎むのを止めない。恨むのを止めない。だから、復習を果たす・・・それだけ」

 

「そっか」

 

 

よく分からないけど手の拘束が緩んだ

 

 

「みんなッ!」

 

「だーめ」

 

 

振り向き様に飛ばした箒も、一斉に襲い掛かった小悪魔達も、ピンク色の鎖に搦め捕られていた

 

 

「確かに普通の子よりは凄いけど・・・クロゼルクって魔法使いは戦闘向きじゃなかったんだよね? 違うかな?」

 

「なんで?」

 

「ん? だってファビアちゃんの魔法には、なんて言うか殺意みたいな気迫が足りない」

 

「そんなの」

 

「大事だよ。動物が生まれながら持ってる本能みたいなモノに作用するから、それだけで動きを止めたり思考を鈍らせたりできる」

 

 

クラウスの気合入れみたいなモノ、かな

 

 

「ん? ちょっと動かないでね」

 

「うん」

 

「おでこ触るねー」

 

 

もう逆らわないようにしよう

 

この人なんか怖い

 

 

「微熱だ」

 

「冥王から逃げるのに、無理したから」

 

「あぁ魔力の使いすぎ。フリードの炎を防いでる時も結構消費してたもんね・・・あまり燃費を考えた魔法でも無いみたいだし」

 

 

訂正はしないけど、ちょっとだけ違う。たぶんこの熱はクロゼルクの魔法に私の体がついていけないだけ・・・控えめのを選んだけど冥王陛下を相手にして多くは隠せなかった

 

・・・勝手に人の家を物色してるし

 

怖いから言えないけど、魔女の家は物の配置もおまじないの意味合いがあるから勝手に動かさないで欲しい

 

 

「あ」

 

 

魔力の流れが変わった

 

もう止めて

 

 

「うごかさないで」

 

「あ、うん、ごめんね。えぇと、台所って何処かな?」

 

「あっち、埃いっぱいだけど、たぶん使えるはず」

 

 

ふだん使わないから知らないけど

 

 

「よし、寝ててね。美味しいご飯作ってあげる」

 

「いらない」

 

「寝てて」

 

「・・・はい」

 

 

横になるまで見張られていたから何だかゆっくり出来なかったけど、ただちょっとだけいつもより多くヴィヴィさまの事を思い出せた気がした


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