召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百八十九話~side イクス~

「先輩! イクス先輩!」

 

 

後輩の声が聞こえます

 

泣いているのでしょうか。それは、大変困りました・・・私はこの後輩を妹のように想っているので、できれば普段の明るい笑顔で居て欲しいです

 

 

「まったく」

 

 

肉体損傷は軽微ですか、魔力は戦闘を行わなければ充分な量まで回復していますね

 

 

「先輩!」

 

「イクス先輩?!」

 

「・・・どれくらい経ちましたか?」

 

 

無理やり体を起こすと二人からすぐに支えられる

 

力の加減から言えば、何だか抑え付けられるのと変わらない気もしました

 

 

「分かりません。たぶん、ええとでも、それなりには経ってる感じです」

 

「そうですか。二人とも、立てないので離してください」

 

「あ、はい」

 

「むぅ」

 

 

リオは離しませんでしたが、コロナ・ティミルが離してくれたので肉体強化を使って立ち上がった

 

ふふ、その姿勢ですと放さなければ危ないですよ

 

 

「わっ、わう、わ」

 

 

危険と言う程では無いので、忠告はしませんでしたが中々に可愛いです

 

 

「魔力はどの程度残っていますか?」

 

「へ? す、すみません。放出系ばかりだったので、あたしもコロナも半分も残ってないです」

 

 

半分ですか。余力がありそうならば分けて貰おうかと思っていましたが、止めておいた方が良さそうですね

 

 

「イクス先輩?」

 

「なんですか? ああ、心配そうな顔をしなくても良いです。私は貴方達より年上ですよ? それに素より頑丈です」

 

「でも、イクス先輩が一番前で戦ってて。まだいっぱい傷があるのに」

 

「この程度なら問題はありませんよ」

 

「でも」

 

「・・・これなら問題ありませんね」

 

 

いつまで経っても不安が抜けないようなので、表面の傷だけ治してみせる

 

治癒系は苦手なので、魔力を使いたくは無かったですが・・・まぁこの子達の安心した表情の為と思い我慢しましょう

 

 

「は、はい! よかったぁ~」

 

 

さて、アインハルト・ストラトスが戻ってきていないと言う事は、事件の解決はまだ成されていないと言う事なのでしょう

 

キャロさんを待たせるのは本意では無いのですが

 

この森の中心まで駆け抜けるまで残り魔力で持つでしょうか? 先程の妨害を二人を守りながら抜けるとなると単純な技以外にも魔法は必須かも知れませんし

 

 

「あの、イクス先輩?」

 

「なんですか?」

 

「もし、あたし達が邪魔、とかだったりしたら、置いていっても構いませんよ? ねぇコロナ」

 

「う、うん。ここに居るうちは安全みたいだから、リオと一緒に待ってます」

 

 

ん、むうう

 

魅力的な提案です。一人なら例えどんな妨害工作があろうと、肉体強化と戦技のみで抜けれると思いますので、いまの魔力量でも充分過ぎる

 

しかし、それは姉として・・・いえ、ここで姉である意味は無いのですが、ヴィヴィオの嫉妬抜きで考えれば私は後輩を悪いモノでは無いと思えてきています

 

 

「しか、し・・・あん? これはヴィヴィオの魔力ですね」

 

「え?」

 

「どこですか?」

 

 

悩んでいると、森の奥から虹色の魔力粒子が漂ってきている

 

それなりに距離があるからでしょう。塵程度にしか感じられませんが、カイゼル・ファルベはあの子だけの色ですからね

 

 

「森の奥からですよ、もしかしてお父様も一緒なのでしょうか」

 

 

ヴィヴィオも居て、お父様も一緒なのだとしたら。私が此処で寛いでいるのはいけない事ですね。お父様に悪い子だと思われるのは一番ショックな事ですから

 

目を閉じて己を縛る鎖を捻じ切るイメージを浮かばせる

 

 

「戦刀」

 

「わっ、イクス先輩? まさか、また戦う気ですか!」

 

「戦う? いいえ、その時間さえ惜しいです」

 

 

アインハルト・ストラトス

 

任せると言っておいてなんですが、時間切れです。私はお父様に会う為に全力を尽くそうと思います

 

 

「この程度の魔女。戦乱時代なら、まだ子供の範疇ですよ・・・なので、王道を遮るには少々幼稚です。出直してきなさい!」

 

 

魔法とも呼べない、けれども有りっ丈の魔力を込めた一刀振るった延長線上に道が出来る

 

無論、止める為に小悪魔が群がりましたが即消滅していっています

 

 

「えぇー」

 

「所詮はおまじないレベルですね。ヴィヴィオなら、こんな力業を通す魔法は組みませんよ」

 

 

行きましょう

 

不満だったり、唖然だったり、楽しげな表情をしている二人を引き連れて森の奥へと向かった

 

・・・最初にヴィヴィオと合流してリミッターを戻してもらう事を忘れないようにしないといけませんね

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

森を抜けた先には開けた空間と古いベルカの小屋がぽつりと建っていました

 

戦いは既に終わっているみたいですね

 

 

「魔力の残滓から観て、かなり派手に戦ったようですね」

 

 

小屋に入る前に周囲を観察していると、付いて来ているリオ達も一緒になって見て回る

 

 

「木が根っ子の部分から抜かれてる!」

 

「見てよ、リオ。ぜったい非殺傷設定とかしてないって感じで地面抉ってるよ」

 

「わぁ」

 

 

大体の戦闘は把握できましたが、あの魔女がこのレベルだとは思えませんね。それに何だかヴィヴィオやアインハルト・ストラトスの魔力残滓の方が多い

 

まさかとは思いますが、あの二人で喧嘩をしていたのでしょうか

 

 

「ふむ、ふむ、困りました」

 

 

恐らくお父様は小屋の中に居ます

 

私の直感がそう告げているので間違いありません。が、リミッターを解いてしまった状態で会うのは褒められる行為では無い筈です

 

 

「・・・それでもお父様を避けるなんて私には出来ません」

 

 

覚悟を決めた私は小屋への扉に手をかける

 

しかし、どんな表情で。と、悩んだ一瞬の内にノブが回り小屋の中から扉が開けられた

 

 

「ッ! あ、お姉ちゃん!」

 

「ヴィヴィオ。丁度良かった、あのですね・・・」

 

「ちょうど良いのはヴィヴィオの方なの! 早く来て!」

 

 

妙に焦るヴィヴィオに連れられ小屋の中に入る

 

そこには一つのテーブルを挟み、お父様とルシエさん、そしてフェイトさんが真剣な表情で向き合っていました

 

 

「ん?」

 

「リオ、コロナ。ごめん、二人はあっちの部屋ね」

 

「う、うん」

 

「分かった、あとで詳しく教えてね。ヴィヴィオ」

 

 

よく見ればフェイトさんは落ち込んでいる?

 

いや、嬉しそうにも見えます。色々混ざりすぎていていますが、とりあえず普段は見ない顔ですね

 

 

「あの、お姉ちゃん。落ち着いて聞いてね・・・あ、でも、ん~パパが言うべきかなぁ」

 

「私達もあのテーブルに座るのですね」

 

 

お父様の隣に座ると会話が一度止まり、お父様が笑って撫でる

 

貴方はそっち側ですか、ヴィヴィオ

 

 

「イクス」

 

「はい」

 

「・・・あー、その、だな」

 

「お父様?」

 

 

お父様が珍しく煮え切らない態度です。そんなにも言い難い事なのでしょうか、だとすれば無理に聞きだすのは本意ではありませんね

 

そう伝えましょう

 

 

「キャロがイクスやヴィヴィオの母親になるんだけど、どう思う?」

 

「詳しくお願いします!」

 

 

前言撤回です

 

私の使える全てのスキルを使って話してもらいます!

 

 

「あきパパ~男らしくないよー」

 

「なんか改めて言うと恥ずかしいな」

 

 

お父様が改めて息を吸う

 

この瞬間がいつまでも続けば、どれほど幸せか。次の言葉が良くないモノだと直感が告げるので思わずそんな事を考えてしまう

 

 

「キャロと結婚する!」

 

「それでは分かりません」

 

「お姉ちゃんがあきパパを攻めてるぅ」

 

 

うるさい妹

 

私が居ない間に何だか段階を幾つか飛ばされたみたいです。しかし、お父様はルシエさんとの婚姻に否定的では無かったのでしょうか

 

それはまぁヴィヴィオと相談した際にはルシエさんが現状一番相応しいとは言いましたけど

 

 

「フェイトさん」

 

「はい! にゃにかなッ」

 

「なんでフェイトさんが慌ててるんですか。エリオ君の時にも経験済みですよね・・・それより、秋春が二人に説明する間に私達はあちらで今後の話をしましょ」

 

「うん」

 

 

私達を見守っていたキャロさんは一先ずと言った様子でフェイトさんと席を外す

 

 

「うんうん、それじゃあ、納得のいかないお姉ちゃんの為に説明はヴィヴィオがするの」

 

「貴方、急に冷静ですね」

 

「お姉ちゃんがヴィヴィオの分まで困惑してくれてるみたいだからね」

 

 

お父様が言うには殆ど成り行きらしいですけど。事の始まりは、ヴィヴィオ達が丁度戦闘を始めた辺りからの事らしいです


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