召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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三百九十三話~side イクス~

イクスお姉ちゃん!

 

今日の妹は少しだけ怒ったように頬を膨らませています

 

怒った表情も可愛いですね。しかし、昔の私が見たら驚いてしまいます。これほど捨てたはずのモノを拾いなおしてしまうとは・・・やはり、お父様は至高の存在です

 

お父様の良いところを探すのはとても幸せな気分になれる時間ですが、姉として妹の不満顔についても少しは考えないといけません

 

・・・ま、カルシウム不足でしょう

 

 

「夢ですか」

 

 

不思議な事に十分な睡眠時間であったとは言えないにも関わらず、気だるさ一つ感じる事も無く布団から身を起こす

 

体の調子は良いみたいですが、気分的には余り良くないです。何故この二人が・・・いえ、フェイトさんは良いです。お風呂で髪を洗ってもらいましたし、あまり無碍にするのはお母様にも悪い。それに、この人は、まぁ、好きです、うん

 

 

「えへへ、おばあちゃんだってばぁ」

 

「にゃーにゃー」

 

「いい歳して酷い寝言です」

 

 

問題はコレ

 

ヴィヴィオの物好きさえなければ即座に叩き出すのに

 

いっそ、寝ている所を踏んでみますか

 

 

「音を立てないように」

 

 

思い付きで実行したモノの高町なのはは寝返りをうって私の足をかわした

 

危機察知能力は高いみたいですね

 

単なる偶然なのかも知れませんが、高町なのはの才能は偶然さえも味方に付ける程に強力だとお父様が言っていましたから簡単には捨て置けません

 

 

「今度はいっそ本気で・・・ん?」

 

 

天井のその先、屋根の上に誰か居ます

 

不審者・・・ではありませんね。知った気配に魔力ですし、こんな夜更けに月見でもしているのでしょうか?

 

・・・そう言えば部屋にクロが居ない・・・小さい子が遅くまで起きているとは関心しませんね

 

窓を開けて足を掛ける

 

 

「よい、しょ」

 

「うわっ!」

 

「わん!」

 

「あ、イクス様」

 

 

シロさんとアルフさん

 

予想通りですが、この人達は何をしているのでしょうか。まったく子供を巻き込むのとは関心しません

 

 

「クロ。貴方は寝ていないといけない時間のはずですよ」

 

「月、綺麗だった」

 

「なるほど」

 

 

見上げてみれば確かに綺麗な月です

 

 

「それで? お二方は?」

 

「あん? あー、シロに誘われてだな」

 

「アギトからの定期連絡の時間だから起きてた! で、暇だった!」

 

 

・・・。

 

 

「イクス様、ジト目も格好良い」

 

「珍しい褒め方だな」

 

「あははっ、イクスも飲む?」

 

「未成年に飲酒を勧めないで下さい」

 

 

まったくシロさん相手だと怒る気になれないので不思議です

 

いまシロさんが飲んでいるワインの銘が見えたのですが、あれはお父様がユーノ司書長に頂いたと仰っていたモノでは無いでしょうか

 

 

「あの、シロさん」

 

「ん~」

 

「そのワインですが、お父様のですよね」

 

「そだよ~スゴイね! よく分かった、正解だよ!」

 

「念の為に聞きますが、勝手に持ち出した訳では無いですよね?」

 

「もちろん! 勝手に持ってきた!」

 

 

なにがもちろんなのでしょうか

 

幾ら温厚な私でも、お父様の物を勝手に持ち出されては怒るしか無いのですが

 

 

「あ、ねぇねぇイクス」

 

「なんですか」

 

 

シロさんは楽しそうに私を見ながらクロが居た方に指す

 

 

「イクスさまぁ」

 

 

分かってはいましたが、クロがすぐ傍にまで近寄ってきており、私に寄りかかるようにして瞼を擦っている

 

眠いのですか? 当たり前です。過去の記憶があり成長が早いとは言え、と言うか貴方の場合、昔も十分に幼かったそうじゃないですか・・・寂しいのなら私が膝くらいなら貸してあげますよ

 

 

「へぇイクスって年下にはそんな感じなんだな」

 

「そうそう」

 

「・・・クロが眠り始めましたので、私は戻りますよ」

 

「ちょっといいか?」

 

「なんですか、アルフさん」

 

 

よく考えたらアルフさんもお父様のを勝手に飲んでますよね

 

まぁどうせシロさんが問題なしと良い笑顔で言って騙したのでしょう。お客様を怒るのは良い娘のする事では無いので我慢します

 

 

「なんで、イクスってなのはの事を嫌ってんだ?」

 

「・・・。」

 

「アハハッ、違うよ。アルフ~、イクスは別にナノハの事は嫌いじゃないよっ」

 

「そうなのか?」

 

「だよ~」

 

 

勝手な事を言わないで下さい

 

否定しようと思いましたが、口下手な私では達者なシロさんを言い負かす事は不可能ですので黙って続きを聞いてみる事にしました

 

 

「それにしては、夕食の時は明らかにピリピリしてたじゃんか」

 

「ん? あれはクロがナノハに付いてたからだよ。イクスはお姉ちゃんだからね、妹みたいな子は甘やかしたいんだよね」

 

「は? じゃ、なにか? 夕食の時に機嫌が悪かったのは、妹みたいに可愛がってるクロが自分の隣に座らなかったからだってのか?」

 

「ちがっ」

 

「そうだよ!」

 

 

流石にあんまりな言い様なので否定しようとしたのですが、即座にシロさんの肯定にかき消される

 

アルフさんからの視線を遮りたくなってきました

 

 

「あーそしてなのはがクロに懐かれて嬉しそうにしてたから余計にだったのか」

 

「そうそう」

 

「運が悪いなぁ」

 

「良すぎて一周してる感じもするけどね」

 

 

喋りながらも飲むペースを落とさない二方はついに二本目をあけています

 

あれもお父様のですね

 

 

「私はクロを寝かせてきます」

 

「そのまま寝る?」

 

「いえ、目が冴えてしまっているので、お付き合いしますよ」

 

 

それに、ゆっくり誰かと夜空を見るのは久しぶりですからね

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

クロを寝かし付けて戻ってみると、シロさんがモニターを開いて誰かと談笑をしていました

 

報告があると言っていましたし、あの赤いのでしょうか?

 

 

「ん? あれ? お姉ちゃん、まだ起きてるの?」

 

「それはむしろこっちの台詞ですよ」

 

 

通信相手はヴィヴィオでした

 

まったくまた夜更かしの注意をしないといけないみたいですね

 

 

「ヴィヴィオ、お父様と一緒に居ながら夜更かしとは関心しませんよ」

 

「大丈夫!」

 

「大丈夫ではありません。それに、そこは何処ですか? ホテルでは無い様ですが」

 

「うん。なのはママのお家だよ。話し込んじゃってね、泊まってって良いよって言うから泊まる事にしたの」

 

「そうですか、ご迷惑をかけないように。貴方はズレてますから姉としては心配です」

 

「世間ズレをお姉ちゃんに指摘されるとは思わなかったの」

 

 

失礼ですね

 

確かに未だに学院では首を傾げる事もありますが、昔ほど多くは無いはずです。クラスメイトの顔くらいは覚えましたからね

 

 

「アハハ、相変わらず二人は仲良しだね」

 

「そう言えば、何故シロさんがヴィヴィオに通信を?」

 

「ピンときたからね!」

 

「・・・それだけ、ですか?」

 

「あと打ち合わせかな」

 

 

そうですよね

 

それに納得です。式の打ち合わせであるなら、お父様に聞かれるのは余り良いとは思えませんね。ヴィヴィオがこっそり抜け出しているのも分かると言うものです

 

 

「式場はどちらにしたのですか?」

 

「まだ悩んでるぅ」

 

「やはりベルカ式の方が完璧にできるでしょうから、教会が良いのでは?」

 

「完璧ねぇ」

 

「含みのある言い方ですね。完璧では駄目なのですか?」

 

「ん~駄目って言うか。手が込みすぎて無機質になっちゃわないか心配なんだよね。だから少しくらい遊び要素って言うか・・・んーんー」

 

「・・・よく分かりません」

 

 

ようするに完璧なだけでは駄目だと言う事なのでしょう

 

 

「つまりはテキトウが一番って事だね!」

 

「シロ、それはちょっと違うの」

 

「そうです、シロさん」

 

「そうかな? ぜったいアキハルもキャロもテキトウで良いって言うと思うけどな~」

 

「・・・シロはたま~に鋭いこと言っちゃうから参考にしないとなのかな」

 

 

私には理解できませんが、何でも出来る妹が何かを理解したようなので良しとしましょう

 

 

「ねぇお姉ちゃん」

 

「どうしました?」

 

「お姉ちゃんが来る前にシロに聞いたんだけど、またなのはママともめたんだって?」

 

「別に揉めたつもりはありません」

 

「お姉ちゃんの視点だとそうかも知れないけどさぁ」

 

 

溜息を吐くとやれやれと呆れたような表情をする

 

 

「いいよ。うん。お姉ちゃんも悪いけど、なのはママだって悪くないってわけじゃないからね」

 

「はい、そうです」

 

「・・・お姉ちゃんも悪いけど」

 

「ん? 二度言わずとも聞こえていますよ?」

 

「あ、そっか良かったの。まさか良いところだけ切り取って聞いているのかなって疑っちゃったよ」

 

「ふふっ、貴方では無いですから。姉は妹の言は確りと聞き入れますよ」

 

「すっごい良い笑顔で悪口言われた気がする」

 

 

悪口? 可愛い妹に悪口なんて言ってませんよ

 

 

「うわ、お姉ちゃんがお姉ちゃんみたいな顔してる」

 

「当たり前です」

 

「シロ~」

 

「わん! 話しは終わった? ゆっくりで良いよ~、いまアルフに新しいの持ってきてもらってるから~!」

 

「どうせそれもあきパパのでしょ。ったく、全部はダメだよ? 無くなっちゃってたら流石にあきパパが悲しむから、そうなったらヴィヴィオも怒るよ?」

 

「アハハ! 気をつけるよ!」

 

「だいじょうぶかなぁ」

 

 

結局ヴィヴィオもシロさんのする事なのでと見逃し、本題である打ち合わせを再開した。それは、とても長い時間に渡るモノだったみたいで、しかし余り学の無い私でも分かるように創意工夫がなされていた

 

流石私の可愛い妹です

 

と、褒めたいところなのですが、ヴィヴィオはシロさんが自由な方と言うのを熱中する余りに忘れているのでしょう

 

 

「日が昇るまで、まだちょっとあるね。でね、いっそのこと・・・」

 

 

きっとヴィヴィオのモニターには熱心に資料を覗き込むシロさんが映っている

 

しかしそれは、あくまでヴィヴィオから見た視点で私から見たシロさんは、資料に隠れるようにして頭を伏せて目を完全に閉じていました

 

 

「傷つけずに真実を教える方法を姉として考えておきましょう」

 

「ん? なにか言った?」

 

「なんでもありません」

 

「そう? じゃあ続けるね」

 

 

お父様、やはり私はまだ未熟です


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